毎週土曜日、TBSラジオ「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは・・・
“寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」”
▼遠隔操作ロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」がドリンクを置いてくれます

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」の画像はこちら >>

ロボットを遠隔操縦しているのは、外出困難者

今日は、ある変わったカフェについてです。先月、東京・大手町で期間限定でオープンしていた、その名も「分身ロボットカフェ」。机の上には小ぶりのロボット「OriHime(オリヒメ)」が置かれていて、お客さんはOriHimeに話しかけるようにドリンクを注文します。そしてしばらく待っていると、今度は車輪の付いた背の高いロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」が、スーッとドリンクを運んできて、手で掴んで置いてくれました。店内には大小合わせて複数のオリヒメが動き回り、そこかしこでマイクを通してお客さんと会話しています。では、どんな人が操縦しているのか。このカフェを運営するオリィ研究所の所長、吉藤オリィさんに聞きました。

◆オリィ研究所・所長 吉藤オリィさん
「体が動かないとか 外出が困難な人たちが、遠隔でロボットを操作して働くカフェ。いろんな事情があります。例えば交通事故などで頚椎損傷になってしまった人や、生まれつき病気で体が動かない人たちもいる。それだけでなく、精神的に人前に出ることが怖くて、パニックになってしまった方もいる。」

▼こちらはテーブルの上に置かれた小ぶりのロボット「OriHime」。遠隔操作でオーダーを取っていたのは大下桜さん(さくちゃん)

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」

▼自走できる高さ120センチのロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」。

遠隔操作されて、テーブルまでドリンクを運びます
寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」

▼ドリンクがきました!

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」

▼遠隔操作ロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」がドリンクを置いてくれます

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」の画像はこちら >>

上の写真の“さくちゃん”という女性は、車椅子で生活しているそうです。重い疲労感が長く続く「慢性疲労症候群」を患っていて、自由に動き回るのが難しいんですが、体が動かなくても、寝たきりでも、PCやタグレットで簡単な操作さえできれば、ロボットを動かすことができます。店員さんは、高校生から50代まで。秋田から福岡、さらにはオーストラリアからの参加もあったそうで、前文で30人が、時給制で遠隔勤務しています。

操縦者「できないことができる!」

そんな中、人一倍元気な声で接客していたミカちゃんという店員さんに話を聞くことができました。

▼愛知から遠隔操作していたミカちゃん
「愛知県の名古屋の隣町から操作。ALS、全身が3~5年で呼吸できなくなる難病。手が不自由だが、手先がまだ動くので、PCのマウスを使って操作している。飲み物も運ぶし、売店で接客、机のさん上でオーダーも取ってる。やってて楽しい。家にいると、普段ヘルパーや家族以外はなかなか話すことがないが、外との世界が繋がって、今日もたくさんの人とお話できて、お会いできて、毎日とても充実している。」

▼OriHimeを操る、接客中の“みかちゃん”にお話を聞きました

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」

みかちゃんは、3年前にALSの診断を受けたそう。身体がだんだん動かなくなって落ち込んでいる時にカフェの求人を発見し、外の世界と繋がりたい!と即応募。
声を聞いただけでとても生き生きされているのがわかりました。また、喋るのが難しい方は、文字盤に文字を入力してそれを機械が読み上げたり、視線入力=画面上の文字を見つめて言葉を入力したり、様々な方法でコミュニケーションを取っていました。

お客さん「意外とあったかい!距離が近い!」

続いて、そんな接客を受けたお客さんはどう思ったのか、感想を聞いてみました。
●「川崎市から。距離感が非常に近い。本当にここにいる人と話している感じがして、楽しい。」

●「港区。広島のオススメのお好み焼き屋さんの紹介とか、意外性もあって面白かった。」

●「横浜から。びっくりした。想像以上に明るいし温かい。サクちゃんとか、ゆいぴーとか、その人の名前で呼びかける。「オリヒメ」というロボットだが、本当にその人がそこにいる実感が持てた。」

ロボットと聞くと無機質なイメージかもしれませんが、私も実際に会話してみて、目の前にその人がいる感覚で楽しくコミュニケーションできました。ちなみに分身ロボットカフェは、今回が2回目の開催。

カフェの「体験チケット」としてクラウドファンディングを募り、今回は目標金額を大幅に上回る 1千万円以上の支援が集まったそうです。

ミッションは、“寝たきりの先”を作ること

12日間という短い期間での運営でしたが、「たくさんの新しい失敗を積むことができた」と、代表の吉藤さんも満足げに話していた。最後に今後の目標について、吉藤さんに聞いた。

◆オリィ研究所・所長 吉藤オリィさん
「世の中って「身体至上主義」で、身体が動くことを前提にデザインされているので、身体が動かない人たちの就労は、今までほとんどできなかった。だから、身体が動かないと仕事ができない世の中だと、我々もいつか身体は動かなくなるわけです。その時にどうやって生きていけばいいのか、どうやって楽しく仲間たちと働けばいいのか、っていう答えを誰も知らないので、いま研究しているわけです。カフェを作りたいわけでもロボットを作りたいわけでもなく、死ぬまで人生を謳歌しながら、笑いながら生きていける社会、これを研究するのが目的で、寝たきりの先を作ることが私たちのミッションです。」

▼吉藤オリィさんと

寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」

今回のカフェは、あくまでも実証実験。吉藤さんは、今回店員となった人たちを「寝たきりの先輩」と呼んでいたですが、超高齢化社会の中で、私たち一人一人の将来にも繋がっていく研究でした。

(担当:TBSラジオキャスター 田中ひとみ)

◆11月9日放送分より 番組名:「人権TODAY」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191109082000

編集部おすすめ