◆プロボクシング ▼WBO世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 武居由樹―クリスチャン・メディナ▼WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 井上尚弥―ムロジョン・アフマダリエフ▼WBA世界ミニマム級(47・6キロ以下)王座決定戦12回戦 高田勇仁―松本流星(9月14日、名古屋・IGアリーナ)

 王座決定戦に出場するWBA世界ミニマム級1位・高田勇仁(27)=ライオンズ=が4日、東京・東大和市の所属ジムで練習を公開した。シャドー、ミット打ち、サウスポースタイルにスイッチした軽めのスパーなど計5ラウンド動き順調な調整を伺わせた。

初めて世界戦の舞台に立つ高田は「順調に仕上がっている。プレッシャーはあるが、それを楽しんでやっている。ジム初の世界チャンピオンを期待されているが、必ず取ります」と王座への強い思いを口にした。

 デビュー10年目でようやくつかんだチャンス。中学卒業と同時に高校には行かずに入門した。当時は体の線が細く、最軽量級のミニマム級(47・6キロ以下)でさえ、ウェートが届かないほど。最も重くて46キロ。減量どころかウェートが軽すぎると、計量前に渡辺マネジャーがラーメン屋に連れて行き、ラーメンと水をがぶ飲みして計りに乗った経験を持つ。試合では軽量ゆえに相手に押されて体力を奪われる。パンチを受ければはじき飛ばされる。勝ち負けを繰り返し、全く目立たない存在だった。

 「何かを変えないと上には行けない」。

4年前、ファイトスタイルを足を使うボクサー型から、ひらすら前に出るファイター型に変更したことが奏功する。渡辺マネジャーの自宅地下のジムでウェートトレーニングにも取り組み、体を作るとパワーが生まれKO勝ちできるようになった。一昨年4月に日本王座を獲得したのはプロ22戦目と時間はかかったが、7キロ減量をする肉体が出来上がり、勝ち負けを繰り返していた過去の姿は消えていた。

 日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれ、8歳までフィリピンの祖母に育てられた。両親と一緒に日本で暮らしたのは小学校3年から。苦労しながら言葉を覚え、体が小さいから「いじめられないように」と空手を習い始めた。それからボクシングにうつり、中学生時代に王座決定戦で対戦する同学年の松本とはスパーリングをした経験を持つ。高校、大学とトップアマで活躍した松本がプロ7戦目で世界戦の舞台にたどり着いたの対し、松本は28戦目とどこまでも対照的。「テクニックは松本選手の方が上ですが、自分が勝っている点は気持ちとパンチ力。打ち合いには負けない自信がある。たたき上げがエリートを倒してどう盛り上がりか。あきらめなければ夢がかなうところを見せたい」とジム創立39年目にして初の世界王者誕生へ、雑草は言葉に力を込めた。

 ◆高田勇仁(たかだ・ゆに) 1998年6月10日、フィリピン・ダエト生まれ。8歳まで祖母らとフィリピンで生活し、2007年に両親と一緒に暮らすために日本に移住。17歳の2015年8月にプロデビュー。2023年1月に日本ミニマム級王座を獲得すると4度の防衛に成功。今年1月に日本王座を返上してWBOアジアパシフィック同級王座に挑戦し、判定勝ちで2つ目のアジア地域タイトルを獲得。戦績は27戦16勝(6KO)8敗3分け。身長157センチの右ファイター。何でもチャレンジすることが好きで、編み物やケーキ作りも趣味のひとつ。好きな食べ物はすし。

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