TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!
7月30日(日)放送後記
西畠清順さん(Part 1)
1980年10月29日兵庫県生まれ。高校卒業後に世界を放浪した後、2001年から世界各地の植物を収集し、国内外の政府機関・企業などのオーダーに応じて植物を届けるプラントハンターとして活動。
JK:今日はどちらからいらしたの?
西畠:実は1週間ぐらい東京に滞在してて。仕事したりサーフィンしたり、友達とサーフィン行ったり・・・わりと馬車馬のように働きながら(笑) 好きなことしかしないって決めてるんで。
JK:でもそれで仕事になるのが一番いい人生ですよね。今日はタンクトップで迫力ありますね! プラントハンターってすごいわよね。
西畠:昔『情熱大陸』っていう番組に2回出させてもらって、1回目出た時に「職業名何にしますか?」って訊かれて、「植物問屋でお願いします」って言ったら「いやいや、そこはプラントハンターで行きましょう」ってディレクターさんが言ってくださって。そしたらそれが転がって行って、今の自分があるんじゃないかなって。
JK:過去にそういう人いないから、なんて表現すればいいかわかんないですよ。第一発見者みたいな。
西畠:ヨーロッパではプラントハンターって伝統的な職業があったんですよ。17~18世紀はヨーロッパの貴族や王族のために、植物を探しに行って届けた人たちのことをいうらしいですよ。
JK:建物があって庭があるから、庭の存在って大切ですよね。
西畠:そうですね、素晴らしい家に住みーの、素晴らしい家具に囲まれーの、料理人に美味しい料理を作ってもらいーの、音楽奏でてもらいーの・・・ってすべて欲しいものを叶えたら、最後に欲しくなるのは美しい花が咲いている自分の庭。僕の周りのセレブの人も、庭が欲しいとか森が欲しいとか増えてて。
JK:先週ニースにいたんですけど、8ヘクタールの庭を持ってる人がいた。真ん中におーきな川があって、川の向こう側に渡るのに橋をアートして。あれは理想でしたね! 大きなヤシの木があるとかじゃなく、大きな25mの彫刻とか・・・とにかくお庭の広さがないとね。案内してもらうのにもカートで3時間かかっちゃった!
出水:お2人の接点は今年5月南青山にオープンしたイデアルビルで、2人の作品が飾られたんですよね。西畠さんは大きなオリーブの木、ジュンコさんは掛け軸のオブジェ。
JK:何かやってくれってオーナーに言われて、お能関係の方だから和で行こうと思って、和だから床の間、床の間だったら掛け軸。だから掛け軸やります!って言ったの。
西畠:そうですね。最初ここに松を植えようとしたんですけど、日当たりのことやらメンテナンスのことを考えるとオリーブの木がいいっていうオーダーだったんで、オリーブを含めていろいろ考えたんですけど、やっぱりお軸から施設の主の気持ちを一番伝えるじゃないですか。山水っていうジュンコさんの作品が主に代わって客人をもてなすという完璧なストーリーになっているなと思って。じゃあ僕の木は?と考えた時、この仕事では花が咲くものって茶庭とか一切植えないんですよ。お軸を見て過ごしてもらうための、お迎えするためのウェルカムツリーみたいなもので、こいつは主役じゃないんですよ。盛り上げるための木なんですけど、そういう意味でいうと、上に枝が広がっていて、松のように仕立ててあるんです。
JK:オリーブの木の流れをみて、盆栽の大袈裟なものかなって思った。動きが素晴らしいですよ! 踊ってるみたい。
西畠:オリーブ農園で実を取るためにずっと剪定してたものなんですよ。そういった木を何万本という中から選んで、スペインから持ってきてここに植えたわけです。
JK:このオリーブってハイアットリージェンシー東京ベイと同じものでしょ? あそこ最初ヤシの木が少なかったの。「もっとヤシの木があってもいいじゃない?」って言ったらだーっとヤシの木が増えたのよ。本当、私の一言!
西畠:おもしれ~! 僕も紹介されてプロジェクトに入った時に、ここで庭するんですよって言われた時に、「いや、その前にもうちょっと考えた方がいいです」って言ってアドバイザー契約したんですよ。「ここには絶対ヤシを入れた方がいい」って俺も言ってたんです。コシノさんと同じ考え方してたんですね、偶然だけど。
出水:2012年に立ち上げた「そら植物園」は会社名? それとも活動名ですか?
西畠:わざとややこしくしてて。そら植物園というのは昔稼業の問屋にいたときに、自分のブランドとして作ったんです。でも親ともめてしまって、独立した時に会社化したんです。ブランド名なのか会社名なのか活動名なのか、わかんないほうが面白いかなって。
JK:いくつの時?
西畠:僕が35とか36の時です。幕末から5代続いてたんですけど。
JK:日本にとっては松とか重要ですもんね。踊ってるみたい。
西畠:皇居の松なんか素晴らしいですよ。動きっていうてはんのが面白い。僕ら本職も言うんですよ、「この木動きがいいね~」って。かぶいてる感じですよね。
出水:西畠さんは年間50トンを超える植物を取引しているそうですが、そんなにも植物は入ってきてるんですか?
西畠:今年は300トンぐらい言ってると思います。そういうとビックリされると思うんですが、でもね、毎年海外から植物だったり野菜だったり果物だったり、農作物とか園芸ものは何十万トンと輸入されてるんですよ。だからそういう意味では大したことない量なんですけど、1社でそれだけ巨大な植物を輸入したり供給したり、輸入したものを海外に再輸出してるのは僕らだけかもしれないですね。
出水:この木が欲しい!なのか、それともこういう世界観がいい!なのか、どういう形で依頼が来るんですか?
西畠:両方です。今回みたいにオリーブの木がいいって言われて選ぶ時もあれば、僕がトータルで考えて条件や予算と合わせながら、イメージとか抽象的なイメーから、そこにどんな空間を作って、どんな木があったらいいかなというのをこちらで通訳して、プランを立てて、調整しながら場所を作っていく時もあります。
JK:大変なことだなと思って。
西畠:それも両方ですね。素材をそのまま持ってきてちょっと養生して出すものもあれば、ものによっては苗から育てることもあったり。種で輸入することもあります。
JK:時間はかかりますね。いつになることやらわからない(^^)
西畠:でも今、奄美大島にある蘇鉄の種を毎年グアテマラに20万個輸出してるんですよ。それをグアテマラの農場で4年間ぐらい育ててもらうと、玉ねぎぐらいの大きさになって。それをデンマークの種苗会社が輸入して、欧米のIKEAに売ってるんです。最初にプロジェクト始めた時は先の長い話だなぁと思ってたけど、気が付いたらもう15年やってるんですよね。だから毎年毎年うちが出荷して、毎年グアテマラで育てられて、毎年デンマークからいろんなホームセンターに送られて。その仕事は1サイクル4年なんですけど、毎年その時期が来ると「そんなもん」って感じ。
JK:自分のお庭がない人は、IKEAで買ってプランターとかで育てられるものなんですか?
西畠:そうです、そうです。
JK:街路樹って街の象徴だけど、そういうのもやるんでしょ?
西畠:それが今、僕のすごくモチベーションが高いところで、街を彩る商業施設とか全部それぞれいろんな形してるじゃないですか。でもそれをつなぐ街の風景って街路樹しかないんですよ。
JK:ヨーロッパとかイタリアだと面白い街路樹がいーっぱいあるわけ。何の印象ってそれしかなくて。そういうのって東京だと、銀杏並木とか問題になってるけど、なくなっちゃったら日本は終わりだなって思っちゃう。
西畠:でもあの問題が出てきた時に、日本人ってまだそういう心が残ってたんだなと思って、逆によかったなって。日本人って本当に街路樹大事にしない民俗なんですよ。びっくりするぐらい! よくわからないプランニングされて、木が植えられて、葉っぱが落ちるからって税金かけてつんつるてんに剪定して・・・なにやってるんや、このシステムは!って思ったりしたんですけど、外国いくと街路樹が街の象徴になっていて、ヨーロッパだったらプラタナスやマロニエ、メキシコだったらジャカランタが街の象徴になっていて。ポートランドなんて自分ちの木でも勝手に切っちゃだめ。だからあれだけ緑視率のある緑の街ができてるんです。日本人はやーばいですよ!
JK:本当にそう思います。ビルの林じゃ面白くない。
OA楽曲
M1. The Three Of Us / Ben Harper