株式投資は短期間で売買するものと思われがちだが、「高配当株(株価に対して配当金の割合が高い株式)」や「優待株(株主優待が実施されている株式)」を用いて長期的に運用し、資産を築く手法も実践できる。
前編では『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)の著者である専業投資家・かんちさんに、株式投資における長期運用のコツを伺った。
投資の第一歩は「節約」&「家計管理」
かんちさんに「投資初心者でも資産1億円を築くことは可能か?」という質問を投げてみると、「年齢と入金力によるところはあるが、可能」という答えが返ってきた。
「例えば、年100万円ずつ入金し、運用利回り10%で運用することができれば、25年で1億円近くになる計算になります。30年あれば、さらに確度は高まるでしょうし、配当金を再投資すればもっと早く到達できるはずです」(かんちさん・以下同)
かんちさんは第2子が産まれたタイミングで子どもの名義の証券口座を開き、毎年100万円ずつ高配当株や優待株を買い始めた。しかし、8年後にリーマン・ショックで資産が激減してしまったため、そこで入金はストップしたそう。
「子ども名義の口座の元本は800万円で、購入した株式はそのまま放置していました。2000年に口座を開いてから26年経ったいま、評価額は1億円近くになっています。時間をかければ、配当金だけでもそれだけの資産を築けるということです」
重要なのは、途中で売却せずに、長く続けること。そして、投資初心者にとって特に大切なのは「入金力」だという。
「『投資したいけど、できない』という人の多くは、『お金がないからできない』と言います。しかし、そう話す人ほど、細かな支出はザルだったりするんですよね。よくよく話を聞いてみると、家賃が給与の3分の1を占めているという人もいます。投資を実践するうえでの第一歩は『節約』です。
家計の大部分を家賃が占めているのであれば、思い切って実家に帰り、投資に回す資金を捻出するという方法が考えられるかもしれない。携帯電話を大手通信会社の主要キャリアからサブブランドに変えることで、月数千円の節約になるだろう。
「なぜ入金力が大切かというと、元手が小さいと資産が大きくなりにくいからです。10万円を年5%で運用しても、年間5000円しか増えません。一方、100万円を年5%で運用したら、年間で5万円増えます。元手が多いほど、配当金や優待も増えるので、それだけ早く資産を大きくできるのです」
節約以外に、かんちさんが大切にしているのが「年間の支出が収入よりも大きくならないようにすること」。
「家計管理において“赤字を出さない”は当然のことですが、若い頃に思い描く『車がほしい』『彼女がほしい』といった夢はどれもお金がかかるんですよね。だから、つい『今年はマイナスになっても仕方ない』と思ってしまいがちですが、そうなると資産形成はできません。欲しいものがあるなら、計画的にお金を使い、毎年プラスになるように努力したほうがいいと思います」
「インデックス投資」で慣れてから「株式投資」へ
節約をして余剰資金ができたら、さっそく株式投資を始めたほうがいいかというと、そうではないという。
「私が投資を始めた頃は制度も金融商品もいまほど充実していなかったので、株式から始めましたが、いまならまずはNISAで『TOPIX』や『S&P500』に連動する投資信託に積立投資するところから始めるのがいいでしょう。株式投資から始めるのはハードルが高いので、まずはインデックス投資を経験しながら、投資に関する書籍などを読んで知識を身に付けましょう」
ポイントとなるのは、「日本の株式市場を代表する指標(TOPIX、日経平均株価など)」と「アメリカの株式市場を代表する指標(S&P500など)」を組み合わせること。
「近年SNSなどで名前が上がりやすい『S&P500』と『オルカン(オール・カントリー/全世界株式)』を併用する人がいますが、『オルカン』はアメリカ株の比重が大きいので、分散しているようでほとんどアメリカ株に集中していることになります。
投資を経験して知識も付いてきたら、インデックス投資を継続しつつ、株式投資も始めるといいとのこと。最初は優待株が始めやすい。
「優待株は、節約と相性がいいからです。資産を運用しながら、お米や洗剤、外食の割引券、鉄道やホテルの利用券を株主優待として受け取ることができるので、普段よく使う製品やサービスを提供している会社の優待を調べてみましょう。『あのお店はいつも混んでいる』『この冷凍食品は安くておいしい』という感覚を侮ってはいけません。自分の感覚を信じてその会社を見ていくと、優待が受け取れるだけでなく、配当利回りや株価も上がっていくということがあります。多くの人が評価している製品や会社は、きちんと成長するということです」
優待株は、楽しく続けられる点も特徴とのこと。
「優待が届くと、楽しいんですよね。資産形成の主な目的は数字を増やしていくことだと思いますが、楽しくないと続かないものです。株式を購入するたびに届く優待が増え、投資の効果も実感しやすくなります。仮に家族が投資に対して懐疑的であったとしても、優待で食品が届いたり外食がお得になったりすることで、見る目が変わるという副次的な効果もあります」
ただし、優待もすぐに届くわけではなく、保有している株数が少なければ、届く優待も少ない。
「株式を購入した最初の年は、優待もあまり届かないかもしれません。しかし、入金を続けて優待株を購入していれば、2年目は1年目の倍、3年目は1年目の3倍といった形で優待が増えていくはずです。そうなってくると、楽しさを感じられるでしょう。5年も経つと相当な量の優待が届き、生活費の節約にもつながるので、さらに入金できるようになるという好循環が生まれます」
投資を始めたら「焦らず急がず長く続ける」を意識
もうひとつ、投資における注意点として教えてもらったのが「人の言葉を鵜呑みにしないこと」。
「SNSでフォロワー数の多い投資家が『この株がいい』と投稿していると、よさそうな気がしますよね。ただ、その言葉に惑わされて、自身の理解の範疇を超えた新興株を買い、資産を減らしてしまったケースを何件か見聞きしたことがあります。短期的に大きな利益を上げようとすると焦ってしまうので、資産は長い時間をかけて地道に築くものと考え、さまざまな試行錯誤を重ねて、自分なりの“勝ちパターン”を見つけていくことが大切です。投資は誰かと勝敗を争うものではありません」
そして、何よりも大切なのは、「焦らず急がずに長く続けること」。
「繰り返しになりますが、長期投資と高配当株や優待株は相性がいいと思います。資産の伸びは遅いですが、のんびり保有している間に配当金や優待が入ってきて、確実に積み上がります。買えば買うほど増え幅も大きくなるので、少しずつ積み上げていきたいという人に向いた手法ではないでしょうか」
“長期”と聞くと途方もない道のりに感じてしまうが、20歳から始めれば、20年後はまだ現役バリバリの40歳。
「年金支給が始まる65歳までに、年間の配当金が生活費を上回るくらいの資産に達していれば、老後の不安は軽減するでしょう。生活費を上回るほどでなくても、『年金+月10万円の配当金』ぐらいあれば生活は成り立つはずです。老後に預貯金を取り崩すことに不安を感じる人は多いと思うので、それまでに投資を経験し、資産を運用する能力を身に付けていきましょう」
長い期間をかけて高配当株・優待株での運用を実践し、老後の不安を払しょくできるほどの資産を築いたかんちさんだからこそ、説得力のあるエピソードばかりだった。焦らず長期で運用するためにも、できることから一歩踏み出してみるのがいいかもしれない。
(取材・文/有竹亮介)

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