◆報知プレミアムボクシング ▷ニューヒーロー第4回 WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級チャンピオン村田昴

 世界を狙う注目株を取り上げる報知プレミアムボクシング「ニューヒーロー」第4回は、WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級チャンピオンの村田昴(28)=帝拳=。米ラスベガスでのプロデビュー(2021年6月)から10戦全KO勝ちというパーフェクトレコードを継続中。

世界4団体すべてで世界ランク入りしているが、スーパーバンタム級は井上尚弥(32)=大橋=が4団体統一王者として君臨。現状での世界挑戦は厳しいが、連続KO勝利の新記録樹立には意欲を見せる。ジムの先輩であり代表を務める元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史氏らが持つ15連続KOを更新し、世界のベルトを手にする夢を描いている。

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 デビュー当初は意識していなかった。だが、KO勝ちが続くと、周囲の言葉に自然と心が動かされた。

 「最初の頃は何も感じていなかっんですが、試合の度にパーフェクトレコード、パーフェクトレコードと言われるようになって、いつしか自分の中でも強く意識するようになった。誰もが挑戦できるものではないので、ここまで来たら浜田さんの15を超えたい」

 村田の試合前、試合後のインタビューには必ず「パーフェクトレコード」という言葉が出てくる。全戦全勝全KOというボクサーにとっては最大級の賛辞。2021年6月に米ラスベガスでのデビュー戦で2回TKO勝ちして以来、10戦すべてでKO(もしくはTKO)勝ちしている。サウスポースタイルからスピードを武器に切れ味抜群の左ストレートを打ち込む。「自分の持ち味はスピードとスタミナ」と言うように、後半になるにつれてギアを上げ、最後はラッシュしてTKOに持ち込む攻撃力には定評がある。

 その反面、「ディフェンス面ではまだ甘い部分がある。

パンチをもらわないためにもスピードを生かした出入り。自分の距離で戦えればパンチはもらわない。その距離を保てればディフェンスもよくなる。キャリアを積んでだんだん分かってきた」という。昨年10月、山崎海斗(六島)とのWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座決定戦。3回に右フックでダウンを奪いながら、7回には逆に右をもらいダウンした。ピンチを乗り越え、9回TKO勝ちに持ち込んだが、あわやというシーンもある中でのプロ初タイトルとなった。

 世界ランクはWBA、WBCの6位を最高に、WBO9位、IBF14位と4団体で世界挑戦が可能な位置につけている。ただ、すぐに挑戦できるほど簡単な階級ではない。現状は井上尚弥が4団体の統一王者としてスーパーファイトを行っている。「もう世界は十分意識している。でも今は挑戦の機会が来るまで待つのみです。

いつ、その時が来てもいいように準備はしています。(世界挑戦の)チャンスが来た時には、1回でものにします」と言葉に力を込める。

 その尚弥とは、これまで2度のスパーリングを経験した。世界最高に位置づけられる選手と向かい合い、「NO1の選手とのスパーはすごい自信になった。自分が一番感じたことはパワーよりもスピード。反応速度やコンビネーションの速さ」と口にした後、こう続けた。「吸収すことしかないですが、憧れてばかりじゃダメなんです」

 次戦は10月上旬を予定している。WBOアジアパシフィック王座の防衛戦か、ノンタイトル戦になるかはまだ未定(8月上旬現在)。世界王座と同じく目標とする連続KO記録。1位の15連続は浜田剛史、牛若丸あきべぇ(協栄)、比嘉大吾(志成)の3人。新記録樹立には、これからまだ6連続KO勝利を積み重ねる必要があり、先は長い。現在、ジムには地域チャンピオンが10人、そして年内にも挑戦といわれる那須川天心という実力者らが、今後次々と世界の舞台に上がる予定だ。

その先陣を切ったのが、先月30日にWBA世界ライトフライ級王座を獲得した23歳の高見亨介。「高見からスタートして、これから次々(世界へ)いくと思う。自分もその波に乗り遅れないようにしたい」。まずは11連続KOに焦点を定めている。(近藤 英一)

 ◆山中慎介の視点 一戦ごとにたくましくなっている。以前は見ていてハラハラする場面もあったが、全体的に安定感が出てきた。守りに入らず、常に攻める姿勢はメンタル面の成長もあるのだろう。昴のボクシングをひと言で言えばハイテンポ。それを後半まで続けられるので、大概の選手はついていけない。他の選手がマネのできないスタイルを持っている。今は尚弥がいるので、その次にどうやって挑戦権を獲得していくか。期待するチャンピン候補の一人だ。

(元WBC世界バンタム級王者、スポーツ報知評論家)

 ◆村田 昴(むらた・すばる) 1996年10月19日、和歌山県紀の川市出身。幼稚園の時にキックボクシングを習い始め、小学校5年で長谷川穂積(元世界3階級制覇王者)に憧れボクシングに転向。貴志川高で高校3冠を達成。日大―自衛隊体育学校。18年全日本選手権バンタム級優勝。アマ戦績は68勝12敗。21年6月にプロデビュー。24年10月にWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座を獲得し、2度の防衛に成功。プロ戦績は10戦全勝(10KO)。身長171センチの左ボクサーファイター。

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