2026年2月に、東京都が「空き家リノベーションコンテスト2025」を開催した。空き家の改修・活用事例を集め、優れた取り組みを表彰することで空き家活用の機運を醸成していくことが目的だ。
「空き家リノベーションコンテスト 2025 ベストプラクティス部門」 最優秀賞
東京都の「空き家リノベーションコンテスト 2025」では、すでに実現した空き家のリノベーション事例が対象の「ベストプラクティス部門」と、これから実現したい空き家リノベーションの企画が対象の「リノベアイデア部門」がある。ここでは、実例である「ベストプラクティス部門」に注目して、その事例を詳しく見ていく。
今回は、最優秀賞を受賞した「はなももハッピー石神井台」を取材した。どのように空き家をリノベーションしたのか、具体的にどのように活用をしているのかについて詳しく聞いた。
写真中央が、最優秀賞を受賞したNPO法人ハッピーひろば 代表理事 横谷恭子(よこや・きょうこ)さん、左から審査員の上田真一(うえだ・しんいち)さん(NPO法人空家・空地管理センター代表理事)、室田昌子(むろた・まさこ)さん(東京都市大学 名誉教授)、笠松美香(かさまつ・みか)(SUUMO副編集長)、遠藤新(えんどう・あらた)さん(工学院大学 建築学部まちづくり学科教授)(コンテスト会場にて筆者撮影)
子育て中の母親支援ボランティアから多様な地域交流へ舵を切る
代表理事 横谷さんに話を聞くと、NPO法人ハッピーひろばが誕生したきっかけは、練馬区の「地域福祉パワーアップカレッジねりま」(現「つながるカレッジねりま」)だという。卒業生が中心となって、子育てに悩む若い母親を支援するボランティアグループをつくり、母親たちの話し相手になる活動を始めた。当初は、公的施設の会議室を借りて区内のあちこちで開催していた。しかし、同じ場所で同じスタッフが対応することが必要だと考え、近くの空き家を借りて、安定した拠点で開催するようになった。
NPO法人ハッピーひろば 代表理事 横谷恭子さん(撮影/内海明啓)
次第に、母親対象の相談会から、一人暮らしの高齢者や障がい者の家族などに対象を広げていった。このとき、引きこもっていた高齢者が赤ちゃんと接することで、社会に参加できるようになるという出来事があった。「誰かの役に立つことで自分も救われる」という相互作用の効果を確信し、「年齢や障がいの有無を超えた多様な人々が自然に触れ合えることが重要だ」という考えに至った。
そこで、福祉サービス事業などに活動を拡大することを考えたが、活動歴の短いNPO法人なので、資金力に課題があった。
空き家活用相談と補助金の利用、物件オーナーの心意気により実現
動き出したのは、「練馬区空き家地域貢献事業」によるマッチングだ。練馬区では、空き家活用相談窓口を設置し、空き家や空き店舗を貸したい人(空き家所有者)と借りたい団体(活用希望団体)を登録し、両者のマッチングに取り組んでいる。2022年に現在の物件の内覧会が行われたが、その際にハッピーひろばを含む6団体が見学に訪れた。横谷さんは、これだけの広さなら賃料が相当かかるので、資金的に無理だろうと思っていたという。
ところが、利益よりも地域貢献を重視する物件オーナーが、ハッピーひろばの考え方に共感して、条件付きにもかかわらず貸し先に選んだ。条件は、「東京都障害者通所施設等整備費補助事業」の改修費補助金が使えた場合にのみ借りるということ。大がかりな改修工事を行う費用がないハッピーひろばのためを思ってのことだ。
補助金の審査結果が出るまでは物件オーナーに正式な契約を待ってもらい、補助金が受けられることになった2023年12月に賃貸借契約を交わした。その後、改修工事に入り、完了したのは2024年4月、通所施設の開所にこぎつけたのは6月だった。補助金の申請・審査期間の約1年間の賃料については、物件オーナーが無償にしてくれ、開所後も事業が軌道に乗るまでは、事業規模に合った賃料設定にするなど柔軟に対応してくれた。
「物件オーナーには、“共に活動運営をしてもらっている”という強い連帯感を感じている」と、横谷さんは言う。地域に貢献したいと願う、物件オーナーの心意気があったからこそできた場所といえるだろう。
元社員寮を障がい者通所施設と地域住民の集会施設へリノベーション
物件は、1990年に竣工した企業の元社員寮(12部屋のほか管理人室、食堂、浴室など)だったもの。2021年から空き家になっていたところ、地域に役立てばと物件オーナーが区の空き家地域貢献事業に登録した。
施設利用者などのためのアプローチを確保するとともに、集会所を利用する一般区民のアプローチも確保し、木製デッキを設置する改修を行った。また、段差を解消し、手すりをつけたり扉の幅を広げたり、エントランスにスロープを設置したりといった、バリアフリー化も図った。部屋の面積を広くする必要があったので、社員寮2室を1室に改修するなどもした。さらに、建物の安全性を証明するために、現況調査を踏まえた改修工事を行った。
また、以前から道路沿いにあった“はなもも”の木は、アプローチを確保するには妨げになる位置にあったが、物件オーナーが大切にしていた木であることから、その想いをつなぐために残すことにした。それが施設名の「はなももハッピー石神井台」の由来になっている。
■改修前後の建物外観
出典:空き家リノベーションコンテスト2025の取組概要書より転載
■通所者のアプローチとはなももの木
木の上部が枯れてしまったが、新しい芽が生えている(撮影/内海明啓)
■改修後の1階フロア図
出典:空き家リノベーションコンテスト2025の取組概要書より転載
■改修後の「はなももテラス」
出典:空き家リノベーションコンテスト2025の取組概要書より転載
地域交流施設「相談情報ひろば」で障がい者と地域住民が交流
2階は主に事務室などの管理用として利用し、1階をメインの通所施設として利用している。交流の場となる「相談情報ひろば」はアプローチとなる「はなももテラス」に面しており、外から直接入室できるようになっている。
訪問した日は、「書道サークル」が行われており、地域の人や障がいのある人たちが、施設のスタッフとともに、思い思いの書道に取り組んでいた。書道なので静かに文字を書いていたが、野球好きの通所者がいて、時折野球談議に花が咲いたりしていた。
相談情報ひろばでの書道サークルの様子(撮影/内海明啓)
ここでの活動は、「食のほっとサロン」(練馬区の助成事業)=高齢者のためのランチの会食提供(予約制)のほか、子育てや障がい者の居場所に関する相談・勉強会、お茶カフェ、御殿まりづくり、PC・スマホ相談、麻雀教室などさまざまなメニューが用意されている。これらは主に、ボランティアが得意とする分野で活動を担っているものだ。
この日は、就労支援として布のコースターづくりも行われていた。布を所定サイズに裁断し、別の部屋でミシンを扱える通所者が縫製して仕上げていた。コースターづくりを指導しているのはボランティアだ。施設の運営は、施設スタッフだけでなくボランティアにも助けられている。
コースターづくりの様子。布を裁断しているところ(撮影/内海明啓)
障がい者通所施設だけであれば、ややもすると閉鎖的なものになりがちだが、「はなももハッピー石神井台」には、地域の人が集える場所があることで、相互作用の効果が生まれるものになっている。横谷さんは、障がいの有無にかかわらず、人から必要とされたり、「ありがとう」と言われたりすることが、自己肯定感や成長につながるとも指摘していた。この場所が「誰もが支え合う地域社会の実現のきっかけとなれば」と思っているという。
今回の取材を通して、空き家を地域で有効に活用するには、利用する側の情熱と空き家所有者の深い理解がカギになると感じた。マッチングの制度や補助金なども大きな助けになるが、両者の思いがあってこそのものだ。
●関連リンク
空き家リノベーションコンテスト2025 最終審査・表彰式

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
