◆卓球 ◇WTTチャンピオンズ横浜 最終日(11日、横浜BUNTAI)

 男子シングルスで、世界ランク4位の張本智和(22)=トヨタ自動車=が、チャンピオンズでは3年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝で5月の世界選手権王者で同2位の王楚欽(おう・そきん)=中国=を4―2で破る金星。

3―2の第6ゲーム(G)まで最大の武器「チキータ」を封印する思い切った戦略で、自国初開催の大会を制覇。2028年ロサンゼルス五輪へ弾みをつける大きな白星をつかんだ。

 ついに壁を乗り越えた。頂点に立った張本の歓喜の叫びが、超満員4353人で埋まった会場に響いた。「信じられない。横浜で勝てて、他より価値がある」。ユニホームを脱いで上半身裸になると、ベンチの岸川聖也監督(38)とハグし、台に感謝のキスをした。過去2勝12敗、8連敗中だった世界王者・王に22年世界卓球以来、7ゲームマッチでは初の金星。「勝ったこと自体が想定外。ボクの優勝というより、横浜、日本の皆さんの優勝だと思う」と勝利の余韻に浸った。

 温めていた秘策がはまった。準決勝から約6時間後に迎えた王との決勝。

出足から最大の武器である攻撃的なバックレシーブの「チキータ」を15度目の対戦で初めて封印した。王のサーブに得意ではないフォアで返した。首をかしげる相手の動揺を見逃さず、勢いに乗ると3ゲームを先取した。

 3―2に迫られた第6Gでは左膝治療のため、5分のメディカルタイムアウトを取った。その後、満を持してチキータを解禁。会場には多くの中国人が詰めかける中、世界王者を押し切った。「コーチ陣も緻密(ちみつ)な戦術を練ってくれて、全てがうまく重なった一週間。本当に心に残る一生忘れられない大切な大会になった」。7月の米国スマッシュ決勝で、王に0―4で完敗した日から決めていた勝負手でつかんだ勝利だった。

 22年のブダペスト大会でチャンピオンズを初制覇。2年後のパリ五輪では目指していた表彰台に届かなかった。28年ロス五輪でシングルスのメダル獲得を目標に掲げる22歳は「ハンガリーの後は糧にできなかった。

今回は(ロス五輪へ)優勝を糧にしていきたい」と誓った。次は14日開幕の世界ツアーの欧州スマッシュ(スウェーデン)。日本のエースは横浜で得た確かな自信を胸に、ロスへの道を進む。(宮下 京香)

 ◆智和に聞く

 ―日本初開催の横浜でV。

 「感謝の気持ちでいっぱい。最後は日本の皆の応援に背中を押してもらった」

 ―試合前は通算2勝12敗の王楚欽に対して。

 「ありとあらゆる戦術を駆使して実行できた。初めての試みで、一番の武器を4ゲーム目を取るまで使わなかった。得意としないプレーを出して、互いに苦しい土俵で戦った。今回の勝ち方は今後にもつながる」

 ―3ゲーム連続で先取。

 「想定外です。王楚欽が戸惑っているのを見るのは初めてでした」

 ―その後は相手に第4、第5ゲームを連取された。

 「(監督の)岸川さんにはあえて言わなかったけど、ここからの2ゲームが彼は一番強い時間帯だから。(相手のばん回は)想定内でした」

 ―左膝を痛め、第6ゲームの4―2からメディカルタイムアウトが認められた。

 「使っちゃいました。(ゲーム間で)相手がシャツを着替えに行って、自分は座った。立ち上がる時に膝をねじってしまった」

 ◆張本智の五輪・世界選手権覇者からの勝利

 ▽馬龍(中国)=16年リオ、21年東京五輪連覇&3度世界王者)=18年ジャパンOP荻村杯、19年男子W杯で勝利。

 ▽張継科(中国)=12年ロンドン五輪金&2度世界王者)=18年ジャパンOP荻村杯で決勝含め2戦2勝。

 ▽樊振東(中国)=24年パリ五輪金&2度世界王者=18年アジア杯、22年世界選手権団体戦で勝利。

 ▽王楚欽(中国)=24年パリ五輪団体、混合複金&25年世界王者=WTTチャンピオンズで3勝目。王が5月の世界選手権個人戦で初優勝して以降は初白星。

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