■70歳以上はどの世代よりも「有価証券」の保有額が多かった!
定年退職を迎えた後は、老後を悠々自適に過ごしたいと考える方もいるでしょう。最近では働くシニアが増えたものの、そのお財布事情が気になるところです。
理想の老後は人それぞれ違いますが、共通して必要となるのがお金ですよね。
そこで今回は、金融広報中央委員会や総務省が公表する最新データより、70歳以上世帯に限定して「貯蓄が3000万円以上残っている割合」や貯蓄の内訳を探ってみます。
貯蓄を切り崩しながら生活する老後に向けて、対策方法を知るヒントとしてみましょう。
■「70歳以上」貯蓄額が3000万円以上残っている割合
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」から、70歳以上に限定した貯蓄額を見ていきましょう。
■70歳以上・二人以上世帯「金融資産保有額」(金融資産を保有していない世帯を含む)
- 平均:2209万円
- 中央値:1000万円
平均では2000万円を超えました。ただし平均は極端に大きな数字に引っ張られる特性がありますので、ここでは中央値である「1000万円」が参考になるでしょう。
中央値とは貯蓄額が少ない順、または多い順に並べたときに全体の真ん中にくる金額です。
■70歳以上・二人以上世帯「金融資産保有額」の分布(金融資産を保有していない世帯を含む)
- 金融資産非保有:18.3%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:3.8%
- 200~300万円未満:3.1%
- 300~400万円未満:4.5%
- 400~500万円未満:2.0%
- 500~700万円未満:5.4%
- 700~1000万円未満:5.6%
- 1000~1500万円未満:10.3%
- 1500~2000万円未満:6.0%
- 2000~3000万円未満:11.9%
- 3000万円以上:22.1%
- 無回答:2.6%
70歳以上・二人以上世帯のほぼ半分が、貯蓄1000万円以上を達成していることがわかります。
本題の3000万円以上を保有している世帯は22.1%です。5世帯に1世帯以上は3000万円を保有しているということですね。
ただし「金融資産非保有」、つまり貯蓄がない世帯も18.3%存在します。
どちらもほぼ同数ということから、70歳以上の貯蓄には深刻な二極化傾向があることが見て取れます。
■70歳以上世帯の「貯蓄の種類」をチェック
今の70代の方は、現役時代にバブル時代を経験しました。銀行に預けるだけでお金が増えるという、今では考えられない高金利だったのです。
こうした時代を過ごした70代の方は、やはり「銀行預金」で貯蓄を保有しているのでしょうか。
ここからは2022年5月10日に公表された総務省の最新データ「家計調査 貯蓄・負債編」から、貯蓄の内訳も確認しましょう。
先ほどの統計とは違うため、合計金額は一致しないことにご留意ください。
■【70歳以上】貯蓄種類ごとの平均金額
- 通貨性預貯金:630万円
- 定期性預貯金:885万円
- 生命保険など:397万円
- 有価証券:400万円
- 金融機関外:6万円
もっとも多いのは「定期性預貯金」、次いで「通貨性預貯金」、「有価証券」と続きます。有価証券とは株式や投資信託など、運用性のある金融商品です。
実は有価証券は、70歳以上が最も多い金額を保有しています。
堅実に銀行に預けるだけでお金を増やせた世代でも、一定の割合を運用にまわしているのですね。
■「貯蓄を切り崩して生活する」70代に向けた対策とは
70歳以上世帯の貯蓄事情について眺めてきました。
3000万円以上の資産を保有する世帯は全体の22.1%ですが、一方で「老老格差」とも呼ばれる二極化も見られました。
60代には退職金を受け取る人、受け取らない人に分かれるため、こうした差もあるでしょう。
老後はいつまで働き続けられるかわからない分、「貯蓄を切り崩しながら生活する」と想定しておいたほうがいいでしょう。
年金だけでは生活が厳しくなる昨今、今から少しずつ老後の備えを始める必要があります。
「老後のお金がない」という状況を回避するためには、現役時代からの積み重ねが大切になるでしょう。
大切なのはライフプランを見つめることで、「貯め時」を意識することです。そして貯蓄の手段についても70歳以上世帯を参考にしつつ、預貯金・保険・資産運用のバランスを保ちたいですね。
老後までの時間から逆算し、時間が限られている人ほど効率的な貯蓄が求められます。この機会に、一度じっくり「マネープラン」を立ててみてはいかがでしょうか。
■【ご参考】貯蓄とは

出所:総務省「家計調査報告」
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]「用語の解説」によると、「ゆうちょ銀行,郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構,銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金,生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式,債券,投資信託,金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価,債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と,社内預金,勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。なお,貯蓄は世帯全体の貯蓄であり,また,個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める」とあります。
■参考資料
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年(2021年)調査結果」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/ )
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2021年(令和3年)平均結果―(二人以上の世帯)」( https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000000330007&tclass2=000000330008&tclass3=000000330009&result_back=1&tclass4val=0 )