TBSラジオで月曜から木曜、朝8時30分からお送りしている「パンサー向井の#ふらっと」。
6月12日(月)は、月曜パートナーの滝沢カレンさんが、知りたいテーマについて専門家に疑問をぶつける「カレンの好奇心スクール」をお届け!
今回のテーマはホラー映画!『呪怨』など数多くのホラー映画を手がけ、6月16日(金)から公開予定の『忌怪島』映画監督の清水崇さんをお迎えし、ホラー好きのカレンさんからの質問に答えていただきました。
ホラー映画の着想は『ごっつええ感じ』の「キャシィ塚本」から?
清水:僕も実は中学生くらいまで「なんでわざわざ怖いのを見るの?」って言うタイプだったんですよ。
滝沢:へえ!
清水:だからちょっとその気持ちはわかるんですね。苦手な方の。だから自分の映画でも誰にでもおすすめはできないと思っているんですけど、カレンさんみたいな人がいてくれて助かるし、怖いのをわざわざ、映画なんていうお金払って足を運んで観るものだから、そこまでして怖い体験をしようっていうのって実は人間だけの贅沢な娯楽だと思うんですね。
向井:絶叫マシーンとかもダメな人は絶対ダメで、あれになんでお金払うのって人もいる分野ですね。
清水:そうなんですよ。だから誰にでもおすすめ、無理強いはできないんですけど、でもそこも魅力だし、怖さって実は表裏一体で”笑い”とも通じるところが僕はあると思ってるので、結構お笑い番組とか大好きで観ていますし、そこからこれはホラーに持っていける、というか。
滝沢:え!?どの部分でそう思うんですか?
清水:なんかコントでちょっと狂気めいたコントってあったりするじゃないですか。

向井:例えば「かもめんたる」さん。キングオブコントのチャンピオンの方のコントとかは、確かにそこの笑いと怖さが結構絶妙な。
清水:ギリギリのところですよね。ああいうのも好きですし、もうそれこそ昔、もう伝説の「ごっつええ感じ」みたいなものから、とか。いろいろ発想は得られてますね。
滝沢:そこから来てるんだ!ホラー。
向井:「キャシィ塚本」ってコントのキャラで。
清水:大好きです。
向井:料理教室でかなりエキセントリックな料理の先生っていうネタも”笑い”ではもちろん面白いですけど、1個視点変えると怖いですもんね。
清水:そうなんですよね。だんだん、ちゃんとあれは松本さんが、誰にもわかるところから乗せていくからいいんですけど。
向井:段積みにして笑いに。
清水:後半だけ見たら、もう狂気の沙汰なんで、ああいうのとかって、持っていきようによっては、もしくはリアクションによってはホラーになる。
滝沢:信じられない!あそこからホラーが生まれるんですね。
『ET』もホラーだと思っていた少年時代
向井:最初に映像作品を撮りたい、っていうか。そういう世界に行きたいな、っていうのはだいぶ早い段階から思ってたんですか?
清水:いつも意外に思われるんですけど、僕は10歳のときに、まだホラー映画が苦手な頃に『ET』という映画がやってたんですよ。スピルバーグ監督ってジュラシックパークもそうですけど、じわじわだんだんミニマムなところから見せていくじゃないですか。恐竜をバーン!って見せないで、響いてる水を。
向井:ちょっとずつ近づいてる感じとか。
清水:もう怖いじゃないですか。ああいうのって。気配見せるだけでって。『ET』も怖い映画だと思ってて、絶対観ないと思ってたんですよ。「なんでこれでみんな感動してるの?」って。
向井:『ET』を怖い映画だと思ってたんですか?(笑)
清水:苦手だったから。なんでそんな気味の悪い宇宙人の映画をみんな見に行くの?って思ってたら、親戚のおばさんに誘われて。男の子だから「怖い」っていうのがなんかかっこ悪い、って思って言えなくて。どうしよう、どうしようと思って観に行ったら、たまたま主人公は自分と同じ10歳で、しかも友達をかくまうような友情物語で、もうたった2時間後には感動して映画館出てきて、そこが映画ってすごいっていうきっかけで。
向井:はー!
清水:パンフレット買ってもらったら、映画に出てこない髭のおじさんが写ってて、こんなすごい人がいるんだ、って。
向井:スピルバーグですね、それが。
清水:これを作った大人が裏側にいるんだ、っていうので、監督に憧れを抱いたのが最初です。
滝沢:「ET」さんからだったんですね。

ホラー映画を撮り始めたキッカケ
向井:ホラー映画を取りたいっていう入り口ではないんですね。
清水:ではないんですよ。中学生くらいまで見れなかったくらいですし。たまたま助監督しながら通ってた映画の講座があったんですけど、そこで映像課題を自分で仲間で作った自主制作の3分くらいの出せ、提出しろっていうのがあって、それを作ってるうちに脚本を書き直したり、色々やってるうちにだんだん、いつの間にか結果ホラーになっていて、脚本はサスペンスっぽいものだったんですけど、そこがきっかけで、黒沢清さんという監督さんが、僕のことをプロデューサーに推薦してくれて、もうそれがきっかけで、ずっと20年以上ホラーばっかり作ってるんですよね。
『呪怨』は「怖ければ何でも良い」と言われて作った。
滝沢:『呪怨』をつくろうと思ったきっかけとかはあるんですか?
清水:『呪怨』はですね、当時僕より10個ぐらい上の先輩なんですけど「リング」が流行ったんですよ。中田秀夫って監督の。「リング」が流行ったところで、今までホラーとか手をつけてなかったいろんな映画会社が、猫も杓子も、続け!と。
向井:「ホラーやれ、ホラーやれ」みたいな。
清水:「うちもホラーの企画立てろ」みたいなのがあって、「東映ビデオ」さんが、ヤクザ者路線、ツッパリ路線ばかりだったVシネマの中でまで低予算でホラー作れる若手いないか。っていうので探していて、そこで僕にたまたま話がまわってきて。
向井:乱暴なオファーいただいてますね(笑)
清水:乱暴だけど、自由ではあるじゃないですか。で、怖さといえば、僕は子供のときホラーが苦手だった頃に想像だけで寝れなくなっちゃうような、神経質な子だったので、布団に潜るじゃないですか、怖いと。でも、霊って人間じゃないから布団に潜ろうが、なんだろうが、この中まで入ってきてどうすんだろう。と思ったり、想像しちゃって寝れなかったんですよ。そういう子供のときに想像したあれこれを全部つぎ込んで「呪怨」を作ったんですよ。
向井:やっぱり怖がりの人
「一番怖いのは人間だよね」が恥ずかしく感じる。けど・・・
滝沢:こんな「呪怨」さんを作っていく中とか、いろんなホラーを撮られていると思いますが、自分も”何か”を見てしまったり、こういう事をしてると、本当の霊が集まってくるのではないかな。と思ったんですけどどうでしょうか?
清水:何かたまに感じることはあったりするんですけど、僕の場合は慣れすぎてむしろ「見てみたい」「体験してみたい」ってなりつつあって、自分自身は見たりとか直接的なことはないんですよね。
滝沢:ないんですね。
清水:だけど人から聞いたり、ちょっとあまりにもこの偶然の一致おかしすぎる、ってことはあったり、しかも間に何十年も隔てて。
滝沢:ええ!?

清水:そういう不思議な怖い話、怖いというか不思議な話はあったりとかスタッフが騒ぎ出したり、キャストの一部が騒ぎ出したりはあるんで。
向井:ある種怖いお仕事にしてしまうと、この”怖い”っていう感覚の受け取り方が特殊になっちゃってますよね。
清水:そうですね。で、どうしても大人になっていくと、みんななんか知ったふうな感じで「やっぱり一番怖いのは人間だよね」って言いがちなんです。僕、あの言葉がもう恥ずかしくて。いろんな人が偉そうに言うんですよ。「やっぱ人ですよね、怖いの」みたいな。なんか「俺、世の中知ってる」的な。あれ恥ずかしいな、って。みんな言うんですよ。本当に。
向井:「結局、人が一番怖い」みたいなね(笑)
清水:映画会社の人もテレビ局の上の人もみんな言うんで、「またこの人も言ってる」と思って笑っちゃう。
一同:(笑)
