地図を遊びつくす!地理院地図3D&カスタマイズ
東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を愛していただきたい!という番組「立飛グループpresents東京042~多摩もりあげ宣言~」(略して「たまもり」)。MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。
今週のゲストは、番組最多出演の地図研究家、今尾恵介さん(日野市在住)。これまでも多摩の地名や地形の解説、鉄道好きという土屋との共通項から妄想の路線図を一緒に作ったり、地図クイズの司会を担当するなど「たまもり」ではお馴染み。今回は地図好きが地図好きの人のために作ったという新著を持ってご登場!
カスタマイズに3Dモードも!「地理院地図」を楽しむ方法
番組最多出演!地図研究家・今尾恵介さんの新著「地理院地図の深掘り」、今回もディープ!
土屋:さっそくゲストのご紹介です。横浜市出身で現在は「日野市」在住の多摩人、そしてこの番組の準レギュラー、地図研究家の今尾恵介さんです!
今尾さん:はい、よろしくお願いします。
土屋:改めて、今尾さんのプロフィールの紹介をつる子さんからお願いします!
つる子:はい。今尾さんは1959年、横浜市生まれ、「日野市」在住。出版社勤務を経てフリーとなり、地図や鉄道関連の執筆を続けていらっしゃいます。この番組では主に、多摩の地名や地形、鉄道のご意見番として知識的な面で支えていただいております。最新刊はPHP研究所から販売中のかなりディープな本「地理院地図の深掘り」です。
土屋:この新著がかなりディープだと伺っているんですけど。
今尾さん:けっこう一般にもわかりやすく書いたつもりなんですけど、そんなにディープですかね!?
土屋:いやいや、今尾さんはポップにしてくれているんですけど、これは・・・ディープですね。
つる子:(笑)。
今尾さん:あ、そうですか(笑)。
「地理院地図」とは?
土屋:でも、今尾さんの熱を感じられるから。ディープなのになぜ、ここまで盛り上がれるのかということに非常に興味があるので。そもそもこの、“地理院地図”、これはなんですか?

今尾さん:国土地理院が出している地図サイトですね。
土屋:そもそも“国土地理院”をわかってないんですけど・・・?
今尾さん:日本の測量する役所です。国土交通省の国土地理院。筑波にあって、そこで日本の地図の大元締めをやっておりまして。例えば、地震があると“どことどこが何センチ離れた、縮んだ”みたいなものすごく細かいことをやっていたり、災害があるとそこへ行って浸水がどれくらいあるかを測って、翌日にはアップするという、すごいことをやっていますよ。
土屋:へえ! じゃあもう日本の地理のすべてのデータが集まっているということですか!
今尾さん:はい、そうです。
土屋:で、その地理院地図の深掘り。我々からすると、地理院の地図ですら深いのに。
つる子:さらに深掘りを。

今尾さん:中学1年の時に、国土地理院の2万5000の1という地形図で、地図の世界にハマり込んだんですよ。
土屋:中学の時に、なぜそれを知ったんですか?
今尾さん:日本の学校のカリキュラムで、中学1年生の4月くらいに“地図の読み方”という勉強をする時に、国土地理院の地図を教材としてあてられているんですよ。
土屋:そうか。我々は意識をしないまでも地理院の地図で地図を学んでいたということなんですね。
今尾さん:はい、その通りです。
土屋:で、それの深掘りって、どういうことなんですか?
今尾さん:地理院の地図は以前はひたすら紙だったわけですけど、最近になってネットで見られる国土地理院の地図になったんですね。私が子供の頃は2万5000の1という地形図が1枚100円だったんですよ。毎週マリンバのレッスンをするのに横浜に行くたびに有隣堂という本屋さんでお小遣いから買って。100円5枚というのが目安でしたね。

土屋:ちょっと・・・マリンバの話に興味が(笑)。
つる子:(笑)。
今尾さん:マリンバやってたんですよ(笑)。
土屋:今でも演奏できるんですか?
今尾さん:今はアマチュアオーケストラでやってますよ。
土屋:メッセージじゃあ、今尾さんのマリンバ演奏は“タマソニ”決定ですね。
今尾さん:まあ、打楽器一般ですからね。シンバルや小太鼓だとか。
土屋:その2万5000の1という地形図というのはどれくらいの大きさですか?
今尾さん:4cmが1kmですね。
土屋:そうか、ある部分の地域だけを買うんですね?
今尾さん:そうですね。日本全国が4千何百面で覆われているんですよ。その中で私が最初に買ったのが横浜西部でした。
土屋:そういうことか。それを4千何百面も買うと日本になるという
今尾さん:私は明治時代から今に至るまでいっぱい持っていますので、まあ万単位にはなるんですけどね。
つる子:うわ~!

土屋:時代によって違うんだ!
今尾さん:それを比べるのがおもしろくて。
土屋:その地図を今は、スマホなどデジタルで見られると。
今尾さん:そうなんですよ。
つる子:そうなんだ!
今尾さん:地理院地図というのは、地形図以外にも“土地利用図”、“土地条件図”など、モードを切り替えることで色んな地図が見られるんですよ。真上から見た空中写真にもなるし、終戦直後のかなり古い写真もすぐに見られるんですよ。
「地理院地図」を深掘り!
土屋:「地理院地図の深掘り」という本は、それをどうやって深掘りされているんですか?
今尾さん:それをどうやって役立たせるか。自分で作る色別標高図は標高が高いほど黄色く茶色くなって、低いほど緑や青になる。そういう色付けは学校の地図帳でありますよね。山の方は黄色くオレンジ、茶色くなる。そういうのを自分のカスタムメイドでできるんですよ。

つる子:カスタムメイド!
今尾さん:例えば、標高差が0mから2mしか無い所も紙の地図だったらみんな緑色なんですよ。
土屋:そうですよね。
今尾さん:それが0.5m刻みで色を変えられるんですよ。そういう地図が作れるんですよ。
土屋:ああ、なるほどなるほど! 1m違うだけでも高低差ができると。
今尾さん:この本で取り上げているのは“吉原”の地図でなんですよ。吉原は江戸の北東の田んぼを埋め立てて造ったエリアで。埋め立てたので微妙に高いんですよ。その微妙な高さがわかる色使いをすると、黄色の四角が浮かび上がっていますから。
つる子:うわ~、おもしろいです! これが吉原の。
土屋:なるほど。それは細分化しないと浮かび上がってこない、と。

今尾さん:ここは高いかなと思った所が意外に低かったり。例えば、日本橋から銀座の中央通り。中央通り沿いは少し高いんですよ、昔、中州というか島だったんで。
つる子:ええ!?
今尾さん:そこから日比谷の方に行くと低くなる、東京駅とか。あの辺は入江だったので。
土屋:なるほど。それをウェブ上で自分でカスタマイズして。これ、想像するに・・・今尾さん、止まらないですよ。
つる子:(笑)。

土屋:お金もかからず、自由に。
今尾さん:タダですよ。
土屋:そういう今尾さんがカスタマイズした地図が、この今尾さんの新著「地理院地図の深掘り」に紹介されているという。
今尾さん:そうですね。あと、距離や面積が測れるとか色んな機能があるので。南北の経緯度を表示させることもできるし、地名を検索して自分と同じ名字の地名がいくつあるか、とか。
土屋:うわっ、そんなソート機能まで! これはおもしろいですね!
「地理院地図」の3Dモード!
土屋:地理院地図がいろいろとカスタマイズできる中で、“3Dモード”もできるんですか?
今尾さん:そうそう。3Dモードはいいですよ! 立体になるんですよ。例えば、地理院地図は“写真モード”と“地図モード”があって、写真モードにすると真上から見た空中写真が出るんですけど、それが3Dモードにすると浮かび上がるんですよ! それを北から見たアングルと南からアングルをぐるぐる回して自由に調節できます。

土屋:iPhoneとかアップルの純正のマップも3Dっぽくビルなどが立体に見えたりするんですけど、そういうことが地形図でできるんですね?
今尾さん:できるんです。例えば、“箱根のカルデラ”もすごく立体なわけですよ。地図で見ると立体的なのがよくわからないので。等高線を読む人は慣れているのでわかるんですけど。そうじゃないとなかなか立体的に見えないんですけど、“写真モード”を3Dで持ち上げて見て、しかも高さを2倍、3倍に誇張できるんです。そうすると、おお!という感じで持ち上がってくるんですよ。
土屋:僕はそれはずっと見ることができちゃうタイプですね。
今尾さん:おもしろいですよ、これは。立体地図というと、みんな富士山ばかり取り上げるんですけど富士山だけじゃないんですよ、阿蘇山もおもしろいし。

「地理院地図」から見た「多摩丘陵」
土屋:つる子さん、ヤバい。今のところ、多摩の話が出て無いです。
つる子:あっ!
土屋:地理院地図を使って、多摩地域関連でおもしろい見方や発見などはありましたか?

今尾さん:「多摩丘陵」はけっこう起伏がありますよね。例えば、近道をしようという時に平面図を見ればすぐにわかるわけですけど、でも実際にはものすごい急坂でアップダウンがあるということがあって。地理院地図の“断面図モード”というのがあって、それだとどんなふうにアップダウンしているかがよくわかるんですよ。一瞬でわかりますから。
土屋:「高幡不動」のあたりですよね。
今尾さん:そうですね。直線距離だと近そうに見えるんだけど、ものすごい急坂を上がって下りてみたいな目に遭わなきゃいけない。
つる子:あります、あります。
今尾さん:それに比べると3割くらい距離は増えるけどわりと平坦なコースはあるので。
土屋:つる子さんの出身校の「中央大学」をそれで見てみたら・・・
今尾さん:「中央大学」のあたりは大変ですよ!
つる子:本当に坂が激しいんですよ!

「地理院地図」と「多摩川」と「砂利鉄道」
土屋:あと、「多摩川」も特徴的な感じがするんですけど・・・
今尾さん:関東近辺ではかなり急流河川になって。そうだ、「地理院地図」は川の重断面図も作れるんですよ。
つる子:ええ!?
今尾さん:「雲取山」からずっとクリックしていくと、放物線カーブにしたような綺麗なラインが出てくるんですよ。東京の荒川とか江戸川とかあるんですけど、みんな勾配が緩いんですよね。「多摩川」はかなり急勾配なので、それで近くで砂利がいっぱい取れるんですよ。

土屋:なるほど。上から角度があるから削られていって。
今尾さん:上流から下流に連れていくに従って、川の石は小さくなっていきますよね。羽田の河口だと砂とか泥しか無いんですけど、「多摩川」は武蔵小杉あたりから上流に行くと砂利が取れるので、大正時代くらいから砂利採りが盛んになったんですね。だけど、江戸川では砂利は取れないんですよ。だから、“砂利鉄”はみんな「多摩川」沿いなんですよ。
土屋:そうですよね。「西武多摩川線」も砂利を運ぶために最初は出来て。

つる子:なるほど。
今尾さん:はい。玉電(=東急多摩川線)もそうですよね。「京王相模原線」も「調布駅」から「京王多摩川駅」の間も砂利線ですから。
土屋:あ、そうですか!
今尾さん:あと、「東京競馬場前駅」の「武蔵野線」の一部だった「下河原貨物線」というのがあって、下河原という場所が砂利採り場だったので。河川勾配が急なのでいっぱい砂利線が出来たと、地形からも言えるんですよね。
土屋:今尾さんは人生でいくら時間があっても足りないですね!
今尾さん:そうですね。「地理院地図」は川も山もわかるんですよ。山の断面図もいいし、3Dもいいし。こんなに遊べるものはないですよ。私が中学の時にこれに出会っていたら大学に行けなかったかもしれない(笑)。
つる子:(笑)。


(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)