1月にアスレチックスとマイナー契約を結び、傘下ルーキーリーグに所属する森井翔太郎内野手(18)が16日(日本時間17日)までに、スポーツ報知のインタビューに応じ、本格始動する二刀流への思いを語った。7月末に最終戦を迎えるアリゾナ・コンプレックスリーグ【※1】後には、9月デビューを目指して投手調整を開始する予定。

大谷に憧れる逸材が、夢を追う今と覚悟を口にした。

(取材・構成=竹内夏紀)

 森井はルーキーリーグで約半年を過ごし、初本塁打もマークしたが、最速160キロ超の投手とも対戦するなど、レベルの高さを何度も思い知らされた。

 「何回か挫折しましたね。速球の98マイル(約157・7キロ)がシンカーのように落ちる。日本のように伸びるのはイメージできるけど、全然球が見えなかった。こんな球を投げるのかと驚きました」

 チームには完全に溶け込んだ。同僚とは積極的にコミュニケーションを取り、英語も徐々に上達してきた。

 「周りからは『ショウ』と呼ばれます。英語は来た時よりはだいぶ話せてます。聞けるけど話すのが難しい。スペイン語圏の選手が多いのでチームが行う、週2回の英語の授業をみんなと受けるのが楽しいですね」

 連日40度を超えるアリゾナでの生活にも慣れてきた。毎日、球場と自宅を往復する日々。

だが母・純子さんのサポートもあり、これまでと変わらない環境で生活できている。

 「母がいてくれるのは本当にありがたい。期待に応えたいし、励みにもなる。日本が恋しくなった時もあったけど、日本食を作ってくれるので食べ物の苦労はない。こっちは暑いけど、湿気があまりないのでまだマシ。車のボンネットの上では目玉焼きができるらしいですよ(笑)」

 東京・桐朋では最速153キロ&通算45本塁打をマークした二刀流。7月末には待望の投手調整に入り、9月のインストラクショナルリーグ【※2】でデビューを目指す。

 「二刀流をやりたいと言って入ってきているので、ピッチングができることにすごい興奮してます。打者とは違う楽しさがあるので、ここから探り探りになるけど、頑張っていきたいです」

 入団当初は負担を考慮され野手に専念してきたが、本来はさらに早い時期で二刀流に挑戦する予定だった。

 「軽いけがで時期がズレてここまで来た。春のキャンプで右肘の違和感で投げるのをやめた。シーズン中は右太もも裏の張り、スイングした時に背中に少し変な感じがあったりした。

今はもう大丈夫ですけど、もどかしさがありましたね」

 今季途中から二刀流に復帰したドジャース・大谷は、最高のお手本だ。森井の理想は遊撃手として出場しつつ、投手でローテを守ることだ。

 「それができたらいいと思いますけど、なかなか登板前日や翌日もショートを守るのはどうなんだろうと、自分の体との相談になる。来季からもどうなるか。今は投手もまだやってないので、分からないですけどね」

 将来的に目指す投手像には「投げる哲学者」の異名を取る左腕の名を挙げた。

 「(カブス)今永選手のように、めちゃくちゃ球が速いわけではないが、空振りが取れる球のキレを出せる投手になりたい。本当に直球の伸びは、キャッチボールの時からずっと意識してます」

 2月の会見で掲げた「4、5年でメジャー」の目標は今でも変わらない。

 「4、5年で上がれると信じて今はやっています。メジャーリーガーになるために来た。手応えも感じてますし、このまま自分の課題を潰すことが今、自分にできること。地道にコツコツやっていくしかないです」

 【※1】 ルーキーリーグの一つで、MLB球団がアリゾナで行う春季キャンプ地の球場を主な本拠地とし、5~7月に1シーズン約60試合を行う。20年までの名称はアリゾナリーグ。

 【※2】 シーズン後の9月下旬頃から行われ、若手有望株や同年にドラフト指名された経験の浅い選手らの育成が目的の特別リーグ。

 ◆森井 翔太郎(もりい・しょうたろう)2006年12月15日、東京・府中市生まれ。18歳。桐朋小1年時に住吉ビクトリーで野球を始め、2年時から武蔵府中リトルに所属。桐朋中では練馬北シニアに在籍後、1年秋から同校軟式野球部でプレー。桐朋では1年夏から三塁のレギュラー。2年秋から遊撃手。25年1月にアスレチックスとマイナー契約。183センチ、86キロ。右投左打。

 ◆ルーキーリーグ メジャーリーグの傘下リーグで、トリプルA、ダブルA、ハイA、シングルAに次ぐ最下級クラス。アリゾナ・コンプレックスリーグ(ACL=17チーム)、フロリダ・コンプレックスリーグ(FCL=16チーム)、ドミニカン・サマーリーグ(DSL=48チーム)の3リーグで構成され、球団と契約して間もない17~22歳の選手が主に参加する。

公式戦の登録チームや試合数は年によって増減がある。ACL、FCLは約60試合で、メジャーの春季キャンプ地で実施。選手育成のみを目的とするため、入場料を徴収しない。

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