◆世界陸上 第8日(20日、国立競技場)
女子5000メートル決勝が行われ、日本記録(14分29秒18)保持者の田中希実(ニューバランス)は15分7秒34で12位だった。
残り1周(残り400メートル)で田中はトップと0秒73差の7位と先頭集団で踏ん張っていたが、ラストスパート勝負で苦戦し、12位に後退。
◆田中希実に聞く
―レースのプランは
今日は特に自分がレースプランを立てて、それを遂行するというよりは、逆にハイペースになることの方が予想されてたので、後ろの方から選手を拾っていくっていう走りが、私の中で一番好きな走りで、一番楽しめるので、それを一番想像してたんですけど。もしスローになってもラスト1000m、ラスト800、実はその1500の翌日に1000のタイムトライアルをしたらベストが出て、翌々日も800のタイムトライアルをしたらベストが出て。1500の準決と決勝の日に合わせてタイムトライアルをしたので、それが普通の人だったら「アホちゃうか?」なんですけど、私にとっては理屈じゃなくて、本当の意味で火事場の馬鹿力を出したかったので。だからこそ自分の得意とするところはハイペースにぶら下がること、粘り抜くことなんですけど、やっぱり今日多分予選の私の走りを見て多分田中が絶対行ってくれるって思ったのかなっていうように思ったので、めっちゃエチオピアの人たちとかも、なんかすごい話し合ってた感じがあったので、なんかめっちゃ待ってるっていうのは感じて。
でもやっぱり私はやっぱりちょっとあまのじゃくなんですけど逆に山本選手に引っ張ってもらったから、予選を突破したっていうふうには思われたくなくって。もちろん彼女の走りがあったから、今私がここにいるんですけどその彼女の言葉や走りが、私の予選でできる一番いい走りを引き出してくれたと思うので。でもその引き出してもらった走りは、本当の意味で他の人の力を借りないと、じゃなくて実力だってことを説明するには、やっぱり決勝でちゃんとなんだろう…一番自分が楽しく、自分らしく走ることだと思ったので、そこがなんだろう…やっぱりラスト1000メートルでベストが出たっていうことを自信に変えて、自分がそこのスピード一番だと思えたらよかったんですけど、やっぱり1500の選手が残ってたりだとか、そうですねやっぱり1500専門じゃなくてもみんなスプリントがある選手なので、そこでやっぱりそのちょっと迷いだったり怖さがやっぱりまた顔を出してしまったなと思って。
でもそこでなんとかそこで引くんじゃなくて、絶対引かないっていうことが今日できたと思うので、その結果、最後、ヘナヘナになってしまったんですけど、あれはやっぱり、まだまだ自分の実力が追いついてないってことを受け入れるしかなくて、本当に今日の私の等身大の実力は出せたと思います。そのタイムとか順位っていうよりも、本当に走り方としても、全部が私の実力だったと思うので。本当に多分今日もいつもダイヤモンドリーグで私が一番長い距離走ってるんですけど、多分今日も私が多分一番長い距離走ってると思うので、そこがやっぱり自分のへたさだったり、あとまあやっぱりフェースみたいにすごく自由自在に走れたら一番後ろでも安心できたと思うんですけど、今日は本当に一番後ろで悠々と走りたい。そっちの方が先頭引っ張りよりかっこいいと思ってたのに、なんだか中途半端なところをずっと走ってしまって、それが自分の一番そのかっこいいと思える走りができなかったなっていうふうに思って。
やっぱりずっと後ろにいてそのまま離されて、なんか何だったんだろうって思われるのが嫌だとか思いたくないって思ってしまったので、でもそこを最下位から行って、最後まくるっていうのをすごくワクワクしながらできる選手になって、戻ってきたいですし、それができるようになった時に、それこそずっと前を引いても勝ち切れる選手ということだと思うので。まあそこが何だろう…今シーズンずっと実力が出ないことでイライラしてたんですけど、今は実力が出ないことも含めて、本当の意味で、中の部分の成長だとは思います。
―ラスト400の7番手の時にスタジアムが一番ボルテージが上がった?
そうですね。予選の時もすごく歓声がすごかったって思ったんですけど、それ以上の歓声だったように思ったので。それが予選の時はすごく集中してたから、聞こえなかっただけかもしれなくて。今日はすごく聞こえたのが、本当に、本当に自分の集中を突き破るぐらいのすごい歓声だったのか、自分の集中がなんかちょっと切れてたのか、どっちかはわからないんですけど、でも今日は本当にすごく聞こえました。
―今日は反省の言葉が多くないですね
今日は本当にその反省の余地がないというか、本当になんだろう、完敗だと思うのでなんだろう、ああすればよかった、こうすればよかったっていうのがないくらい本当に力負けしたと思うので。本当にちょっと悔しいというより、今シーズンずっと実力つけても、自分の限界ここまでなんじゃないかって思うようなことがすごく多くて、それがすごく自分の中で気持ち悪くて、ずっと自分の中で限界を決めたくないとか、強くなりたい、強くなりたいと思うことに、ずっと理屈にとらわれて、逆に諦めるための準備だったり、諦める言い訳。ダメだったとしてもこう考えようとか、走る前からダメだった場合のことだったり考えてたので、ダメでもまた前を向こうとかって思ってる時点でダメなことを思ってるというか、今日はついつい逆に今日はメダル取ったらどうしようとかそれぐらいのことを考えてたので。それが何だろう…自分の可能性をすごく感じながらスタートラインに立つことができて、最後の一瞬までそれを感じられたので、そこが自分の限界を決めなかったことっていうのがすごく清々しくて。
でもただやっぱり自分の限界を決めなかったのに、今日はやっぱり跳ね返されたっていうところは、今まではやっぱり頭のところでそうだって思っていたんですけど、今日は本当の意味で、頭とか関係なく本当にフィジカル面だったり、実力のところで、まだまだっていうことを思い知ったので、でもそこがやっぱり頭と体の部分、今度は課題が入れ替わったというか、やっぱり本当に今の結果を決めない状態のままでいきたいですし、やっぱり今日、すごくいい状態で迎えれたので、それぐらいメダルって考えられるぐらい良い状態だったので、だからそれでこれっていうのは、もしかしたら自分はそれこそ、これ以上どう努力したらいいんだろうっていう気持ちも、もちろんあるんですけど、そこがでも手も足も出ないって思った方が、予選の時と一緒で背水の陣になると思うので、来年以降に本当の意味でもっともっと強くなれるような。それが今日の走り、そしてまた6万人の方々、ほとんどが日本人の方々だったと思うんですけど、本当の意味で、『私は強いけど弱いよ』っていうことを見せられたので、それが本当に何だろう、全部、表裏一体の部分全部見せられたと思うので、それがスッキリしているのかもしれないですね。
ー今シーズン、世界陸上を含めてどういうシーズンだった
本当の意味でなんだろう、いろんな方々と繋がるシーズンだったかなと思ってて。自分のことを好きになれないっていう風に、自分のことを好きになるには結果を出さないといけないだったり、それによってやっと過程を認められるであったりと思ってたので、そうではなくて、とにかくひたむきにやるっていう、今まで通りの自分に戻るため、東京オリンピックの前の自分に戻るためのシーズンだったのかなと思います。
ー(コーチである)お父さんへ
まずは単純にありがとうっていう言葉を伝えたいですし、父が私が走り始めた頃にゴールラインの向こうまで駆け抜ける気持ちが大事だって教えてくれたんですけど、それがやっぱり父のコーチングが始まったのは大学からなんですけど、要所要所でずっと大事な言葉を幼い頃からかけてくれてたんですけど、それがやっぱりお互いの距離が近づくにつれて、逆にそういう言葉が入ってこないだったり、自分の考えにとらわれてしまってたり。わかってるようでわかってないっていうところだったんですけど、でもほんとの意味で父がかけてくれる言葉っていうのは、私が幼い時から何も変わってなくて、それに今日気付けて本当に今日は、父がまだコーチングしてなかった時も私をレースに送り出すというか、私を見守ってくれてたのと同じのを私は今日感じていて。自立じゃないですけど、父の手の及ばないところに走ろうって思えて。でも、父のその言葉っていうところを拠り所に、最後まで駆け抜けるっていう心を大事にしたかったし、でもそれが最後、あんなへなへなになって駆け抜けるどころか、まずゴールをできるかどうかっていうところだったので。でもやっぱりなんとかゴールしたっていうところで、やっぱり私はそこが弱かったので、ほんとに改めてもっと一緒に強くなりたいっていうのを伝えたいと思います。
ーこの後の予定がわかっていれば
今シーズンは一旦。もうオフで。はい、もう当分ちょっと休んでから。11月、ケニアとか行きたいなとは思ってるんですけど、そこもまだ曖昧なところです。