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9月15日(木)放送後記

8月24日、ロシアのウクライナ侵攻から半年が経ちましたが、日本でも1700人以上のウクライナ避難民が暮らしており、様々な支援が広がっています。

ウクライナ避難民向けの防災アプリ

まずは、先月末から新たなサービスを始めた、エボラニ株式会社の広報担当、石田ライラ佳津美さんのお話。

エボラニ株式会社・広報担当石田ライラ佳津美さん
「ベセルカ」という名前の、災害や緊急事態が起きた時に、その場で使えるスマートホン向けの支援ツールを開発しました。


例えば地震などが起きた時に、「火を止めましょう」だとか「テーブルの下に隠れましょう」だとか、私達日本人が子供の時から知っているような情報っていうのを、簡単にまとめてウクライナ語で紹介をしております。
緊急事態っていうのが、例えば救急車を呼ばなければいけない時、まず番号は「119ですよ」っていったところの案内をしております。
日本に来て色々な情報が、日本語で検索しないとウクライナ語にその後、辿り着かない。最初からウクライナ語で、こういった行動指針が見れるものが必要なんじゃないかと思って、私たちはこれを開発するに至りました。

ウクライナ語で「虹」を意味する、「ベセルカ」という無料のサービス。

スマホアプリ「ライン」や「メッセンジャー」のチャット機能を使ったもので、選択形式で回答すると、取るべき行動を教えてくれます。

①「Natural disaster(災害)」「Hospital(病院)」「Embassy(大使館)」から一つ選択

ウクライナ侵攻、避難長期化。広がる支援の形の画像はこちら >>

②「Natural disaster(災害)」を選ぶと、続いて「Earthquake(地震)」か「Typhoon(台風)」か、「Indoors(屋内)」か「Outdoors(屋外)」かを選択

ウクライナ侵攻、避難長期化。広がる支援の形

③最終的に、取るべき行動指針が示されます(画像は「台風」「屋外」を選択した例。他にウクライナ語にも切り替えられます)

ウクライナ侵攻、避難長期化。広がる支援の形

使い方は、まず、メニュー画面の「災害」「病院」「大使館」の3つから、どれかを選択。
このうち「災害」をクリックすると、今度は「地震」か「台風」か選択。
そして、今いる場所は「屋外」か「屋内」か、を選択。

例えば「台風」で「屋外」を選択すると、「海や川には近づかず、雷が発生したら鉄筋コンクリートの建物や車に避難しましょう」と、身を守るために取るべき行動が示されます。

さらに、「病院」のメニューでは、外国語対応ができる近くの病院を検索できたり、救急車の呼び方もわかるので、こうしたアプリで、初めての地震や台風に備えて欲しいと話していました。

「ユーチューブ」で子どもの学習支援

そして、日本での暮らしが長引く中で、もう一つ、教育現場での支援も進んでいます。続いて、京都教育大学・教育学部の教授、黒田恭史さんに伺いました。

京都教育大学・教育学部・教授黒田恭史さん
「ウクライナからの子供たちに対して、算数・数学を、母語で学ぶことのできるような動画コンテンツを制作し、配信しています。
これはですね、ユーチューブに全てアップロードしていまして、無償で全世界から見ることができるようなシステムになっています。
小学校1年生から高等学校3年生までで、割り算であったり、分数であったり、あるいは中学校でいうと二次関数とか、高校でいうと指数関数とか、様々な内容を取り上げています。
やっぱり子供たちが学校にいきなり入って学べるかっていうと、学べないんですね、言語の壁は非常に高いので。早い段階でサポートするシステムを作らないとっていう思いで作りました。
国が非常に厳しい状態になると、その時期の子供たちって学力がつかなくて、国として再建するときにものすごく時間かかるんですね。そこはやっぱり極力避けていきたい。

▼Youtube動画:【中学3年生】円周角と中心角・円周角の定理・証明(ウクライナ語版)

ウクライナ侵攻、避難長期化。広がる支援の形

算数と数学の学習動画を、ユーチューブで無料公開。1本あたり3分程度で、「数の数え方」や「連立方程式」など、すでに300本を配信しています。

ウクライナの子供たちへの教育は、各都道府県の教育委員会や学校現場に任されていて、手探りの状態が続いているそうですが、ネックとなるのは言葉の壁。

そこで、学びを止めないためにも、まずは母国語で学んでもらおうということで、この動画は実際の教育現場でも活用されているそうです。

▼京都教育大学・教育学部・教授黒田恭史さん

ウクライナ侵攻、避難長期化。広がる支援の形

しばらくは日本で、「私にできることをやる」

今年度中に580本の配信を予定しているそうですが、動画の翻訳を担当しているのは、実は、ウクライナからの避難民や留学生の方々だそうです。

そこで、翻訳者の1人で、昨年11月から大阪大学で学んでいる、首都キーウ出身の、カテリーナ・マリニナさんに、どのような思いでこのプロジェクトに参加したのか伺いました。

大阪大学 在学中カテリーナ・マリニナさん(首都キーウ出身)
「やりがいは本当にありました。動画を見ている子供たちにとっても、助かる時もあるらしいので、すごくやりがいを感じました。
私は家族、父以外はみんなドイツに避難できているんですけど、父は東の方で、戦闘に参加してます。
やはり明日はどうなるか、今日もどうなるか、生きているか…。私にできることは何なのかって考えてしまうときはたくさんあります。
戦争が始まった時に、私、約束したことが一つあります。
それは、危ないところに行かずに、安全なところにいるって、父も母にも約束したので。
恋しくになってしまう時もありますが、しばらく日本にいることが可能でしたら、日本にいたいなと思いました。

村上春樹や吉本ばななが好きで、日本文学を専攻している、カテリーナさん。

お父さんは、激しい戦闘が続く東部ドネツクか、ルガンスクの辺りで、兵士として戦っていて、SNSなどで現地の写真を見ると、「言葉で表現できないほど辛い」と話していました。

先月、帰国する予定だったそうですが、現地の状況を鑑みて、来年3月まで留学が延長されているそうですが、卒業後は、日本の企業への就職を目指して、就職活動も行っています。

終わりの見えない避難生活。学びや就労、災害対応等を、社会全体で支援する必要がありそうです。

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