◆JERA セ・リーグ 巨人4×―3DeNA(3日・東京ドーム)

 悲鳴と歓声が入り交じる中、岸田行倫捕手(28)の放った打球が右中間で弾んだ。1点を勝ち越された直後の6回2死二、三塁。

フルカウントから2番手のサブマリン・颯が投じたスライダーを捉えた。「いい意味で開き直れた。抑えられるか打つかどっちかだと思うんで、割り切っていきました」。二塁に到達すると力強く拳を握り、感情を爆発させた。

 負けられない一戦で、攻守に躍動した。先発・赤星が1点を失った直後の2回1死、カウント1―1から先発・石田裕が投じた146キロの内角直球を振り抜いた打球は、左翼席へ飛び込む4号ソロ。嫌なムードを振り払う一発を放った。

 そして守備でも8、9回に2度、二盗を阻止。守護神マルティネスが被弾した9回はDeNAの勝ち越しの芽を摘み「守備とバッティングを切り替えてやっているつもりだし、その時に応じて自分の仕事をできるように心がけています」。捕手出身の阿部監督も「これ以上ないくらいにね、盗塁も2つ刺してくれましたし、本当に素晴らしい活躍だったと思います」と手放しで称賛。光を浴びたヒーローが若林なら、陰のヒーローは間違いなく岸田だった。

 盟友が自らを奮い立たせてくれている。

この日の2軍戦で、左肘じん帯損傷で離脱していた岡本が約3か月ぶりに実戦復帰。「今までずっと一緒にやってたんで。いなくなって、よりすごさを感じる。(岡本)和真も早く復帰したいって気持ちでやってきたと思うんで、また一緒にできる、やりたいなって思いはあります」と同学年の主砲の1軍復帰を待ち望んでいる。2日の試合前練習で久々に再会。「バッティングを褒めてくれました」と、日頃から助言をもらう親友の言葉が、慣れない5番を打つ背番号27を勇気づけてくれた。

 チームが苦しい戦いを強いられる中、後半戦6試合で21打数9安打、打率4割2分9厘、2本塁打、8打点と打線を支える。「我慢強くやることが一番大事」。背番号27の存在感も、主砲に負けず劣らず増している。(加藤 翔平)

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