◆サッカー北中米W杯▽決勝トーナメント1回戦 ブラジル2―1日本(29日、ヒューストン競技場)

 サッカーW杯3大会に出場した元日本代表FWの岡崎慎司氏(現ドイツ6部バサラマインツ監督)が、スポーツ報知の特別評論「慎髄(しんずい)」を寄稿した。日本(FIFAランク18位)が最多5度優勝のブラジル(同6位)に1―2で逆転負けした一戦を総括。

MF佐野海舟が前半29分にボール奪取からドリブル突破し、強烈ミドルシュートで決めた先制点を「ワールドクラス」と絶賛。4年後に向けて「欧州CLや英プレミアリーグのクラブで優勝を経験し、リーダーシップを取れる選手が必要」と期待を寄せた。

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 佐野のゴールはワールドグラスだった。対峙したのがカゼミロだから、ドリブルでグッと前に運ぶ選択ができたのは素晴らしかった。カゼミロじゃなかったら、ついて来られた可能性もあった。前戦の選手の動きもうまかった。上田綺世は佐野の目の前を横切って右斜め前へダイアゴナル(斜め)に走ることもできた中で左に走り、伊東純也が右へ走ったことで、目の前のDFがつられて佐野海のマークにいけなかった。

 佐野が個の力でグっと持っていけたのは、ドイツ1部・ブンデスリーガで主力でやれているプレーが出たと思う。4年後に中心になれればいいなと思うけど、三笘がそうだったように、プレミアリーグに行けばケガもあるし、苦労はすると思う。その環境で成長してほしい。今大会で間違いなくポテンシャルは十分に発揮したと思う。でも、もう少し上の舞台で見たかった。

W杯って残酷だけど、1次リーグをどれだけいい状態で勝ち上がっても、決勝トーナメント1回戦で負けたら記憶にも残らない。上にいけずに負けてしまったら、もう全て終わる。

 間違いなく日本は技術などベースの部分が上がってる。前半はブラジルに1―0で勝っていた。僕らは2013年のコンフェデレーションズ杯(0●3)で圧倒的に負けたけど、今回はゲーム内容も圧倒的に負けたわけではない。例えば、前田大然のスピード、上田綺世のジャンプ力、鎌田大地の冷静さ、鈴木彩艶のセーブなど通用したことは多い。本気のブラジル、追い込まれたブラジルとなった時に引いてしまったってのは、精神的に勝てるところにいなかったのかな。5バックでも前に行って、奪った後も冷静にできていればよかった。失点シーン以外で決定機を作られたのは、ビニシウスのシュートがポストに当たったシーンくらいだった。

 この4年間で選手のレベルがさらに上がって、森保一監督がうまく当てはめることができていたと思う。ある程度は選手も自分で判断できて、自信がある時は相手に劣らないプレーができてオランダ戦も引き分けに持っていけた。ただ、ブラジル戦では、W杯であんなに追い込まれて苦しそうな日本を初めて見た。

そこのメンタル面の強さが必要。4年に1度の大会で、みんな全てを出してやる。ベースは上がっていたけど、自分も監督として指揮したとしたら、あの交代の入れ方は絶対に反省すると思う。

 もう1個、選手を鼓舞できたんじゃないかと。もったいないところはあった。もう1個、攻撃的な采配も見てみたかった。塩貝健人、鈴木唯人、小川航基と攻撃の選手を入れていたけど、最後は守備的になった。1―1だったので、まだ日本が支配することもできた。堂安律や中村敬斗が疲れていたのかは分からないけど、サイドの2人がボールを持って起点になれなかったのは大きかった。

 日本はある程度、決勝トーナメントに行けるくらいのベースができたと思う。今までと違うのは、初戦でオランダに引き分けて1勝2分けと1次リーグで余裕を感じた。確実にベースが上がり、普段からヨーロッパでプレーしている選手がベースとしているのは続けながらも、ブラジル相手だったり、決勝トーナメントで追い込まれた状況でも能力を発揮できる選手がまだいなかった。

それは監督にも言えることだと思う。

 追い込まれた状況で、いかに後半のどこかで選手を代えるかはすごく大事。選手の底上げはできているけど、追い込まれた状況でも勝ちにいかないといけないのは、僕らの時からもそうだけど、弱い部分かなと思う。欧州CLやプレミアリーグのチームでFWで点を取れる選手など、選手がもっと高みを目指すこと。史上初めて欧州5大リーグを制覇したアンチェロッティ監督がブラジルを指揮したから余計に思えたけど、焦らずやってる感じがあった。そういう監督が日本を指揮するのも見てみたい。

 今回の日本は、勝つために一体になろうというチームだったけど、この中にCLやプレミアリーグで勝った選手はいない。監督がその勝ち方を知ってる人だったらどうだったのか。勝った経験がある選手がピッチ内にいなかった。ブラジルのカゼミロやマルチネリは得点を決めてチームを鼓舞していた。日本は堂安が後半に退いた後、リーダー的な存在がいなかった感じがする。そこが大きいのかもしれない。

それが監督で補えたり、選手でも必要だと思う。CLやプレミアリーグのクラブで優勝を経験し、リーダーシップを取れる選手が必要だと思う。言い合いもできたり、勝利に固執していくことがW杯で勝つには大事になると思う。

 ◆岡崎 慎司(おかざき・しんじ) 1986年4月16日、兵庫県生まれ。40歳。滝川二高から2005年にJ1清水入り。11年にドイツ1部シュツットガルトに移籍。同マインツを経て15年夏に英プレミアリーグのレスターに移籍し、15―16年シーズンにクラブ初のリーグ優勝に貢献した。欧州4か国でプレーし、24年シントトロイデン(ベルギー)で現役引退。日本代表通算119試合出場、歴代3位の50得点。W杯は10年南アフリカ、14年ブラジル、18年ロシア大会に出場。南ア大会のデンマーク戦、ブラジル大会のコロンビア戦で得点を挙げた。

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