毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
今回のテーマは…『病気で失った自分の声をコンピューターソフトで再現』
「ボイスター」の仕組みと利用者自分の声を再現するコンピューターソフトの名前は「ボイスター」。開発されたのは今から12~13年ほど前で、その頃はコールセンターの自動応答やカーナビなどに使用される、人工音声の技術が発展していくさなか。それを実際の人間の肉声で出来ないかという発想から開発されました。はじめから病気の方向けに開発されたものかと言えば、そういうわけではなかったそうです。
◆ヒューマンテクノシステム東京 渡辺 聡さん:アイドルの声で対話するサービスとか、ああいうものが当初は想定していたものだったかも知れません。会社のHPとかに「こういうものありますよ」って説明書きを載せたんですが、最初に問合せが来たのは個人の方からでした。「今度手術で声を失うんだけど、これ作れないか」っていう問合せでした。はじめに問い合わせをしてきたのは、「大阪芸術大学」の教授の方で、これから下咽頭がんの手術を受けて、声帯を失うことになるのだが、このソフトを利用して、手術後も自分の声で話せるように出来ないかという相談でした。
「ボイスター」の基本的な説明をすると、まず利用する方の声で、400から1,000ぐらいの文章を録音します。「ボイスター」はこの録音を基に話し方の特徴を分析し、パターン化。それでパソコンに文章を入力すると、その人の話し方に最も近い音を選んで再生するという仕組みです。
▼ボイスター
最初の利用者である大学教授の場合、手術前に声を収録。
こうしたことを可能にするために、どれぐらいの準備と手間が必要かというと…。◆ヒューマンテクノシステム東京 渡辺 聡さん:相談されてから、まず収録するんですけど、それを録り終わってから一応2カ月間開発期間をいただいて納品します。
声の収録は手術などで声が失われる前に、大体の場合はユーザーの方の自宅を尋ねて行います。価格は精度に応じて48万から95万円ほど。喉の病気で声帯をなくされた方など以外には、どのような病気の方が「ボイスター」を利用しているのでしょうか?
◆ヒューマンテクノシステム東京 渡辺 聡さん:神経の難病、代表的なのが“ALS”という病気などですが、身体が段々動かなくなっていくのと、併せて呂律が回らなくなってきます。更に呼吸が難しくなってくると、気管を切開して人工呼吸器を付け、声を失ってしまうのです。ALS=筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせい・そくさくこうかしょう)。手足・のど・舌などや呼吸に必要な筋肉が段々とやせて、力がなくなっていく病気で、有効な治療法は未だ確立されていません。
“自分の声”で話す意味とは?実際にこの病気と闘いながら、「ボイスター」を利用している方に話を聴きました。都内在住の38歳の男性、真下貴久さんです。
▼真下さん

真下さんは“ALS”について啓発や理解を深めるための講演などを積極的に行っていて、まずはそのために「ボイスター」を利用しました。その後、病状が進む中で日常生活での利用も欠かせなくなりました。現在は、パソコンの画面に表示されている文字を見ると、その文字が入力できる“視線入力”というシステムと、「ボイスター」を合わせて、会話を行っています。そんな真下さんに、“自分の声”で話す意味を聴きました。
▼ボイスターを使う真下さん

がんやALSなどで“声”を失った本人にとってはもちろん、患者を支える家族や友人などにとっても、その人の“声”であることは、とても重要なことです。現在160人ほどの方が「ボイスター」を利用していますが、最近は外出先でも便利な「スマホ用」もほぼ実用化しています。
◆6月8日放送分より 番組名:「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内「人権TODAY」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190608082000