◆世界陸上 第6日(18日・国立競技場)

 男子400メートル決勝で、中島佑気ジョセフ(23)=富士通=が44秒62で日本勢過去最高の6位入賞を果たした。1991年東京大会での高野進の7位を上回った。

予選で44秒44の日本新記録をマークし、準決勝も勢いそのまま突破。東京出身、まさに地元開催の大声援を力に変え、ゴール直前に最下位から2人を抜く執念の走り。日本人34年ぶりのファイナルで、快挙を成し遂げた。

 一通の手紙が中島の競技人生を変えた。中学3年から400メートルに専念し、東京・城西高入学後、2000年シドニー五輪代表の山村貴彦さん(46)の指導を受けた。3年時の全国高校総体は準決勝敗退で「トップにはほど遠い選手だった」と中島。ただ、毎年チームが年始に行く高尾山で、山村さんに「日本一を目指せる選手だから」と書いたお年玉に模した手紙を渡された。中島の気持ちは固まった。「(日本一を)目指して戦いたい」

 男子100メートルのサニブラウン・ハキームも育てた指導者は「ポテンシャル的に、ハキームと同じように絶対に世界にいけると思っていた」という。中島はすぐに青写真を描いた。「絶対に大学で日本一になって、世界で戦う選手になる」。22年オレゴン世界陸上に初出場し、東洋大4年時の23年に日本選手権を初制覇。

今年8月に目標だった山村さんの持つ記録(45秒03)を超え、今大会で44秒44の日本新も打ち立てた。

 山村さんからは準決勝後、「楽しめという人もいるかもしれないが、勝負する場所だから一つでも上の順位を目指せ」とメッセージが届いた。中島からは「勝負してきます」との返信が来た。師弟の思いが詰まった大舞台だった。(手島 莉子)

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