2000勝以上を積み上げてきた松本好雄オーナーに、競馬の面白さについて聞いたことがある。「馬は生まれてから、ゲートが開く瞬間まで、その道のたくさんのプロが携わってきて、やっと答えが出る。

いろんな人が苦労して苦労して。その過程が魅力なんですよ」と目を輝かせて答えてくれた。

 座右の銘は「人がいて、馬がいて、そしてまた、人がいる」。馬に携わる人の気持ちを常に思いやり、金は出しても口は出さないが信条。ジョッキー選びも「厩舎の人がかわいがっている騎手に、自分の馬を乗ってもらいたい」。調教師を信頼して任せ、武豊を筆頭に縁を大事にした騎手の起用で大記録を達成した。

 「涙が止まらなかった」というメイショウサムソンの日本ダービー制覇(05年)。メイショウタバルで制した今年の宝塚記念など、大レースを勝つと検量室前にはものすごい人だかりができ、人望の厚さを表していた。お祝いの電話をすると、いつも「また話を聞きに来てください。お会いできるの楽しみにしています」と元気な声が返ってきたのが懐かしい。

 人情味にあふれ、名前の通り誰からも好かれ、愛された松本オーナー。日本の競馬を元気にしていただき、本当にありがとうございました。

(内尾 篤嗣)

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