1976年に「どうぞこのまま」を大ヒットさせたシンガー・ソングライターの丸山圭子(71)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じた。「座右の銘のような歌」という同曲を新たにレコーディングして、10月25日に発売する新アルバム「彩色兼美(さいしょくけんび)」に収録したことを明かした。

(堀北 禎仁)

 ボサノバ調の切ないサウンドで、80万枚を超える売り上げを記録した同曲。恋愛の実体験をもとに20歳で制作した丸山は「詞も曲もあっという間にひらめいた。絶対聴いてほしい歌だった」と回想した。

 当初はアルバム未収録の予定で、ヒットの予感もなかったが「絶対に入れてくださいと懇願した」。有線放送から人気に火がつき、急きょシングルカットされた。

 ロングヒットした同曲は丸山の代表曲となり、八代亜紀さんや松山千春、椎名林檎ら多くの歌手にカバーされた。「時代を経ても聴いてもらえる、一人一人の思い出に溶け込んでいく歌を理想としてきた。この曲はそれを実現してくれた」。演歌歌手の川中美幸(69)には「デビュー直後つらかった時に毎晩聴いていました」と感謝されたという。

 3歳からピアノを始めた丸山は、フォークソングのカバーをしていた浦和第一女子高在学中に、哲学者だった父・三郎さんを亡くしている。遺言として「愛について考えなさい」と告げられたという。その後に交際したアーティストとの「ずっと一緒にいられる人だとは思わなかった」という複雑な思いは「どうぞこのまま」誕生のきっかけになった。

 デビュー直後のエレックレコード時代は、あがり症だった丸山を名だたるミュージシャンが支えてくれた。「泉谷しげるさんには『ステージに出たら客は全部自分のものだと思え』と言われました。(海援隊の)武田鉄矢さんも妹のようにかわいがってくれた。Charや山下達郎さんにもレコーディングを頼みました」。丸山いわく「音楽の縮図のような環境」が、その後の創作に生かされた。

 出産や育児で約10年間、音楽活動を休止していた間も「歌を作ることはライフワーク」と数十曲を書きためた。40代からは専門学校や大学で後進を育成。09年から客員教授を務めた洗足学園音楽大での教え子にはデビュー前のロックバンド「マカロニえんぴつ」や、声優の仲村宗悟(37)らがいる。「人が成長していく喜びがあり、教えることがこんなに向いているとは思わなかった。マカロニのボーカル、はっとりは他の人にないエネルギーを持っていた」と振り返る。

 3年ぶりのニューアルバムには10曲を収録。うち1曲のタイトルは「どうぞこのまま2025」。

実に7回目となるセルフカバーだ。「もともと持っていたイメージはフランス映画に出てくるボサノバのような、しっとりしていながら華やかな世界観。一番そこに近くなった」と出来栄えに納得している。アルバムの全曲を、長男でベースのサトウレイ(46)、ピアノの穴水佑輔(24)との3人で制作。「違う世代のアイデアが重なるのが面白い」とうなずいた。

 アルバムの発売を記念して、10月25日の東京公演から計4都市(大阪、京都、名古屋)をめぐるツアーを行う。もちろん「どうぞ―」も披露予定だ。「いつの時代でも自分らしさを出せる、座右の銘のような歌」という名曲を、これからも届けていく。

 ◆丸山 圭子(まるやま・けいこ)1954年5月10日、埼玉・さいたま市出身。71歳。72年にエレックレコードからアルバム「そっと私は」でデビュー。76年に「どうぞこのまま」が大ヒットし、女性シンガー・ソングライターの草分け的存在に。

過去には山口百恵岩崎宏美桜田淳子らに楽曲提供。09年から今年3月まで洗足学園音楽大ロック&ポップス科客員教授。著書に「どうぞこのまま」(小径社)、「丸山圭子の作詞作曲・自由自在」(言視舎)など。

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