◆第104回ジャックルマロワ賞・仏G1(8月17日・ドーヴィル競馬場、芝直線1600メートル)

 JRA海外馬券発売対象の第104回ジャックルマロワ賞・G1は17日(日本時間22時50分発走)、フランス・ドーヴィル競馬場の芝直線1600メートルで行われる。夏の欧州最強マイラー決定戦に今年は日本から2頭が参戦。

98年タイキシャトル以来27年ぶりの日本調教馬Vの快挙へ、ヴィクトリアマイルの覇者アスコリピチェーノと挑むクリストフ・ルメール騎手(46)=栗東・フリー=が自信を見せている。

 日本のマイル女王が極上の切れ味で伝統ある欧州の歴史に名を刻む。

 アスコリピチェーノは、2走前にサウジアラビアの1351ターフスプリント・G2(芝1351メートル)を好位から進め、海外初勝利。前走のヴィクトリアマイルは後方待機から上がり33秒3の末脚で計ったように首差差し切った。ともにゴールまで伸び続けた決め手と最後まで諦めない精神力でつかんだ勝利だった。ルメールは「どんな競馬をするか分からない(笑)。でも、自分でうまくやってくれるでしょう。速い馬場なら大きなチャンス。最後の瞬発力はすごいですから」と、3度目の海外遠征となるマイルG1・2勝のパートナーに信頼を寄せる。

 初めて海を渡ったオーストラリアでの教訓が生きている。昨秋のゴールデンイーグル(芝1500メートル)は12着。スタート直後に挟まれるなど不運もあったが、外に持ち出した直線は本来の伸びがなかった。

黒岩調教師は「普段の美浦なら坂路やWコースで、どれくらいの負荷をかければいいか分かるけど、3週間滞在したオーストラリアは調整が難しかった」と振り返る。

 当時の経験をもとに今回はギリギリまでホームでの調整を選択。「フランスでは、どうしても手探りになる。美浦で高めた状態で、それを維持させるために現地の期間を短く」と黒岩師。陣営の狙い通りに検疫前の7月30日には「来週にでも出走できそう」な状態に仕上げ、同レースに出走するゴートゥファーストから9日後の8月5日に出国した。

 同レース9回目の騎乗となるルメールは07年ホロシーンで2着に好走。「フランスではギアアップが必要。自信があります」と、スローペースで瞬発力勝負になることが多い母国の傾向を踏まえ、持ち味を生かせる条件とうなずく。エルムSをペリエールで制した厩舎の勢いとともに舞台を熟知する地元出身の名手に導かれ、欧州マイルの頂上決戦で大仕事を成し遂げる。(浅子 祐貴)

 〈英国ロザリオンが日本勢最大の強敵〉

 日本馬にとって最大の脅威となるのが、英国のロザリオンだ。昨年7月のサセックスSを呼吸器の感染症で見送り、今年5月に復帰。G1・3戦で〈3〉〈2〉〈2〉着と勝ち切れていないが、前走のサセックスSで完全復調の兆しが見えた。

ペースメーカー役とされた単勝151倍のキラートが逃げ切るまさかの展開だったが、首差まで追い込んだ最後の脚はインパクト十分。昨年の英愛マイルG1・2勝馬が、本来の走りを取り戻している。

 おなじみ愛国のAオブライエン軍団では仏2000ギニーを制し、主戦のムーアとコンビを組み続けてきたアンリマティス、仏ダービー馬のカミーユピサロの3歳牡馬2頭も実力十分。英国からの参戦で、今年の英2000ギニー馬のルーリングコートの上位食い込みもある。

 〈98年タイキシャトルが歴史的1勝〉

 今年で104回目を迎える欧州マイルの最高峰レース。日本馬初参戦は1986年のギャロップダイナ(12着)になる。そこから12年後の98年に日本調教馬初の偉業を成し遂げたのが、名伯楽・藤沢和雄調教師(引退)が管理した米国産馬のタイキシャトル。前年の3歳時にマイルCS、スプリンターズS(当時は12月)とG1連勝、翌年の安田記念で重賞6連勝を飾って海を渡ると、主戦の岡部とともに歴史的な勝利を挙げた。それ以降は3頭が欧州の強豪に挑んだが、03年テレグノシスの3着が最高となっている。

 歴代の勝ち馬には、キングマンボの母としても有名で87、88年に連覇した名牝ミエスクや、父子制覇を達成した99年ドバイミレニアムと05年ドバウィ、父として21年のNHKマイルC馬シュネルマイスターを出した14年のキングマンなど、日本でもなじみのある名馬が名を連ねる。

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