【今週の住活トピック】
「住み力」プロジェクトによる「全国一斉 住み力調査」実施/アサツー ディ・ケイ
http://www.adk.jp/html/news/121119.pdf

アサツー ディ・ケイ(以下ADK)が「全国一斉 住み力調査」を実施したところ、シニア夫婦の”終の住み処”に大きなズレがあることが分かった。田舎か都会かで意見が食い違うようだが、その背景を考えてみよう。

シニア夫婦の“終の住み処”に大きなズレ

ADKは、日本女子大学大学院住居学専攻・篠原聡子研究室と共同で、生活者が自分らしい住まいを選択、維持する力を「住み力(すみりょく)」と定義し、これを高める活動を行う「住み力」プロジェクトを発足。活動の第1弾として2012年10月に「全国一斉 住み力調査」を実施し、その結果を公表した。

調査結果の中で筆者が注目したのは、「終の住まい」の考え方について。年代別に男女で比較したところ、特に中高年層において、男女間で大きな違いがあることが分かったからだ。「最後は田舎で暮らしたい」(あてはまる+ややあてはまる)では、男性が各年代を通じて40%台で推移しているのに対し、女性は20代を除き、男性よりかなり低くなっている。特に60代では、男性43.5%、女性17.4%と開きが大きい。


一方、「最後は都会で暮らしたい」では、各年代を通じで男性は「田舎」とそれほどの違いがないが、女性は20代を除き、格段に「田舎」よりも「都心」ニーズのほうが高くなる。特に60代女性では、72.5%と多数を占めた。
ADSでは、シニア夫婦においては、「田舎」に住みたい夫 VS 「都会」に住みたい妻という構図になっていると分析している。

「田舎」に住みたい夫 VS 「都会」に住みたい妻の問題解決法は?

筆者がリクルート在職中に副編集長を務めていた情報誌に「都心に住む」と「ほしいリゾート」があるが、まさに都会と田舎は住まいの立地選びの大きなテーマだ。団塊世代の大量退職があったことやいずれの情報誌も50代~60代のご夫婦が読者対象のひとつになっていたこともあり、当時はかなりの人数のシニア層の取材や面談調査を行った。その経験から、夫婦の意見が食い違う背景を考えていこう。

団塊世代を中心とするシニア層は、地方から東京に移り住んできた人が多いこともあり、リタイア後は自然豊かな環境の中で過ごしたいというニーズが強い。自身の通勤や子どもの通学といった条件がなくなれば、田舎への定住も可能になる。また、田舎の住宅は買うにしろ借りるにしろ、都会に比べて費用がかからないのも魅力だ。今の住まいに住みながら、田舎と都会を行き来する「二地域居住」というスタイルを取る場合もある。
しかし、田舎暮らしでは、車がないと移動に困ることや買い物、通院が不便であること、寒冷地であれば雪対策が必要なこと、家庭菜園をするならその世話が大変なことなど、都会とは違う生活上の問題も生じる。憧れが強い男性に比べ、現実的な女性のほうが田舎暮らしへの不安を口にすることが多い。

一方、子育てが終わった住まいの広さを持てあましたり、今の交通アクセスに高齢になったときの不便さを感じたりして、自宅を処分して都会に住み替えたいというシニア層も多い。都会暮らしなら、どこに出かけるにしても便利で、車も不要だ。美術館や映画館などの文化施設やしゃれたレストラン、ショップなどの商業施設、総合病院などの医療施設も身近にあり、気軽に出かけやすい。住まいが狭くなったり、生活費がかかったりするが、なにより子ども家族が遊びに来やすい。こうした点を評価するのは、どちらかというと女性が多い。

こうした背景から、シニア夫婦の夫と妻の意見が食い違うケースも多い。

双方でよく話し合い、着地点を見つけていくことが大切だ。しかし、なかには夫だけが田舎に通い詰めているといった事例もあった。夫が「妻は自分についてきてくれる」と思い込み、妻の意見をあまり聞かなったのが原因だった。
不安があるなら、それを解消する方法をともに考える必要がある。実際に、リタイア後に田舎に定住できるかどうか、50代のうちから休日を使ってお試し暮らしを繰り返していた夫婦もいたし、都会暮らしを持ち込みやすい、管理された別荘地を選んだ夫婦もいた。また、割り切りも必要だ。
都心に住み替えるなら、住まいは狭くなるので、子どもたちが泊りがけで来るときにはホテルに宿泊してもらうといった発想も求められる。

いずれを選ぶにしても、夫婦で今後の暮らし方を話し合い、譲れるところは譲り不安があればともに解決策を考えて、充実したセカンドライフの拠点選びをしてほしいものだ。

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