つみたてNISAは今や、資産運用をこれから始めようと思われた方が一度は必ず耳にする制度です。
つみたてNISAについては、ネットや周りの人など色々な情報が飛び交っていますが、あまり悪い話は聞かないことが多いのではないでしょうか。
そこで本日は、自分だけで調べているだけでは気付きにくい、つみたてNISAに潜むデメリットを10年以上大手証券会社に勤務した経験のある私からお話しさせて頂きます。
■つみたてNISAの概要をおさらい
まず、つみたてNISAの概要を金融庁「つみたてNISAの概要」にもとづいておさらいします。
主なポイントは以下です。
■利用可能な人
日本に住んでいる20歳以上の方なら誰でも口座開設が可能です。
■口座開設は1人1口座
つみたてNISAは一人につき一つの金融機関にしか口座開設ができませんし、通常NISAとの併用も不可になっています。
■対象商品は投資信託
つみたてNISAを通じて購入する金融商品は、金融庁が定めた投資信託の中から選びます。
※参考 金融庁「つみたてNISA対象商品届出一覧」(対象資産別)
■売却益が非課税
通常の証券口座で購入した投資信託を売却して利益が出た場合は、その利益に対して現状20.315%の税金が掛かりますが、つみたてNISAの場合はそれが非課税になります。
■非課税期間は20年間
売却益が非課税の期間は投資信託を購入してから20年間の間になり、20年を超えて保有する場合は、その後課税口座に移る形になります。
■1年間で使える非課税枠の上限は40万円
1年間につみたてNISAを通じて購入できる投資信託の上限金額は40万円までです。
■投資可能期間は2042年まで
つみたてNISAが2018年に始まった当初は2037年まででしたが、2020年度の税制改正により5年延長され2042年まで投資が可能になりました。
※参考 金融庁「令和2年度税制改正について」
つみたてNISAの概要については、皆さんがすでにご存知のことも多かったと思います。
■つみたてNISAの3つのデメリット
では、次につみたてNISAのデメリットを見ていきましょう。
■元本保証がない
既にご存知の方も多いとは思いますが、つみたてNISAは元本保証ではありません。
制度が始まった2018年から世界的に株価は右肩上がりで上昇しているため、つみたてNISAを始めて以来、現状で損している人はほとんどいないでしょう。
そのため、周りの人に聞いたりネットの情報を見たりしても「つみたてNISAで失敗をしている」という話はほぼ聞かないはずです。
ただ、実際につみたてNISAで購入するのは投資信託で、確かにプロが代わりに運用してくれる金融商品ではありますが、必ずしも利益が出るわけではない点に注意が必要です。
■20年以内に売却判断が必要
つみたてNISAの最大のメリットは売却益が非課税になることです。
ただ、非課税期間の20年以内に利益を出して売却をしないと、つみたてNISAにおける非課税の恩恵は受けられません。
たまたま今後20年の間に、2008年にあったリーマンショックの様な出来事が起きる可能性もあります。したがって、必ずしも20年以内に上手く利益をだして売却出来るかどうかは分かりませんし、損をしたまま20年以上経過してしまう可能性もあります。
プロでも見極めが困難な売却のタイミングを、20年という期間の縛りがある中で探るのは思った以上に難しいことなのです。
■損をしても税金が掛かる可能性がある
これは、非課税期間終了後もつみたてNISAで購入した投資信託を保有している場合の話です。
仮に、今年40万円分の投資信託を購入して非課税期間の20年間の間、一度も価格が上がらずに20年後半分の20万円になってしまい、そのまま保有し課税口座に移したとします。
その後価格が30万円まで上昇した際に、10万円損はしているけども、一時よりは価格が戻ったのでその時点で売却をするとどうなるでしょうか。
なんと、購入時点から見ると損をしているのに、税金が取られてしまうのです。
これは税制上のからくりで、つみたてNISAを通じて投資信託を購入し非課税期間終了時まで保有した場合は「終了した時点の価格」が税制上の買値とみなされます。
つまり、上記の例では、売却時点では「20万円から30万円に値上がりした」と見なされるのです。
このようにして、つみたてNISAで保有した場合「損をしていても税金が掛かる」という一見奇妙な現象が起こってしまうのです。
一方、通常の口座で同じように投資信託を購入した場合、「40万円から30万円に値下がりした」と見なされるので、売却時に税金は引かれません。
■つみたてNISAのメリット・デメリットを理解する
つみたてNISAは国が貯蓄から投資へ国民のお金を動かすための一大プロジェクトです。
20年間、投資から得られる利益が非課税になりますので、つみたてNISAが投資する側から見ても非常にメリットが大きい制度であることは紛れもない事実です。
ただ、メリットだけに目がいってしまい、後々悔しい思いをして欲しくはありません。
つみたてNISAのデメリットもご理解いただいた上で、本当に自分にあった制度なのかをよく考える必要があります。まずは書籍などでじっくり情報を集めてみることをおすすめします。
■参考資料
- 金融庁「つみたてNISAの概要」( https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/overview/index.html )
- 金融庁「つみたてNISA対象商品届出一覧」(対象資産別)( https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/26.pdf )
- 金融庁「令和2年度税制改正について」( https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/zeikaitaiko01.pdf )
- マネイロ「資産運用はじめてガイド」( https://media.moneiro.jp/ )