■今まで知らなかった「ネットM&A」の世界



個人での事業買収を激増させた「M&Aプラットフォーム」とは?...の画像はこちら >>

 近年、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』といった書籍が刊行されるなど、個人によるM&Aが注目を集めています。これまでM&Aといえば、企業と企業の間で行われるのが一般的であったことから、M&Aの世界に大きな変化の波が訪れていると言えるでしょう。



 私は1990年代にM&Aの世界に足を踏み入れ、M&Aアドバイザーとして、多くの企業同士のM&A案件に携わってきましたが、ここ数年のM&A市場は、まさに革命が起きていると感じています。現在、日本国内におけるM&A件数は年間4000件と言われていますが、そうした統計には表れない「スモールM&A」の新しいマーケットが誕生し、しかもその買い手の約半数ほどは「個人」だからです。これは、これまでのM&Aの世界では考えられなかったことです。



 この記事では、拙著『マンガ あなたの夢を叶える! ネットでスモールM&A』で述べていることをもとに、なぜ個人によるM&A市場がこれほど伸びているのか、そして大きな変化をもたらした要因の一つである、M&Aプラットフォームの存在について解説していきます。



■3社に2社は後継者がいない!?



 帝国データバンクの調査によれば、後を継ぐ経営者候補がいない会社は全国平均で65.1%、つまり、なんと3社に2社近く! しかも年商1億円未満の小さな会社に限ってみれば、なんとその割合は80%弱に達するのだそうです。



 つまり今、日本で起こっていることは、後継のいない会社が「一抜けた」とばかりに、バタバタと廃業しているということなのです。

例えば皆さんも、昔は繁盛していた地方の駅前商店街が、今はシャッター通りとなっている光景をご覧になったことがあると思います。同じことが、今この瞬間、日本中で進行中だということなのです。



「事業を引き継いでくれる人がいない会社」が増加する中、熱意のある第三者に事業を引き継いでもらったらどうだろう? そんな話が出てき始め、これまでのような大きな企業同士のM&Aと区別するために、国や行政を中心として「第三者承継」という用語を使うようになりました。巷では「スモールM&A」とか「個人型M&A」といった言い方をすることもあります。



 ここにきて一気にM&A市場が盛り上がってきたのは、実はM&A全般ではなく、特にこの第三者承継こと、小さな会社や事業のM&Aの世界のことなのです。



 冒頭でも少し触れましたが、今の日本のM&Aにおける買い手の約半数ほどが、この第三者承継と呼ばれる「個人による小さな会社や事業のM&A」です。



 個人といっても中身はいろいろで、上場企業のオーナーから、個人事業主、サラリーマン、なかには学生といった場合もあります。目的も、私は「小商売」という表現を使ったりしますが、「ちょっとしたビジネスを始めたい」「店舗をやっていて2店舗目を出したい」「ビジネスをやっているが他のこともやりたい」といったものが多くを占めています。



■「M&Aプラットフォーム」ってどんなもの?



 日本人の大多数はサラリーマンですが、その中でも「サラリーマンなんか嫌だ。小さくても自由に自分の好きなことをやりたい」という人は一定数いるはずで、そういったニーズが一気に表に現れてきたと言えるでしょう。そして、こういったニーズに応えてくれる存在が「M&Aプラットフォーム」なのです。



 このM&Aプラットフォームとは、どのようなものでしょうか? ネット検索をすると、最近はたくさんの譲渡企業の情報が掲載されているページに行き当たります。

どれも写真やアイコンが色鮮やかでワクワクします。



 でも、実はそれらの多くはM&Aプラットフォームではありません。



 これらは自社の宣伝と呼び込みを兼ねて、仲介会社が自社の案件をピックアップして掲載しているもの。要するに駅前の不動産屋さんが店頭に物件の案内を貼り出しているようなイメージですね。もちろん、偶然、自分の気に入った案件が掲載されていたのであれば、問い合わせをしてみるのもまったく問題ありませんが、「自社物件」だけなので案件量は当然少ないでしょう。



 M&Aプラットフォームとは、ネットを介して売り手と買い手のマッチングを行うM&Aサービスの総称です。

M&Aプラットフォームには大きく分けて「M&Aマッチングサイト」と「M&A支援サイト」の2種類があります。



■「M&Aマッチングサイト」と「M&A支援サイト」の違い



 数は圧倒的にM&Aマッチングサイトが多く、読んで字のごとく、売り手と買い手をマッチングするためのサービスです。



 M&Aマッチングサイトの特徴は、マッチングだけに特化しているので、とにかく仕組みや操作が簡単なこと。自社のプロフィールを入れて、首尾よくマッチングしたらあとはお好きに、という感じですから、誰でも気軽に利用できますし、かかるコストも非常に安くて僅かな金額で使い放題、完全無料さえあったりします。



 ただ、手軽なだけに、相手の素性や情報の信頼性が高いとは言えず、財務内容や業務内容が実際と異なることもあり得ます。また会計や法務、税務の知識がないもの同士での取引になるため成約率は低く、トラブルが起こりやすい傾向にあります。

あまり大きなトラブルになりにくい、ウェブサイトの売買やちょっとした店舗の売買などには適していると言えるでしょう。



 一方、初めてのM&Aでもトラブルにならないような仕組みを持ったプラットフォームは「M&A支援サイト」と呼ばれることがあります。M&A支援サイトの特徴は、サービス提供者が最初にある程度のチェックやヒアリングを行って情報を掲載しているため、情報の正確性、成約確率もマッチングサイトよりかなり高いことです。



 その他にも、マッチング後の手続きなどをしてくれる専門家を全国から紹介してくれたり、電話で気軽に専門家に相談できる窓口を設けて、さまざまなサポートをしてくれたりします。初めてのM&Aであれば、まずはM&A支援サイトを使うというのが安心・安全な選択になるのではないでしょうか。



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筆者の大山敬義氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)



■すでに従業員も顧客もいる「M&A」と、一からの「起業」



 最近は起業する人も増えていますが、オフィスを借りるのにも信用がいる、募集しても簡単には従業員は集まらない、そもそも仕事が取れないなど、起業すると初めは大変なことばかりです。



 その点、仮に一から起業するのではなくて、どこかの会社を引き継いで始めたとしたらどうでしょう?



 最初からオフィスもあって、従業員もいて、固定客もいる。コストもわかっているから、きちんと収益構造を見てM&Aをすれば、同じ仕事を始めるにしても、安全性はずっと高くなるでしょう。



■ 大山 敬義(おおやま・たかよし)
 日本最大のM&A仲介会社・日本M&Aセンターの創業メンバーの一人。
 以来30年にわたり数百件もの中堅中小企業のM&Aの実務に関わる一方、数多くの講演や著作で多くの後進のアドバイザーの指導にあたっている。また、企業再生の専門家でもあり、内閣府認可特定非営利活動法人 日本企業再生支援機構の理事を務める傍ら、単なるM&Aのアドバイザーにとどまらず、経営者としてハンズオンでの企業再生を行った経験を持つ。
 2018年4月には、日本M&Aセンターからスピンアウトして小規模ビジネス向けM&Aインターネットマッチングサービスを提供する「株式会社バトンズ」を設立、代表取締役に就任。TV等のメディア出演の一方、「NewsPicks」のpro pickerとしても活躍し、インターネットを通じて多くの情報発信を行う。



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