ペットボトル入りコーヒーで、「コーヒー」ではなく「コーヒー飲料」と表示される商品が広がっている。単にコーヒー豆の使用量が少なくなったという話ではない。
背景には、コーヒー豆価格の高騰に加え、PETコーヒーに求められる飲用シーンの変化やメーカーの努力による技術革新がある。

「コーヒー」と「コーヒー飲料」は、コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約に基づく種類別名称である。内容量100g中にコーヒー生豆換算で5g以上になるコーヒー(原料)を含むものが「コーヒー」、2.5g以上5g未満のものが「コーヒー飲料」とされる。区分は生豆換算量によるもので、味わいや品質の優劣を直接示すものではない。

近年の変化を象徴するのが、PETブラックコーヒーの飲まれ方である。2017年に発売された「クラフトボス」などを契機に、PETボトル入りコーヒーは、缶コーヒーとは異なる飲用スタイルを広げてきた。当時は、仕事中などに少しずつ、だらだらと時間をかけて飲む「ちびだら飲み」という言葉でも説明され、中容量PETコーヒーの新しい需要をつくった。

それから約10年が経ち、PETコーヒーの飲用シーンはさらに変化している。現在は、時間をかけて少しずつ飲むだけでなく、すっきりとした味わいをゴクゴク飲みたいというニーズも強まっている。缶コーヒーのような濃厚感や飲み応えだけでなく、後味の軽さ、常温でも飲みやすい香味、喉の渇きを癒やすような飲みやすさが求められるようになった。

各社に共通するのは、「濃さ」だけでなく、「すっきり感」「飲み続けやすさ」「常温でも飲みやすい味わい」を重視している点である。PETコーヒーは、缶コーヒーのように短時間で飲み切る商品とは異なり、仕事中や移動中に時間をかけて飲まれることが多い。
こうした飲用シーンの違いが、商品設計にも反映されている。

日本コカ・コーラは、「ジョージア ブラック 500ml PET」について、2026年3月のリニューアルで、近年のPETボトルコーヒーに求められる「よりすっきりとした味わい」「ゴクゴク飲める、飲みやすさ」をいっそう追求し、消費者の調査も実施した結果、新しい味わいが評価され「コーヒー」から「コーヒー飲料」へ変更したと説明している。PETコーヒーでは、コーヒーの濃さだけでなく、長く飲み続けられる味わいも重視されている。

サントリー食品インターナショナルも、2026年春のリニューアルで「クラフトボス ブラック」を「コーヒー」規格から「コーヒー飲料」規格に変更した。同社は新技術「Aroma Boost Break製法」により、一粒のコーヒー豆から雑味を減らし、より多くの香味成分を抽出することで、豆の使用量が変わっても従来と同じコーヒーの濃さを実現したと説明。

そのうえで同社は、これはあくまで表示基準上の分類変更であり、コーヒーの濃さやおいしさ、豆の品質を直接示すものではないと説明している。公式リリースでも、「クラフトボス ブラック」について、コーヒー豆から香味成分を抽出する独自技術により、雑味を抑えながら、香り豊かな満足感の高いブラックコーヒーに進化したとしている。

アサヒ飲料が3月3日に発売したPETボトルコーヒー「ワンダ モーニングアメリカーノ ブラック」「同 ラテ」も、いずれも規格は「コーヒー飲料」である。同社は、エスプレッソとドリップコーヒーを併用し、軽い飲み口の中にもコーヒー豆のおいしさが感じられる味わいに仕上げたと説明する。「ブラック」は香り高くすっきりとした後味を特長とし、「朝は濃いコーヒーが重く感じる」「すっきりした後味で気持ちよく1日を始めたい」という声を踏まえた商品としている。

キリンビバレッジも、3月3日に「キリン ファイア ワンデイ」シリーズをリニューアル発売した。同シリーズは、ブラック、ラテ微糖、甘くないラテなどを展開する600ml PETのシリーズで、いずれも規格は「コーヒー飲料」。
同社は、コーヒーカテゴリー市場で缶・ボトル缶が縮小する一方、パーソナルサイズの小型PETが主力容器として堅調に推移していると説明している。また、PETコーヒーは仕事中や勉強中に飲む傾向が高く、冷たくても常温になってもおいしい味づくりを打ち出している。

伊藤園も「TULLY’S COFFEE」ブランドで、3月30日に「TULLY’S COFFEE PLATINUM WHITE Café au Lait」と、リニューアル品の「TULLY’S COFFEE PLATINUM BITTER BLACK」を発売する。いずれも規格は「コーヒー飲料」。同社は、PETコーヒー市場で飲みやすい口当たりの製品が広がる中でも、しっかりした「コーヒー感」や“ショップ品質”を求めるニーズがあるとし、味わいの満足感を高めた商品として展開する。

PETのカフェラテ類では、ミルクや糖類を加えた商品設計のため、「コーヒー飲料」規格の商品は以前から一般的だった。今回注目されるのは、ブラックタイプのPETコーヒーでも「コーヒー飲料」規格の商品設計が広がっている点である。ブラックは生活者が「コーヒーそのもの」と受け止めやすいだけに、種類別名称の変化が目に留まりやすい。

一方で、コーヒー豆価格の高騰が続く中、生活者が価格や容量だけでなく、原材料や種類別名称に目を向けるようになっていることも事実である。種類別名称の変化は、生活者にとって分かりにくく、「中身がどう変わったのか」という疑問につながりやすい。

実際の飲み心地は、豆の種類、焙煎、抽出方法、香味設計、容量、飲用シーンによっても左右される。各社はコーヒー感、飲みやすさ、価格、容量のバランスを探りながら、PETコーヒーの飲用シーンに合った味づくりを進めている。


PETコーヒーは、缶コーヒーとは異なる飲用シーンを持つカテゴリーとして成長してきた。短時間で濃いコーヒーを楽しむ商品から、仕事中や外出時にすっきりと飲み続けられる、たっぷり飲めるコーヒーへ。種類別名称の変化は、原料高への対応だけでなく、PETコーヒーの価値が「濃さ」だけでなく「飲み続けやすさ」や「ゴクゴク飲める軽さ」へ広がっていることを示している。
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