営業わずか15年半… 巨額を投じた「ピーチライナー」はなぜ消えた?

 愛知県小牧市には、かつて「桃花台(とうかだい)新交通桃花台線」、通称「ピーチライナー」という公共交通機関が走っていました。小牧市だけでなく、愛知県や名鉄、それに地元の東海銀行(現・三菱UFJ銀行)などが軒並み出資しており、地域から大きな期待がかけられていた路線です。

300億円かけたのに15年で廃止!? 幻の路線「ピーチライナ...の画像はこちら >>

 ピーチライナーが開業したのは1991年3月のこと。小牧市内にある「桃花台ニュータウン」から市中央にある小牧駅までを結ぶ約7.4kmの路線で、合計7駅が設けられていました。なお、小牧駅では名鉄小牧線と接続しており、乗り換えが可能でした。

 路線のほとんどは高架軌道となっており、建設費は300億円以上とも言われています。参考までに、2023年に開業した「宇都宮ライトレール(路線距離約14.6km)」の建設費が684億円とされているため、路線距離を鑑みてもかなりの巨費が投じられたことがわかるでしょう。

 しかし、地域の期待を背負って建設されたピーチライナーでしたが、開業直後から利用者数は低迷します。1日の利用者数はおおむね2000人前後で推移しており、これは国鉄の民営化にあたって、廃止が議論された路線の目安である輸送密度4000人を大きく下回っていました。

 運営元の桃花台交通はさまざまな改善策を打ち出したものの、抜本的な改革には至らず、最終的には2006年10月に廃止へと追い込まれました。運行期間は15年半ほどであり、公共交通路線としてはかなり短い寿命でした。

 廃線から20年が経過した2026年現在、ピーチライナーの遺構はどうなっているのでしょうか。短命に終わった原因とともに、現在の駅周辺を探索してみました。

失敗の要因は「需要の目測誤り」と「不便な接続」

ピーチライナーが失敗した大きな理由は、需要の目測を誤った点でしょう。

300億円かけたのに15年で廃止!? 幻の路線「ピーチライナー」なぜ失敗したのか?20年経っても“解体されない”切実な事情
今も残る「ピーチライナー」の路線(鈴木伊玖馬撮影)

 まずアクセスの問題です。開業当時、接続していた名鉄小牧線は、名古屋市営地下鉄名城線と直通していませんでした(直通開始は2003年)。そうなると、ピーチライナーの利用機会は、桃花台ニュータウンから小牧市中央へ行きたい時や犬山方面に行きたい場合に限られてしまいます。これでは、簡単に利用者数は伸びません。

 実際、桃花台ニュータウンの住民が名古屋市街へ向かう場合は、バスやマイカーでJR中央線の春日井駅に向かうケースが多かったそうです。

 さらに、桃花台ニュータウンの計画自体が順調に進んでいなかった点も考慮すべきでしょう。当初4万7000人を見込んでいた移住人口は、オイルショックやバブル崩壊といった経済動向の影響もあり、最大でも2万8000人程度に留まりました。この規模の人口に対して、そもそも大がかりな新交通システムを建設するのが適切であったのか、疑問が残ります。

 ちなみに、「ピーチライナー」が廃止されると、JR春日井駅や高蔵寺駅方面、あるいは栄・名古屋駅方面直通などへの代替バスが運行され始めました。これらは想定以上に実績を伸ばしており、住民の本当のニーズが元来どこにあったのかを物語っています。

 筆者(鈴木伊玖馬:乗りもの好きライター)は、隣の春日井市に住んでいますが、ピーチライナーに乗車した経験はおろか、存在すら「あった気がする……」程度の記憶しかありません。

 2000年代前半には小牧駅近くの塾に通っていたため、路線自体は目撃しているはずですが、それでも記憶が曖昧なあたりに、当時の存在感の薄さを感じてしまいます。

廃止から20年… 今も残る高架橋とニュータウンの現在

 廃止となった「ピーチライナー」ですが、その面影は今も桃花台ニュータウン周辺に点在しています。たとえば、中心駅であった「桃花台センター駅」の駅舎は現存しているほか、市内にはピーチライナーの高架橋が解体されずに残っています。

300億円かけたのに15年で廃止!? 幻の路線「ピーチライナー」なぜ失敗したのか?20年経っても“解体されない”切実な事情
今も残る「ピーチライナー」の構造物(鈴木伊玖馬撮影)

 高架橋は構造がしっかりしているだけに、廃止直後は他用途への転用が協議されましたが、費用の観点から断念されています。しかし、撤去するにも多額の費用がかかるため、解体作業もなかなか進んでいないのが現状です。なお、ピーチライナーの廃止が2006年ですので、すでに使われない期間のほうが長くなっています。こう書くと、転用を協議する気持ちもよくわかります。

 成功を収めたとは言いにくい桃花台ニュータウンですが、改めて街を歩いてみると、その自然豊かな都市設計はなかなか洒落ていると思います。取材中には家族連れとすれ違うことも多く、小さな子どもを育てる場所としては悪くないように思えました。

 中心にあるショッピングモール「ピアーレ」などがもうちょっと発展してくれれば、隣町から行く人も増えるのではないでしょうか。魅力ある街並みが末永く残るよう、小牧市の今後の取り組みに期待したいところです。

【カラフルなまま現存!】廃止から20年!「ピーチライナー」の遺構を巡ってみた(画像)

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