第107回全国高校野球選手権大会(5日開幕・甲子園)の組み合わせ抽選会が3日、大阪市内で行われた。初出場の聖隷クリストファー(静岡)は、第5日(9日)の第2試合で明秀学園日立(茨城)と対戦することが決まった。

クジを引いた逢沢開生主将(3年)は、5日に左腕の手術が控えており、抽選後にチームから離れて帰郷。仲間に勝利への思いを託した。

 逢沢は聖隷の主将として最後の大役を果たした。抽選会で壇上に上がり、くじを引くと、9日の明秀学園日立戦に臨む仲間に「しっかり自分たちの野球ができるように、準備してほしい」と思いを託した。報道陣への取材対応などが終わるとすぐに地元の長野に帰郷。4日に入院、5日に左腕の手術を行う予定だ。

 本来なら外野手スタメンに名を連ねるはずだった。先月の県大会直前、左腕骨折でメンバーから外れた。チームが初優勝を飾った7月28日には6、7割程度まで回復し、甲子園の選手登録では名を連ねた。しかし、同31日に病院で再診すると、すぐに手術が必要と判明。夢だった甲子園での試合出場はかなわなくなった。その日のうちに部長へ報告。

翌朝、上村監督に伝えた。指揮官は「本当は(5日の)開会式も歩かせてやりたい」と悔しさをにじませながらも、この日の抽選会後、メンバー変更を行った。

 逢沢が選手の中で一番最初に手術することを伝えたのは、副主将であり、県大会でゲーム主将を務めた渋谷海友(3年)だった。監督と同じ今月1日に打ち明けた。その後、ナイン全体が共有。渋谷は「県大会では逢沢を甲子園に連れて行こうという思いでやってきた。逢沢が甲子園でプレーできないと分かった時も、チームに沈んだ空気はなく、逢沢は頑張ってる、俺たちもやるしかない」と結束を強めた。逢沢はその言葉を聞き、「主将をやってきた中で、それ以上の言葉がないぐらいうれしい。仲間にエールを送りたい」と声を震わせた。

 この日、抽選会前に行われた甲子園練習では、背番号19を着け、補助役として参加。高校野球人生で最初で最後の甲子園。ノックを打つ指揮官にボールを手渡し、シート打撃で使われたバットを利き手ではない右手でぎこちなく拾い集めた。

「テレビで見てきた場所。やっぱり甲子園は特別な気持ちになるというか…。最後に背番号を背負えたことが、うれしかったです」。仲間を信じ、逢沢は甲子園初出場勝利の吉報を待つ。

(伊藤 明日香)

 〇…聖隷クリストファーが対戦する明秀学園日立は夏の甲子園出場が3年ぶり2度目。センバツには2度出場。茨城県大会では6試合を戦い、43得点9失点。チーム打率は3割5分3厘。エースは最速144キロを誇る3年生右腕・中岡誠志郎。145キロ右腕の中山莞近(3年)も控える。能戸輝夢(きらむ)主将(3年)は県準々決勝で左足首じん帯を断裂。出場できるかは微妙な状況だ。

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