投資信託に限らず、金融商品を購入する際、その商品は未来永劫存在するものと思いがちです。
そこまで大げさに考えなくても、いつでも購入していつでも解約できるものだと考えがちです。
同様に、投資信託も同じものが未来永劫運用され続けているように思っている方も多いのではないでしょうか。確かに投資対象のカテゴリーで考えると、それぞれの金融商品はいつでも存在しているので、なんとなく同じ個別商品がいつでも存在するように見えますが、実際はそうではありません。
■投資信託の「償還」と「繰上償還」とは
投資信託は、運用期間が満期を迎えたり、当初定めた満期前に運用を停止したりすることが頻繁にある金融商品です。前者を「償還」、後者を「繰上償還」といいます。
投資信託は販売を開始する前に、あらかじめ償還日(満期日)を決めて設定します。
投資信託は定められたルールの中で、自由に設計できる金融商品ですから、毎月新しい投資信託が生まれる一方で、償還や繰上償還を迎える投資信託があるのです。
自動車はトヨタのカローラのように人気車種は何十年も生産され続ける一方で、人気がなくなった車種は生産が停止されます。投資信託も似たようなところがあり、ある程度の残高のあるものは償還されず、残高がないものは繰上償還される傾向にあります。
自動車と投資信託の違いは、前者がフロービジネスで後者がストックビジネスであるところです。販売時に人気を博して1千億円を超えるような残高がある投資信託は、その後売上が低迷しても毎年数億円程度以上の信託報酬が入ってきますから、販売が不振でもあらかじめ決められた償還時までは存在しているというわけです。
図表1は直近6年間(2020年は推定)の償還及び繰上償還された投資信託数の推移です。年間110本程度の投資信託が償還されているのがおわかりになると思います。
拡大する
出典:モーニングスターのデータより筆者作成
10年間で1000本超、20年間で2000本超の投資信託が償還されるということは、約6000本ある投資信託のうち20年間で約3分の1が入れ替わり、30年間で約半分が入れ替わることを意味します。
現在、30年以上運用されている投資信託は36本しかありませんから※、いかに多くの投資信託が償還されてきたかを物語ります(※データ:モーニングスター)。
■繰上償還されやすい投資信託の傾向
では、どのような投資信託が繰上償還の対象となるのでしょう。以下は償還(償還・繰上償還)されやすい投資信託の傾向です。
たとえば老後に向けた資産形成として長期つみたて投資を志向されている方にとって、運用対象である投資信託が運用途中で償還されることは、運用期間の中断や、新しい投資対象を見つけることを余儀なされることを意味します。よって、そのような可能性がある投資信託はできるだけ避けたいものです。
特に、NISAやiDeCo(個人確定拠出年金)で長期運用されている方は、投資対象となる投資信託を吟味することが大切です。投資信託もビジネスですから、儲からない(=信託報酬が損益分岐点に届かない)投資信託はどんどん繰上償還される傾向にあるのが実情です。
■繰上償還されにくい投資信託の傾向
最後に、繰上償還されにくい投資信託の特徴を上げておきましょう。現時点で30年以上運用されている投資信託を参照すると、次の傾向がわかります。
- 主要株価指数(日経平均株価、TOPIX [東証株価指数] など)に連動するもの。日本の投資信託の歴史的な事情もあり、現存する投資信託の中ではこれらの指数に連動するインデックス投信がほとんど。
- したがって、今後30年以上運用されるであろう投資信託は、主要株価指数(前述及びS&P500指数やNYダウ平均など)に連動する投資信託やETF(上場投信)。
ご参考としていただければ幸いです。
<<これまでの記事はこちらから( https://limo.media/search/author/%E5%A4%AA%E7%94%B0%20%E5%89%B5 )>>