◆第107回全国高校野球選手権大会第5日 ▽1回戦 聖隷クリストファー―明秀学園日立(9日・甲子園)

 初出場初勝利を狙う聖隷クリストファー(静岡)は、第5日(9日)の第2試合で、明秀学園日立(茨城)との初戦に臨む。最速147キロを誇る2年生左腕・高部陸は8日に非公開で調整後、オンライン取材に応じた。

エースが目指すのは幼少期から磨き上げた「しっぺ投法」での無失点投球。県勢の投手が夏の甲子園で完封すれば、2018年の常葉大菊川・漢人友也投手(当時3年)以来。2年生投手に限れば、1973年の静岡・秋本昌宏以来となる偉業達成に挑む。

 絶対的エースが、“完封”を誓った。初戦に向けて「自分の得意とする直球で打者と真っ向勝負していきたい」と意気込んだ。上村敏正監督(68)はロースコア展開を予想。高部は「自分たちが先制点を取るためにもゼロで抑えたい」。オンライン取材の中で、この日はブルペンで約40球投げ、最終調整を行ったことを明かした。

 夏の甲子園で完封すれば、県勢では2018年の常葉大菊川・漢人が2回戦の日南学園(宮崎、3〇0)で達成して以来。2年生となると、1973年、静岡・秋本が2回戦・海星(長崎)戦(10〇0)と3回戦の天理(奈良)戦(7〇0)で記録して以来となる。沖縄尚学の同学年で同じ左腕の末吉良丞が、6日の金足農戦で14奪三振の完封。テレビ観戦していたが「すごいと思いましたが、自分は自分。

できるピッチングをしていければ」。淡々と、それでいて自信をのぞかせた。

 高部は今夏、県大会では5試合に登板し、防御率0・90と安定感抜群。最大の武器は直球で、その威力に対し、県内の相手監督などからは「異質」「高さをしぼっても打てる球がない」と諦めにも似た声が上がった。

 その直球を生み出すのが、幼少期から続けてきた「しっぺ投法」だ。父の佳さん(49)は、高校時代、最速140キロを超える右腕として活躍。プロ入りを目指すも、社会人野球に進むと同時に限界を感じて外野手へ転向した。悔しさは胸の奥に残る。だからこそ、息子が野球を始めた際に何よりも求めたのは“ボールのキレ”だった。

 キレを出すため、人さし指と中指ではじく、しっぺで感覚を教え込んだ。2本の指をそろえて振り下ろし、相手の腕にパチンと当てる動作で培った直球は、父が長年、捕手として球を受け、つくり上げられた。高部はリリースの感覚を「球を指で転がして、最後にはじくイメージ」と話す。

 初の甲子園で直球がどこまで通じるか。監督からかけられた「いい顔して野球をやろう」の言葉を胸に、高部が聖地のマウンドに立つ。

(伊藤 明日香)

  ◆高部 陸(たかべ・りく)2009年1月5日、埼玉・深谷市生まれ。16歳。小学1年の時に根住少年野球で野球を始め、深谷南中学は武蔵嵐山ボーイズに所属。2年春に全国優勝を経験。3年時の全国大会は春、夏、ジャイアンツカップに出場した。174センチ、68キロ。左投左打。家族は父、母、姉2人。

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