陸上男子20キロ競歩で2大会ぶり3度目の金メダルを狙う世界記録保持者・山西利和(29)=愛知製鋼=を、京都・堀川高時代に指導した恩師、船越康平さん(51)が、当時のエピソードやこれまでの道のりについて語った。長距離選手として陸上部に入部後、顧問だった船越さんの誘いで競歩を始め、京大・工学部物理工学科に現役合格した後も指導を続け、長く二人三脚で歩んできた。

 陸上部に長距離選手として入部した山西に、競歩の道があることを助言した。「本来別の種目だと思っていたものが花開いたりするんです。一発で見抜いたとか言ったら、ドラマチックやと思うんですけど(笑)。最初はちょっといけるかもと思ったぐらいでした」。自信をつけたのは、初めて競歩で大会に出た8月の京都府新人戦。5000メートル競歩で優勝し、9月の近畿大会は4位。「どうせやるのであれば日本一を目指して、日本高校記録を目指すぐらいまでやってみないか?」

 県内屈指の進学校で勉強との両立も必須。「限られた時間でどれだけ質を高めてやれるか」を常に意識して教えていた。放課後は約1時間半~2時間の練習で、試合がなければ日曜休み。いたって普通の練習量でも、内容が濃かった。

 京大・工学部物理工学科に現役合格した後も、実業団に入るまで二人三脚で歩んできた。長く共に過ごしてきたからこそ、今でも節目の連絡や、歩型確認のアドバイスを求める動画がよく送られてくるという。

世界新記録を樹立し、一皮むけた教え子に期待するのは「悔いの残らないレース」だ。「東京で世界陸上があるって生きているうちに1回あるかどうか。全て出し尽くしたレースであってほしいですね」。恩師の思いを胸に山西は必ず金メダルを奪還する。(手島 莉子)

 ◆山西 利和(やまにし・としかず)1996年2月15日、京都・長岡京市生まれ。29歳。中学1年で陸上長距離を始め、堀川高1年から競歩に取り組む。2013年世界ユース選手権1万メートル優勝。京大を経て18年愛知製鋼入社。同年アジア大会20キロ銀メダル。世界選手権は19年、22年と2大会連続優勝。21年東京五輪銅メダル。

今年2月の日本選手権20キロ競歩で1時間16分10秒の世界新記録で優勝。好物は魚。趣味は読書で、主に推理小説が好き。164センチ、54キロ。家族は両親と弟。

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