元レスリング世界女王で元総合格闘家の山本美憂(52)=カナダ=が15日、後楽園ホールでプロボクシング転向2戦目に臨む。「DANGAN9.15」興行のフライ級(50・8キロ以下)4回戦で、1戦1分けの田口智香(ちか、33)=花形=と対戦。

元世界3階級王者・長谷川穂積氏(45)が会長を務めるKOBE長谷川ジム(神戸市)を拠点に練習を積む山本に、ボクサーとして初勝利を目指す日本での初戦へ、思いを聞いた。(取材・構成=田村 龍一)

 レスリング世界選手権3度優勝の山本は2016年に総合格闘技(以下、総合)に転向した。23年に総合を引退後、今年3月にオーストラリアでボクサー転向初戦に臨み、同国のミシェル・マックに6回判定負け。今回の日本初戦での初勝利へ、練習にも熱が入る。

 「実戦練習のスパーリングを中心に仕上げ、コンディションはいいです。3月の試合前はケガもあり、スパーリングがほぼできないいままの試合。今回は自分のボクシングに相手を巻き込みたい。減量も問題なし。後楽園ホールは中学のレスリングの全国大会以来なので緊張するかも(笑)」

 総合格闘家時代に、長谷川穂積氏とテレビ番組で共演して知り合い、当時から打撃(パンチ)の練習で師事していた。

 「ボクシングはレスリング時代から好きで、よく見ていました。総合の時も、穂積先生に『ボクシングやってみたいんです』と言っていましたね。総合をやめた後も練習は続けていて、日本では(年齢制限で)プロテストを受けられないので、オーストラリアの知人に連絡して向こうでライセンスを取りました。

サウスポーだった穂積先生に今、動き方とかカウンターとか教わっています」

 右利きだが左構えのサウスポー。18年に胃がんのため41歳で亡くなった弟で、総合時代のコーチでもある格闘家・山本KID徳郁(キッドのりふみ)さんの助言がきっかけだった。今回の試合3日後の18日は、キッドさんの命日だ。

 「総合で最初はオーソドックス(右構え)でしたが、KIDが『サウスポーに変えてみて』と言ったんです。やってみると、利き手の右手が前で使えて、やりやすかった。そこからサウスポー。今回は命日が近く、KIDの“次の人生”をお祝いできるように、勝ちたい」

 レスリングで16年リオ五輪代表を目指していた際に取得したカナダ国籍を現在も保有。外国人ボクサーとして、試合当日は52歳1か月11日で出場するが、日本ボクシングコミッション(JBC)は「現存する資料にある限り、日本のリングに立った最年長ボクサーとなる」としている。

 「私が出場する度に記録更新ですね(笑)。でも、年齢は意識してないんです。普通の人生じゃないんで、10代ぐらいから止まっている。記録も全然気にしていないし、試合に勝つほうが大事。

とにかく勝ち続けること。タイトルはその先にあると思っています」

 結婚と離婚を4度ずつ経験し、3人の子の母親でもある。長男・アーセン(30)は総合格闘家。次男・アーノンさん(19)も格闘家を目指す。高校生でモデルの長女・ミーアさん(17)が“戦う母”のために同行してくれている。

 「(子供たちも大きくなり)もう、シングルマザーとは言わないか(笑)。ミーアはミットを持ったり、カットマン(傷口を手当てする人)のライセンスを取りに行ったり、選手をサポートする側の勉強中。ご飯も作ってくれます。好きなボクシングに集中できていることをみんなに感謝して、リングに上がります」

 ◆山本 美憂(やまもと・みゆう)1974年8月4日、神奈川県出身。52歳。ミュンヘン五輪レスリング日本代表の父・郁栄さん(81)の長女として生まれ、世界選手権は史上最年少17歳で91年東京大会優勝。94年ソフィア、95年モスクワ両大会もV。

16年、総合へ転向。今春ボクシング転向。身長155センチの左ボクサーファイター。妹はレスリング世界選手権4度制覇のダルビッシュ聖子さん(46)。

 ◆国内プロボクシングの年齢制限と年長出場 JBCはプロテスト受験資格を男女とも16~34歳と定める(試合は17歳から)。37歳定年制は23年7月に撤廃されたが、高齢選手の実戦練習を見てJBCが試合出場不可と判断した例もある。国内リングでは女子の池山直が21年10月、52歳27日で出場。男子では24年4月の東洋太平洋スーパーミドル級王座決定戦で判定勝ちした野中悠樹が46歳、相手のサム・ソリマン(オーストラリア)が50歳だった。

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