先週の日経平均は、最高値更新後に失速する展開となりました。フジクラの決算下振れを機に、中東情勢の長期化による原材料懸念が浮上し、AI・半導体関連銘柄に利益確定売りが広がっています。

今週は、国内GDPや好決算だったキオクシアHDの初期反応、AI相場の継続性を占う米エヌビディアの決算に注目です。


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先週の日経平均は週末に失速する展開

 先週末15日(金)の日経平均株価は6万1,409円で取引を終え、前週末終値(6万2,713円)からは1,304円の下落となりました。


<図1>日経平均の5分足チャート(2026年5月11日~5月15日)
日経平均、最高値から急反落。キオクシア決算の市場評価は?エヌビディア決算で意外高?
出所:MARKETSPEEDII

 先週1週間の日経平均の値動きを5分足チャートで振り返ると、週の半ばまでは6万3,000円台をうかがう攻防戦となっていましたが、14日(木)に6万3,799円の高値をつけて以降、週末にかけて売りに押される展開となっていた様子がうかがえます。


 この週末にかけての売りを主導していたのは、直近まで日経平均を牽引してきた、アドバンテスト(6857)やソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)、フジクラ(5803)、レーザーテック(6920)などのAI・半導体関連銘柄が多くなりました。


<図2>日経平均寄与度ランキングの状況(2026年5月8日と5月15日終値を比較)

■日経平均の週間上昇幅(5月8日と5月15日の終値比較)…1,304円安


日経平均、最高値から急反落。キオクシア決算の市場評価は?エヌビディア決算で意外高?
出所:MARKETSPEEDIIデータおよび日経平均プロフィル公表の係数・除数を基に作成

 先週は、ソフトバンクGやフジクラ、キオクシアホールディングス(285A)といった注目企業の決算発表が相次ぎました。AI・半導体関連銘柄の上昇の勢いが出にくいながらも、図2のように、最近まで軟調だった銘柄やバリュー株への資金シフトが相場を支える格好となり、14日(木)の午前中に日経平均は最高値を更新しました。


 それが、急旋回で下落に転じたきっかけとなったのは、同日14時に発表されたフジクラの決算で業績見通しが下振れしてしまったことです。水素など一部の原材料の調達懸念が要因となったことが影響しました。


今週の材料と米市場環境の変化

 また、週末にかけてAI・半導体関連銘柄が売りに押される状況は、米国株市場でも見られました。


<図3>米主要株価指数のパフォーマンス比較(25年末を100)(2026年5月15日時点)
日経平均、最高値から急反落。キオクシア決算の市場評価は?エヌビディア決算で意外高?
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 図3は、2025年末を100とした米主要株価指数のパフォーマンス比較ですが、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数が週末15日(金)に下落している様子が確認できます。この日のSOX指数は前日比で4%を超える下落でした。


 週末を控え、相場の過熱感や割高感による「いったんの利益確定売り」の可能性もあります。それに加えて、市場の重石となっているのが複数のネガティブ材料です。まず、先週行われた米中首脳会談では、米国側が主要企業のトップを引き連れて臨んだにも関わらず、期待されていた米中間の大型商取引案件のサプライズはありませんでした。


 また、中東情勢の長期化懸念からウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)などの価格が高止まりしているほか、先週公表された米物価関連指標(消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数)が、予想以上にインフレへの進行を示唆する結果となり、米10年債利回りが4.6%近くまで上昇しています。


 そんな中で迎える今週ですが、国内では企業決算が一巡する中、19日(火)の1-3月期国内総生産(GDP)や週末22日(金)のCPIが公表され、景況感や物価の動向を見極めながら日本銀行の金融政策への思惑が働きやすくなりそうです。


 一方の米国では、再び企業決算に視点が注がれることになり、消費関連のウォルマート(WMT)やホーム・デポ(HD)、ターゲット(TGT)のほか、「SaaSの死」で最近の株価が下落した経緯がある、会計・財務ソフトウエア関連のインテュイット(INTU)が決算を発表します。


 そして、21日(木)には、最注目のエヌビディア(NVDA)決算が予定されています。


 旺盛なAI投資需要を背景に強い決算内容が見込まれていますが、期待を上回る見通しを出せるか、成長率は鈍化していないか、利益率は悪化していないか、ここ1~2年で増加している在庫額がさらに増えているか、次世代のAIチップ(GPU)のRubin(ルービン)の進捗は順調かなどが焦点になります。AI・半導体相場の継続性を占う重要なイベントです。


 原油価格の高止まりや、米金利の上昇傾向については、急に「降って湧いた話」ではなく、以前から警戒材料として指摘されていましたが、楽観が先行していた足元の株式市場は、その感応度が鈍くなっていた面がありました。そのため、これらを「株式市場にとっての逆風」として、意識し直し始めるムードの変化には注意する必要がありそうです。


基本シナリオは調整含みだが、「意外高」を想定する必要も

 そのため、今週の株式市場は調整含みがメインシナリオになりそうですが、先ほどまで見てきたネガティブなムードをエヌビディア決算が払拭できるかがカギになりそうです。


 また、国内株市場では、15日(金)の取引終了後に好決算を発表したキオクシアHDの初期反応も注目されます。15日のキオクシアHDの株価は4万4,450円だったのですが、決算を受けて取引が行われた同日の私設取引所システム(PTS)のJNXでは、5万1,450円まで15%以上も上昇しています。


<図4>キオクシアHD(日足)と移動平均線乖離率(25日)の動き(2026年5月15日時点)
日経平均、最高値から急反落。キオクシア決算の市場評価は?エヌビディア決算で意外高?
出所:MARKETSPEEDII

 18日(月)の取引で、キオクシアHDの株価がJNXの終値水準まで上昇するのであれば、14日(木)につけた最高値(5万3,490円)に近づくことになります。


 仮に実現した場合、「日経平均をどこまで押し上げるのか?」を先週末15日(金)時点の株価で試算すると、日経平均への上昇寄与度は約164円であるため、日経平均を大きく押し上げるためには、キオクシアHD以外の銘柄にも買いの流れが波及する必要があります。


 また、日足チャートからも、まだ上昇基調が復活してもおかしくない状況にあります。


<図5>日経平均の多重移動平均線とMACD(2026年5月15日時点)
日経平均、最高値から急反落。キオクシア決算の市場評価は?エヌビディア決算で意外高?
出所:MARKETSPEEDII

 図5は日経平均(日足)の多重移動平均線と、下段にMACDを描いたものになります。


 多重移動平均線とは、複数の移動平均線を描くことでトレンドの方向感や強さを探るために用いられます。強いトレンドが出ていれば、多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束も広がっていきます。


 反対に、トレンドレスの場合は、移動平均線どうしの交差が激しく、乱雑な見た目となります。図5では、2日移動平均線から28日移動平均まで、2日間ずつ14本の移動平均線を描いています。


 そこで、あらためて図5を見ると、移動平均線の束はまだ広く、移動平均線どうしの交差も多くありません。今後の株価が多重移動平均線の下限の線を維持できるのであれば、上昇基調は継続することになります。


 もっとも、同じくトレンドの勢いを探る下段のMACDを見ると、MACDがシグナルを下抜けするクロスが出現しそうな状況でもあるため、少し雲行きが怪しくなっています。特に、株価が続落を見せる展開となった場合にはトレンド転換を意識する必要が出てくるため、注意が必要です。


 その一方で厄介なのが、「急落から急反発」といった具合に値動きが荒くなった場合です。

この場合、株価が上下どちらに動いてもおかしくない「迷い」を示すため、思わぬ株高を演出するケースがあります。


 16日(土)の朝に取引を終えた日経225オプション取引の夜間取引(ナイトセッション)の状況を見ると、6月限のコールの買い建玉は、権利行使価格6万3,000円で2,788枚、同6万5,000円で5,360枚、同6万8,000円で4,285枚と、現在の株価よりも高い権利行使価格でかなりの建玉が積み上がっています。


 そのため、エヌビディアの決算や中東情勢が劇的な進展を見せて、株式市場の起爆剤となった場合、いわゆる「ガンマ・スクイーズ」を巻き込んで、一気に6万3,000円台や6万5,000円台まで上昇することも考えられます(相場の継続性は別として)。


 とはいえ、これまで見てきたように相場を取り巻く環境は必ずしも良好とは言えないため、取引の難しい舵取りが求められることになりそうです。


(土信田 雅之)

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