水沼貴史の欧蹴爛漫069
サンプドリアからシャルケへ移籍した吉田 photo/Getty Images
W杯を見据えたドイツ移籍
水沼貴史です。今夏も欧州で戦うさまざまな日本人選手が、新たな挑戦を決断しています。
まず、イタリアのサンプドリアからシャルケへ移籍した吉田についてです。シャルケといえば、吉田と仲の良い内田篤人がかつてプレイしたクラブでもあり、内田は多くの地元ファンから愛されました。さらに、昨季は板倉もプレイし、2部ではありましたがチーム内で地位を確立。1年での1部復帰に大きく貢献しました。そのため、日本人選手に対するファンの期待値は大きいのではないでしょうか。
もちろん、それぞれ経験値や特長も違うし、持ち味も違うので、同じようなことができるわけではない。当然難しさもあるでしょうが、吉田ならやってくれるでしょう。まだまだ欧州のトップリーグでやれるという気持ちはあるでしょうし、今回の挑戦をW杯へ還元するという思いもあるでしょうからね。
そして、そんな吉田はプレシーズンから素晴らしいパフォーマンスを見せています。さらには、加入1年目にもかかわらず、これまでの経験やパーソナリティを買われ、チームの副キャプテンにも抜擢されました。オランダ、イングランド、イタリアと渡り歩き、各国でコミュニケーション能力の高さを発揮していましたし、チームにもすんなり入ることができ、すぐに受け入れられるのではないでしょうか。
また、プレイ面に関しては、昨季のシャルケは2部でも守備の脆さが垣間見られることがあったので、吉田には経験を活かし、うまく周りの選手を使いながら是非ともチームに安定感をもたらしてもらいたい。初めてのリーグということもあり、課題も出てくるかもしれません。ただ、長谷部誠がフランクフルトでやっているぐらいのレベルは吉田もできるでしょうし、私としては吉田に対しての不安は全くありません。新天地のドイツで色々なことが新たに感じられると思いますし、見られると思うので、年末のW杯へ向けても多くのことを吸収してもらいたいですね。W杯のグループステージで相見えるドイツ代表には国内でプレイしている選手が多いため、日本代表にとってもキャプテンがドイツでプレイしていることは大きいのではないでしょうか。
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マンCからボルシアMGへ移籍した板倉 photo/Getty Images
成長曲線をさらに伸ばし、1ランク2ランクへ
次に、板倉に関してです。
また、ドイツには絶対王者としてバイエルンが君臨。さらに、ライプツィヒのように速いクラブ、ヴォルフスブルクのように強度のあるクラブ、レヴァークーゼンのように技術のある選手がたくさんいるクラブなど、さまざまな名タイプがいます。そのため、押し込まれる展開もあるでしょう。板倉はビルドアップを行う上で短いパスは問題ないので、今後は出てきた相手に対して一発でひっくり返せるようなパスを期待したい。チームの戦術にもよりますが、そういうパスを狙ってほしいですし、出せたらいいなと個人的には思っています
守備の部分も、だいぶハードさが見られるようになってきていて、ものすごく成長を感じられます。緩さや甘さが消え、メンタル面も研ぎ澄まされたように感じますし、ここ数年で明らかに動きが変わりました。
そんな板倉が欧州のトップリーグでどれだけ通用するのか見てみたい。速さなど、これまでとの違いに戸惑う部分もあるかもしれませんが、対応能力を上げ、「壁なんて当たり前。それぐらいは自分で乗り越えます!」ぐらいの強い気持ちを持って戦ってほしいです。ボルシアMGは昨季、リーグで3番目に多い失点数で、11年ぶりの2桁順位でシーズンを終えています。守備を再構築する上でも、板倉がキーマンになるかもしれません。そういった意味でも、初めて欧州のトップリーグで戦うという意味でも、板倉にとって今季は勝負の年になるかもしれませんね。ドイツ代表にも選ばれているヨナス・ホフマンなどと、日頃から一緒にプレイできるのも経験として貴重でしょう。
吉田と板倉、ともに同じポジションなので、日本代表でもセットで起用されることもあるでしょう。お互いドイツでより一層磨きをかけ、お互いが信頼できるようなレベルへ成長してもらいたいです。板倉には、思い切ってプレイして自信をつけてほしい。
それでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている