◆第107回全国高校野球選手権大会第5日 ▽1回戦 聖隷クリストファー5-1明秀学園日立(9日・甲子園)
初出場の聖隷クリストファー(静岡)が明秀学園日立(茨城)に勝利し、甲子園初陣を白星で飾った。聖隷の上村敏正監督は、3元号で甲子園勝利をつかんだ。
今でも上村監督にかけられた言葉を思い出す。2022年、あのセンバツ落選の数日後だった。「俺は大人だからいい。選考されてもいないのに、その気になったこちらも悪い。でも、“出場確実”と書いた記者に未成年の高校生たちをその気にさせた責任はないのか」。二の句が継げなかった。
まさに、その通りだった。当時、東海地区のセンバツ出場枠は2つ。聖隷は準優勝だった。準決勝の戦いぶりから、これまでの慣例で出場は確定したかのように、選考会の前まで紙面で出場当確の情報を垂れ流した。だが結果的に“誤報”となった。
上村監督とは1992年に報知新聞社に入ってからのつきあい。浜松商の監督時代の93年春に出場した甲子園に担当記者として帯同した。高校球児だった記者の恩師(静高・船川監督)が、同監督と同じ(浜松商時代の船川部長)だった縁から目をかけてもらった。だからこその厳しい言葉だった。
当時、国会まで巻き込んだセンバツ落選騒動。実は、甲子園出場が幻となった代の卒業式に取材を申し込んでいた。一連の記事を選手たちに謝罪し、今の正直な思いを聞かせてもらおうと考えていた。「申し訳ないけど、丁重にお断りします」。そして、ちょっと間を置いて「悪いな。でも、ありがとう」。校長でもある指揮官は、教え子たちの高校最後の大事なイベントを外野から守った。
(静岡支局・塩沢 武士)