物流やタクシーの人手不足がニュースになっていますが、同じ波が路線バスにも及んでいます。実は今、東京の都心でもバスの本数が減っています。

都営バスは、去年10月、19路線で、合わせて1日200便以上を減らしました。23区のうち、半分以上の区で影響が出ています。

都心でも減便の波

通勤だけでなく、病院に通う高齢の方や、地域の足に直結するバスですが、なぜ、都営バスでも減便に踏み切ったのか、東京都交通局 自動車部計画課長 井上 清一さんにお話を聞きました。

東京都交通局 自動車部計画課長 井上 清一さん

都営バスでは、一部の路線に対して、株式会社はとバスに委託をしており、そこの乗務員が、不足するという事態になりまして東京都交通局としては初めて乗務員不足ということで、減便という手段をとりまして、ダイヤ改正をしました。運行ダイヤを維持していくとなると、労働環境も悪化する一方で、そういったことは続けられるわけがないので、継続して安定的に供給できる体制を取るっていうのが重要だったと思います。今現状が乗務員については50代以上が約半数おりまして、その中で60前後で退職する者も結構にございます。よって採用の方も、予定者数も増加する傾向にあります。今後とも人の採用っていう部分については厳しい傾向にあるのではないかなと認識ですね。 

背景にあるのは、運転手の高齢化です。乗務員の半数以上が50代以上。退職が続く一方で、新たな担い手の確保は簡単ではありません。若い世代の車離れが進み、大型二種免許を取得する人が減っていることや、土日や祝日も含めた不規則な勤務に見合う魅力を、どう示せるかが課題だといいます。また、働く時間のルールが見直されたことで、同じ本数を走らせるには、これまで以上に人が必要になっています。

運転手を増やしたいのに、なかなか確保できない、そんな状況が続いています。交通局では、免許を持っている人を待つだけではなく、免許がない人を養成して採用する形や運転体験会などで入り口を広げる取り組みも始めているそうです。

自治体が運転手を支援

こうした人材の悩みは、都営バスだけでなく民間のバス会社も同じです。生活の足がなくなる危機感から、葛飾区は23区で初めて、区内を走る民間のバス会社に対して、直接支援に乗り出しました。葛飾区都市整備部 古関 伸介さんに聞きました。

葛飾区都市整備部 古関 伸介さん

2024年の3月31日ですけど、葛飾区で走っていた3つの路線が同時に運休してしまったっていう象徴的な出来事がありました。やっぱり運転手が足りない、それが顕在化したなと感じた。それによって、支援策っていうのを検討始めました。1つ目は住宅手当や借り上げ住宅費の補助。大型の免許を持っている方、1人あたり月額2万円をバスの事業者さんに補助しています。2つ目が、人材募集の補助。例えば採用セミナーを開く際に必要な経費の2分の1を補助しています。3つ目が、女性運転手の採用強化の補助。

どうしても男性社会になっていますので、女性の運転手さんが働きやすい、継続しやすいように整備するのに必要な経費の2分の1を補助しています。

葛飾区が支援に踏み込んだ背景には、区ならではの事情も。葛飾区は東西の鉄道は比較的ありますが、南北の移動はバスが中心。だからこそ、減便は生活に直結します。支援策のポイントは、「利用者」ではなく「働く人」を支えるという発想です。区の担当者が合同の採用説明会に足を運び、他社と比べて「住宅手当がない」ことが弱点だと分かったため、家賃の補助など、運転手が定着する環境づくりに踏み込みました。実際に、全国で運転手が減る中、区内の運転手の数は減少に歯止めがかかり、事業者からは「離職が減った」という声も出ているそう。また女性の運転手が働きやすい環境の整備について具体的には、トイレや、仮眠をとる部屋が男女でわかれていないのでそういった場所の整備に対する補助を想定しているそうです。

多様な人材で支える路線

一方で、企業側も人材確保の幅を広げています。そこで、東急バスが進めているのが、国籍や性別にとらわれない採用の拡大です。東急バスのワークスタイルイノベーション推進室長、岡野恭子さんに聞きました。

東急バスのワークスタイルイノベーション推進室長 岡野恭子さん

今回外国人のバスの運転手を3名採用させていただき、ダイバーシティ経営というところで、外国人ということに限ったことではありませんが、国籍や性別や年齢に関わらず様々な方に活躍していただきたい一環として、外国人採用に至ったというところです。

海を渡って外国から、家族を置いて日本に働きにきてますので、すごく、やる気というか、吸収の度合いというか、ものすごく強くて頑張っているというふうな姿を日本人の運転手も見ているので、すごく刺激になっているのではないかなというふうに思います。

受け入れたのはインドネシア出身の3人で、このうち1人は、日本初となる特定技能の女性バス運転士として、今月中のデビューを目指しています。実はインドネシアは日本と同じ「左側通行」で、運転の感覚が近いそう。

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全員、日本語能力試験N3以上に合格し、日本の免許への切り替えや大型二種の取得、教官同乗での研修を経て、現場に立ちます。研修では、やさしい日本語を使って教えるよう工夫したそうです。例えば、「ハンドルを切る」という表現も、「はさみでハンドルを切る」と勘違いされてしまうこともあったため、分かりやすく言い換えてるそう。

路線バス減便 東京でも進む「運転手不足」
路線バス減便 東京でも進む「運転手不足」

人数としては決して多くありませんが、東急バスでは、外国人に限らず、女性など「多様な人材が働くことが組織の力になる」として、採用の幅を広げていると言います。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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