「ラスボス」の愛称を持つ歌手の小林幸子さんが、今年も動画コミュニティサービス「ニコニコ」の祭典「ニコニコ超会議」(日~日・幕張メッセ)に出演する。今年は「超ニコニコ盆踊り」(日)で、自らが桜の木に扮して登場。
―ニコニコとの出会いは?
もう十何年も前の話ですが、私、最初にニコニコ生放送(ニコニコのライブ配信サービス)に出るというお話をいただいた時に、「生放送なんですけど、出ませんか?」っていうので、「ニコニコ動画って何? 知らない」と言ったら、「今、ネットでも若い子たちに大人気なんですよ」というので、スタッフの熱意に圧倒されて「わかった。あなたがそこまで言うなら、出てみる」って言って出たところからなんです。
生放送で「今日のゲストは小林幸子さんです」と言った途端に、8888(パチパチパチパチ=拍手を表すネットスラング)って画面に流れて。大きなモニターの画面が8の字でいっぱいになったんですよ。
一瞬何が何だかわからなくて、そこからがスタートですね。
私の歌が(生放送で)流れたら、「歌うめえ」「歌うめえ」「歌うめえ」って(弾幕が)流れて、「ありがとね」って言ったら、「とんでもございません」って。普通、テレビって一方通行で歌を歌ったりしゃべったりしていますが、会話ができる。「これかっ」と思いました。
当時は(ニコニコ動画のユーザー層は)ぼっちというかいわゆる家にこもって楽しむような子たちが多かったんです。家に帰っても友達もいない、連絡もできない、何もつながりもない。独りぼっちでずっといる子たちがニコニコを見つけたんですね。
―「ラスボス」と呼ばれてどう思った?
生放送中にチラチラと「ラスボス」「ラスボス」って流れてきたんです。私は全然意味がわからなかったんですが、司会の方が「すいません、『ラスボスって呼んでいいでしょうか』って言ってるんですが、よろしいでしょうか」と。何にもわからず、私が「どうぞ」と言ったら、「ラスボス降臨」とみんな喜んでいるので、 (小林さん側のスタッフに)「ラスボスって何?」って聞いて教えてもらったんです。全然意味を知らないままOKしたんですよ、ニックネームか何かだと思ったから。次の日になったら、私は「ラスボス」と呼ばれていました。ネットってすごい、ニコニコの影響はすごいな…と感じました。
―ニコニコ動画はどんな存在だと感じた?
家に帰ってひとりかもしれない子たちがいる。でも、つながっているという安心感っていうんでしょうか、自分のことなんか誰も見ていないと思っていた子たちが、見てくれている人の存在を感じて人とつながっていく。ニコニコがそういう存在だということに驚きました。
―場所も年齢も、関係なくつながれるのがインターネットの最大の魅力?
そういうことですよね。一瞬にして世界に飛びますから、すごいですね。
―インターネットを通じ、バーチャルシンガーの楽曲に触れたのも大きかったのでは?
正直言って(楽曲を)聴いて、作っている人たちの発想が演歌や歌謡曲の作り方とはまったく違うということがわかった時には衝撃的でしたね。「この曲、幸子さん歌えませんか? 歌いましょうよ」と言われた時は、最初どうやって覚えたらいいのかわからなかったぐらい。息継ぎがないし、100小節でもノーブレスで歌うことができちゃうというのがボーカロイド。でもいい曲であることは間違いないんですよね。だけどどうやって歌うか。悔しくて、「機械にできて人間にできないことはないだろう」とかわけのわかんない理屈を作って一生懸命覚えて、それで歌ったんですけどね。ものすごくいい経験というか、勉強になりましたよね。
―同じ音楽でも、演歌とバーチャルシンガー楽曲では曲の作りがまったく違う。
演歌や歌謡曲は何十年も歌ってきたので、テクニックとか声の使い方が自分ではできていると思っているんですが、ボーカロイドに対してはいきなり2オクターブぐらい跳んだりする歌がある。
―好きなものを好きなように作った結果が曲になったということ?
ニコニコのコンセプトは、やっぱり好きなことをやるということだと思います。ずっと一貫してそうですよね。「ぼくとわたしとニコニコ動画」という、ヒャダインさんが作られたテーマソングがありますが、その歌詞にも「好きなもんは好きなんだ」と言っています。自分の好きなものは誰に文句を言われることはない。好きなことは好きでいいんだってね。
―その考え方は、人がそれぞれの人生を生きていく上でも大切なことなのでは?
実はこの言葉が大好きで、生きている中で挫折した時どんな風に乗り越えましたか?ということをよく聞かれますが、この言葉を私は必ず言います。「あなたが今、好きなものは何?」って。「この仕事は好きだけど、人間関係が…」という時でも大丈夫。
―好きなことというのは誰に言われなくてもやる。
そう。人に言われなくたって、自分が一番わかっているんです。好きなら乗り越えていくことができますよ。それでもダメならやめればいい。どっちを取るかはあなたが決めなさい…ということなんですが、そういったことをサポートしてくれるのがニコニコだといつも思いますね。
―リアルイベント出演の思い出は?
名古屋で行われた「ニコニコ町会議」(2013年9月)に行かせてもらった時、ものすごい人だったんですけれども、ひとりひとりだと誰も知らない人たちがいっぱい集まって、いつの間にか手をつないでみんな一緒に楽しんでいました。ひとりじゃないんだと、みんな仲間だという安心感みたいなものがあったんですね。 「踊ってみた」にも、「歌ってみた」にも、いろいろな人が出てきました。
ーニコニコ超会議は、小林さんにとってどんな場所?
出るのは14回目ですが、(超会議の参加者は)フェスとかコンサートにしても集まってくる推しファンの集まりとはまた違うんですよね。広い空間にいるみんなが家族のようになっているんですよ。友達であり、家族であり…という感覚かな。私のことを普通に「幸子さん!さっちゃん!」って呼んでくれますし、あちこちで普通の会話をするように話しかけてくれる。
―超会議は何でもあり。相撲の巡業から歌舞伎、政党から自衛隊までブース出展する。
自衛隊の音楽隊をバックに千本桜を歌った時はしびれましたね。ニコニコで出会った方もたくさんいます。この前、古坂大魔王さんと話をしたんです。古坂さんもニコニコのステージで司会をやっていて知り合いました。松岡充くんも超パーティーで出会い、一緒に曲を出すほどになったり。
ニコニコで出会った人はとても多いんですよ。私にとってニコニコというのは、それまでは演歌・歌謡曲の歌手だったのですが、もちろん今でもそうではありますけれど、ニコニコのような世界は、一番遠いところだと思っていたんですよ。それが一番身近で一緒に共存していく存在となりました。
―何回も超会議に出演しているが、常に今回が一番楽しいという感じ?
今が一番楽しいと感じられるって、こんなにうれしいことはありません。と同時に、よくあんなことやこんなことを小林幸子にやってほしい!という発想が出てくることにビックリします。だって私にDJをやれっていうんですよ(ニコニコ超会議2024)。プロの人に教えてもらったんですが、難しいんですよね。それだけならともかく、「幸子さん、どうせDJやるんだったらギャルの格好してやりませんか」って言われて(笑)。私の良いところでも悪いところでもあるんですが、(頼まれると)断らないっていうのがあります。膝上のミニスカートに厚底ブーツをはいて、ギャルメイクしてネイルしてやったんですが、とにかく皆さん喜んでくれましたね。一番楽しかったのは私だったんですけど(笑)。本物のコギャルに「さちぴかわいい~」とか言われて、ちょっと困っちゃいましたけどね。それから、びっくりしたのがプロレスをやります!って言われた時かな(ニコニコ超会議2015)。ボブ・サップさんと対戦して、私が(サップを)倒してリングの上で歌を歌うっていう企画だったんですが、プロレスコスチューム作りのプロの方に、プロレス用のコスチュームを作っていただいて臨みました。佐々木健介さんがセコンド役でずっと見守ってくださったんですよね。
―これからもニコニコ動画がいろいろな人の居場所であってほしい?
(ニコニコの存在は)どんどん時代とともに変わっているし、それに合わせてまた新たな居場所を作ってくれていると思うんです。ニコニコの運営さんも今の時代と一緒に、ユーザーのみんなと一緒に成長し、時代とともに変わっていくんだと思います。

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