新年度になりましたが、教育現場で今、広がり始めているのが”ラーケーション”制度の導入です。

導入広がる”ラーケーション”とは

これは、平日に学校に行かなくても欠席にならないというもの。どんな内容なのか、今年度から新たに導入する茨城県の教育委員会 櫻井良種さんに伺いました。

茨城県教育委員会 櫻井良種さん
ラーケーションと言って「ラーニング(学び)」と「バケーション(休暇)」をくっつけた造語です。年度内に5日間以内、児童・生徒が体験活動等を行うため「登校しなくても欠席にならない日」を設ける制度です。コロナで修学旅行、文化祭、合唱祭などが次々と中止になった時期がありました。子どもたちの体験を増やしたい、学校の外に出ていく学びも充実させたいと取り入れました。例えば、高校生は、普段の大学の様子を見に行って、大学生と話をしたり、小中学校では、自分でアポを取ったりして、平日じゃないと聞けない様子を聞いて学びにつなげていただけたらと思っています。

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茨城県では年度内で5日まで、申請すれば、学校に行かなくても出席停止や、忌引きなどと同じように欠席扱いになりません。

あくまでも「休みをとる」のではなく、学校に行かずに体験活動をする位置付けです。
例えば、平日に混雑していない水族館や博物館に行ったり、自宅で保護者と将来について話し合ったりするのもいいそう。最大5日間あるので、土日と合わせて最大9日間を利用して、海外の単身赴任中の家族に会いに行く、高校生が短期留学に行くこともできます。
小中学生は保護者と活動することが条件ですが、高校生は生徒同士でもOK。ただ、必ず保護者が事前に、電話やメールなどで「こんな活動をするので、この日にラーケーションを取ります」という申請が必要です。
今年度から、茨城県立の高校や中学校など全107校に加え、30以上の市町村の公立小中学校でも行われます。

昨年度から導入した愛知県では

一足早く、昨年度9月から”ラーケーション”を導入しているのが愛知県です。利用状況や、保護者の反応などについて、愛知県教育委員会の昨年度の義務教育課 課長 水谷政名さんのお話です。

愛知県教育委員会 昨年度の義務教育課 課長 水谷政名さん
9~12月の4ヶ月の利用状況ですが合計35.4%が取得、あるいは取得予定と答えています。名古屋市は実施せずに、そのほかの53の市町村全てが実施した状況です。例えば、音楽でバイオリンの授業をしたので、バイオリン工房に行って製作過程を見て学んだとか科学に興味のある子が、近くの高校の文化祭でサイエンス部の発表を保護者とともに見に行ったとは聞いています。平日休みの保護者の方が、家族で過ごすことができるので、土日働いている保護者にとってはいい制度だと聞きます。

登校しなくても欠席にならない”ラーケーション”広がる

働き方改革が進む一方、子どもは平日に登校する、というのが通常で、保護者と過ごす時間を増やしてほしい、というのもラーケーションの狙いの一つだということで、愛知県では保護者と共に過ごすのがルールで最大3日まで取得できます。


これまでの活動で一番多かったのがアウトドア。他にスポーツ観戦や、映画鑑賞、テーマパークに行くなどで利用した方も多かったそう。
去年9月スタートということで、取得済み・取得予定の家庭が3割ほどでしたが愛知県の担当者は、今年度は5割くらいになるのではないかと見込んでいました。
ラーケーションで受けられなかった授業については、普段休んだときと同じくプリントなどを使って自主学習で対応することになっているということです。

名古屋市は愛知県で唯一導入せず

そんななか、愛知県内の自治体で唯一、昨年度から導入を見送っているのが名古屋市です。その理由を、名古屋市教育委員会 中谷誠さんに伺いました。

名古屋市教育委員会 中谷誠さん
ラーケーションを利用できるお子さんと、できないお子さんがいるということで、公平性に欠けるというのが理由の一つ。一つは経済的事情。もう一つはご家庭で家を離れられない状況、ずっと介護されてるとか色々な事情ありますので、そういったことで利用できないと考えています。もう一つは、家庭で学習を補充するという建て付けで行われていますが、家庭任せでいいのかな。3日間、例えば6時間授業があったとしたら、18時間分、家庭でやっていただくことができるのかな?というのがまず1つ。例えば理科の実験とか体育とか家庭任せはなかなか難しいのではないかという。

 

愛知県は県民のワークライフバランスを充実させようと「休み方改革」を進めていて、その一環が”ラーケーション”なんです。名古屋市も「休み方改革」には賛同しているものの、こういった課題が懸念されるので、現時点では導入の予定はないということでした。