繁殖厩舎にいた18頭のうち17頭が死んだ火災から唯一、生き延びた母から生まれた奇跡の子―。8月19日に北海道・新ひだか町の北海道市場で行われたサマーセール2日目に上場されたレッドルーヴルの2024(牡、父ダノンバラード)は、「テーオー」の冠名で知られる小笹公也氏が1250万円で落札。

今後は生まれ故郷の(株)奥山ファームから育成牧場へ移動。栗東の宮徹厩舎から、来年のJRAでのデビューを目指して鍛錬することになる。

 比較展示から注目度の高さが感じられた。「(1250万円には)びっくりしました。ただ、ネットニュースに出ていた馬ですよね?』と認知されていました。いろんな人に声をかけてもらったし、セリまでの期間で体に張りが出て良くなっていたので、手応えは感じていました」と奥山昌志代表は振り返った。

 会場は普段、見ることがない多くの人が行き交い、初対面の馬たちが目に飛び込む環境。1歳の若馬にとって初めてのことばかりが重なるだけに平常心でいることや、落ち着いて歩くことが難しく、イレ込んでしまう馬も多い。本馬は300万円からスタートし、活発な競り合いが続くセリ会場内でも落ち着き払っていた。

 同代表は「イレ込みもせず、パレードリンクもしっかり歩いてくれました。注目度が高いことを馬も理解していたのかもしれませんね(笑)」。生後まもなくは自ら立つことができず、スタッフが支えながら母乳を与えた。

人間の手がすぐにかかったことが、信頼関係を築くきっかけとなり、大舞台での堂々とした姿につながったのかもしれない。

 厩舎の火災や幼少期の苦労…。昨年2月10日に発生した火災は漏電が原因。漏電が発生した際に電気が落ちるはずの漏電ブレーカーが機能しなかった。奥山ファームにとっても多くの困難をともに乗り越えてきたからこそ、無事に落札された瞬間には涙をためるスタッフの姿もあった。奥山代表は「中央の舞台で活躍してくれれば。成長ぶりを見ると大丈夫だと思いますよ」と大きな期待を背負って新たな道へ歩み始めた。

 レッドルーヴルの2024が競馬場を走るたびに生きる勇気や希望、そして悲しい出来事があったことを忘れさせないような存在になってほしいと願っている。(中央競馬担当・浅子 祐貴)

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