選考が進むにつれて気になるのが企業研究。



企業研究の手段のひとつに財務分析がありますが、財務指標はどれもピンと来なくて難しいと感じる就活生が多いのではないでしょうか。



教科書通りの財務指標には、金融機関が融資審査で使うものや、経営者が経営上の問題を洗い出す時に使うものも含まれます。その多くは、就活生にはあまり必要ありません。



就活生が企業研究で知りたいことは、金融機関や経営者が分析したいことよりずっとシンプルです。



面接の前に知りたいことは「業界のトップ争いはどうなっているか」「その企業は成長しているか」「稼ぎ頭の事業はどれか」など、企業の基本的な状況です。



内定をもらったら「潰れたりしないだろうか」「自分の価値観にフィットする企業か」といったことが知りたくなりますね。



そのような目的なら、見るべき財務指標は次の3つで充分です。



■見るべき指標1.売上高



就活では、売上高は以下の観点でチェックするのが良いでしょう。



チェック観点1「業界のトップ争いはどうなっているか?」

「業界のトップ企業で働きたい」という方は、業界の主要各社の売上高を比べてみましょう。



直近の売上高だけでなく、3年前、5年前、10年前の主要各社の売上高を書き出してみましょう。順位の入れ替わりがあるかもしれません。その業界のトップ争いの経緯が見えてきて、企業選びの参考になるでしょう。



チェック観点2「成長しているか?」

「若いうちからチャレンジできる環境で働きたい」という方には特に、売上高の成長率は重要な指標です。

過去3~5年程度の売上高を見ます。



売上高の成長が著しい企業では通常、業務がどんどん増えているということですから、若手を積極的に活用する空気になりやすいものです。



逆に、売上高が減少を続けているのは黄信号です。少し注意してその企業の置かれた状況を調べてみるのが良いでしょう。



■見るべき指標2.営業利益



営業利益は、本業での利益獲得力を測る指標です。企業の最終的な利益は「当期純利益」ですが、就活では、企業本来の稼ぐ力である「営業利益」に着目し、以下の観点でチェックするのが良いでしょう。



チェック観点1「本業だけで利益を獲得できているか?」

過去3~5年程度の営業利益を見て、恒常的にだいたい黒字の傾向であれば、本業だけで利益を獲得できている企業です。



当期純利益ではなく営業利益に着目するのは、「当期純利益は黒字だが営業利益は赤字」ということが起こり得るからです。当期純利益には、預金の利息など本業に関係ない収入のほか、不動産売却などによる儲けのように偶発的な収入が含まれ、それらが営業赤字をカバーして最終的に黒字になることがあります。



当期純利益が黒字でも営業利益が恒常的に赤字の企業は「偶発的な何かが重なって今はたまたま黒字になっているだけで、長期的に見ればいつ赤字に転落してもおかしくない状態」かもしれません。



チェック観点2「その企業の稼ぎ頭はどの事業か?」

複数の事業を展開する企業では、企業全体の営業利益だけでなく、事業部門別の営業利益を公開していることがあります。その企業のホームページにアクセスして、業績に関するコンテンツから「事業別業績」「セグメント情報」などの言葉を頼りに探してみましょう。



お目当ての企業が事業部門別の営業利益を公開していたら、ぜひチェックしましょう。出来れば過去の数字もチェックして、推移も把握しましょう。



企業にとって価値がある事業は、売上が大きい事業ではなく、営業利益が大きい事業です。



営業利益が大きい「稼ぎ頭」の事業は、その企業にとって花形の事業部門と言えるでしょう。



店舗が多い事業などは外部から見ると目立ちますが、売上が大きくても、儲かっていない、つまり営業利益が赤字続きであれば、企業にとってその事業は全社業績の足を引っ張る「お荷物」になっている可能性があります。そのような事業部門では、人員削減などの効率化、場合によっては事業売却に取り組んでいることも考えられます。



■見るべき指標3.自己資本比率



自己資本比率とは、その企業が持っている資本のうち、返済する必要がない資本の割合です。



自己資本比率は高いほど安全性が高いとされる指標ですが、就活生にとっては一概に「高いほど良い」とは言えません。



就活では、自己資本比率は以下2通りの観点でチェックしましょう。



チェック観点1「安定した企業か?」

自己資本比率が低すぎないかをチェックします。自己資本比率が低すぎると、事業の継続性に心配が出てきます。借入などの他人資本に大いに頼って事業をしている状態で、返済を求められたら事業の原資がなくなるからです。



ただ、借入で資金を調達すること自体は正常なことです。自己資本比率は業種や戦略によって大きく変わるので、一概に「何%あれば安心」というものではありません。



目安として、以下の状態であれば少し注意して情報収集するのが良いでしょう。



・同業他社の中で突出して低い



・10%を切っている



チェック観点2「新たな事業展開に積極的な企業か?」

自己資本比率が高すぎないかをチェックします。自己資本比率が高すぎる企業は、安定している反面、保守的であったり、新たな事業展開に積極的でなかったりする可能性があります。



例えば、大きな設備投資が必要な場面で「借入で資金調達してスピーディーに事業を展開する」というような、成長するためにリスクを取る戦略を嫌う企業かもしれない、ということです。



就活生の価値観次第ですが「革新を重視する社風の企業で働きたい」「若いうちからチャレンジできる環境で働きたい」という方には、自己資本比率が高すぎないかどうかがひとつの参考になります。



目安として、以下の状態であれば少し注意して情報収集するのが良いでしょう。



・同業他社の中で突出して高い



・70%を超えている



■まとめ



就活生の目的を踏まえると、マニュアル通りに難しい財務指標をたくさん見る必要はありません。



また、財務指標の数値をどう判断するかは、自分がどんな企業を望むのかによって変わります。



企業研究を効率よく進めるためには「自分は何のために何を知りたいのか」をしっかり認識したうえで進めていきましょう。



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