厩舎ゆかりの期待馬で阪神の土日重賞ダブル取りだ。高野友和調教師(49)=栗東=は今週、秋華賞トライアルの第43回ローズS・G2(14日=3着まで優先出走権)にチェルビアット(牝3歳)、第76回チャレンジC・G3(13日)にオールナット(牡4歳)の兄妹を送り出す。

ともに休み明けだが仕上がりは上々。84年のグレード制導入後では4例目となる「同一週のJRA重賞きょうだい制覇」を狙う。

 偉大なDNAを宿している。ローズSのチェルビアットと、チャレンジCのオールナットは1歳違いの兄妹。姉には14年秋華賞と15年ジャパンCを制した名牝ショウナンパンドラを持つ。3頭すべてを手がけている高野調教師は「僕の中ではそれぞれ全然タイプが違う感じがしています。お父さんを出しているんですかね」と分析する。

 これまで母キューティゴールドの子は未出走を含め13頭中7頭を管理。だからこそ気づく共通項もある。「成長曲線がゆっくりなのは思います」。デビュー時から非凡な運動能力を感じていたパンドラは秋華賞が重賞初制覇。チェルビアットも初勝利は2月と遅かったが、その後に報知杯FRで2着、NHKマイルCでタイム差なしの3着と、使うたびにパフォーマンスの質を上げた。

「チェルビアットは3歳春のパンドラよりしっかりしていますし、そこに成長曲線がついてくれればいいですね」と笑う。

 同一週のきょうだい重賞Vは、84年のグレード制導入後に3例のみ。4度目の偉業へ、強力なパートナーが後押しする。今年3戦で結果が出ていないオールナットだが、今回の鞍上は今週から短期免許で来日するモレイラ。今春もわずか開催9日の騎乗で、G13勝を含む23勝と圧倒的な存在感を示した。「モレイラは引き出しが多いと思うので、能力を引き出してくれないかと思っています」と期待を隠さない。

 チェルビアットの鞍上にはルメール。ともに始動戦とはいえ、明らかに勝負気配が漂う。「チェルビアットはG1であれだけの走りができて、最後も伸びていたし、この距離でも。オールナットは本質的には2000メートルぐらいの距離が合うと思います」と高野師。競馬はブラッドスポーツ。一つのきっかけが良血を覚醒の瞬間へと導くかもしれない。

(山本 武志)

 ◆日本屈指の牝系 オールナットとチェルビアットの母キューティゴールドは現役時代5戦0勝だが、兄に香港ヴァーズなど重賞4勝を挙げ、種牡馬としてもオルフェーヴルなど数多くの活躍馬を出したステイゴールドがおり、姉のレクレドールも重賞を勝っている。ほかにもバランスオブゲームやドリームパスポートなど多くの重賞勝ち馬が名を連ねる国内有数の活気ある牝系。キューティゴールドはデビューした子ども12頭中9頭が勝利と、繁殖牝馬として非常に優秀だ。

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