サッカー北中米W杯で決勝トーナメント(T)進出を決めた日本代表(FIFAランキング18位)は27日(日本時間28日)、米テネシー州ナッシュビル近郊での練習後、29日(同30日)の同1回戦ブラジル(同6位)戦が行われるテキサス州ヒューストンに入った。1次リーグで1得点1アシストのMF中村敬斗(25)=Sランス=は、幼少期にW杯を目指すきっかけとなったブラジルとの決戦を前に「全然、憧れはないです」と決別宣言。

恋い焦がれた王国への憧れを捨て、5度目の決勝T初勝利で日本の歴史を変える。

 王国ブラジルとの大一番を前に、中村は高揚感を素直な言葉で表現した。「漫画やアニメで、W杯の決勝でブラジルと戦って勝つ、みたいな展開がよくあるじゃないですか。本物のW杯で、本当にブラジルとやれるんだと思うと、すごいなと感じますね」。まるでフィクションのようなシナリオで実現した決戦を、心から楽しみにしていた。

 中村にとって、ブラジルはサッカー人生の原点であり、憧れの国だった。5歳の頃、06年ドイツW杯を見てブラジル代表MFロナウジーニョの虜(とりこ)になった。同選手が出演するCM動画のDVDを繰り返し見つめ、そのケースには「なかむらけいと ロナウジーニョになる」と幼い文字で書き込んだ。ブラジル音楽をBGMにリフティングやドリブルの練習に明け暮れ、小学2年生の時には父とともにブラジルへ向かった。現地で大人や同世代に交ざってボールを蹴り、その肌で「サッカー王国の空気」を体験した。

 もう過度なリスペクトはない。「あの時はロナウジーニョが大好きでマネしていましたけど、今は対戦相手としてプレーできることが光栄。

全然、憧れはないです。本番でオランダとも戦ったので、特別にブラジルがすごいという感覚もないです」と、きっぱりと言い切った。

 過去最多5度の優勝を誇るブラジルとは、昨年10月の親善試合で対戦。中村自身もゴールを決め、3―2の逆転勝利に貢献した。しかし、本気の「セレソン」が牙をむくW杯本番のピッチが、別ものであることは百も承知だ。「(親善試合から)メンバーも半分以上変わっているし、全く違う戦いになる。まずはしっかり守備から。守備の時間が長くなると思うけれど、辛抱強く。失点せずに進めていけば、必ずチャンスは来る」。日本が過去4度、はね返されてきた決勝T1回戦(前回まで16強)でもある。左ウィングバックとして、泥臭く戦う覚悟はすでに固まっている。

 今大会初戦のオランダ戦でW杯初ゴールを挙げ、チュニジア戦では初アシストも記録。

大会直前の負傷で出場がかなわなかったMF三笘薫の穴を埋めるどころか、左サイドで強烈な存在感を放ってきた。「W杯の時間はあっという間に過ぎる。普通では経験できないような時間を過ごしている」。サッカー選手になると決めたあのドイツW杯から20年。かつてロナウジーニョに憧れて磨き上げたそのドリブルと決定力を、ブラジル相手にぶつける時がやってきた。(金川 誉)

 ◆日本の過去のW杯決勝トーナメント

 ▽02年日韓(トルシエ監督)トルコ戦(0●1)

 ▽10年南アフリカ(岡田武史監督)パラグアイ戦(0△0、PK3―5)

 ▽18年ロシア(西野朗監督)ベルギー戦(2●3)

 ▽22年カタール(森保一監督)クロアチア戦(1△1、PK1―3)

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