◆JERA セ・リーグ ヤクルト5―4広島(30日・神宮)
ヤクルト・村上宗隆内野手(25)が3年ぶり2度目となる1試合3本塁打を全てバックスクリーンにたたき込む史上初の“離れ業”をやってのけた。負ければ自力CSが消滅する危機を頼れる主砲が4打点で救った。
衝撃の「村上ショー」が開演したのは0―2の2回だった。先頭で高橋のカットボールを捉えた。129メートルの反撃弾に「一発で仕留めることができました」と納得顔。一塁を回ったところで右翼席のファンからの声援に右手を上げて応えたが、この1本は序章に過ぎなかった。
試合を決めるアーチは同点の3回に生まれた。2死三塁で高橋の直球を仕留めた推定135メートルの13号2ラン。この一発で前日29日の同戦最終打席から3打席連発。22年7月31日の阪神戦と8月2日の中日戦で2戦にわたってマークした5打席連発以来の3連発で、節目の4番200号を達成。そして8回1死から辻の直球を打球速度183キロで134メートル飛ばした“超速弾”で豪快にフィナーレを飾った。
ネット裏にはメッツ、パドレス、フィリーズ、ホワイトソックスの4球団のメジャースカウトが熱視線を送った。上半身のコンディション不良から7月29日に復帰して29試合目で14発。8月だけで12本と背番号55が驚異的なペースで量産態勢に入った。
この日は小児がん啓発の「ゴールドリボンナイター」として開催され、小児がんと闘う子どもたちと、その家族約60人が招待された。試合前の始球式では、がんサバイバーの福沢尚翔くん(12)が55番のユニホームで登板。小さな体で懸命にボールを投げる姿を見て胸を打たれた。
お立ち台に上がった村上は「僕は大きく生まれて、すごく恵まれてますけど、始球式の子とか、本当にちっちゃい体で頑張ってる姿だったりとか、本当に僕も刺激をもらってますし、その子たちに何とか夢と希望を、そして元気を与えられるようにと思って臨んだので、勝ててうれしい」と喜んだ。55番が放った圧巻の3発は、病気と闘う子どもたちの記憶にもしっかり刻まれた。(長井 毅)
◆記録メモ
▼…村上(ヤ)の3本塁打はすべて中越え。1試合3本塁打以上がすべて中越えはプロ野球初。
▼…村上(ヤ)が広島戦、筒香(D)が中日戦でともに3本塁打。同日で2人が3本塁打は10年6月29日のブラゼル(神)、ラミレス(巨)以来15年ぶり9度目。