■70歳以上のトレンドは「有価証券」なのか



70歳以上「貯蓄が3000万円以上」は何割か。貯蓄の内訳も確...の画像はこちら >>

現役を引退した後の生活について、不安を抱える人は少なくありません。年金の支給額はマイナス傾向が進み、自助努力の必要性が叫ばれています。



では、今のシニアは十分な貯蓄を備えているのでしょうか。



総務省より「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2020年(令和2年)平均結果―(二人以上の世帯)」によると、全世代の二人以上世帯では、平均貯蓄額が1791万円となっています。



この結果をめぐっては、「お金を持っている高齢者を含んだ数字だから当たり前」という声もあがりました。



しばしば「お年寄りはお金を持っている」と言われますが、本当でしょうか。今回は総務省の家計調査より、70歳以上のうち「貯蓄3000万円以上」を保有する割合を見ていきます。



■70歳以上で「貯蓄額3000万円以上」は何割いるのか



早速総務省の同資料から、70歳以上に限定した貯蓄額を見ていきましょう。



70歳以上「貯蓄が3000万円以上」は何割か。貯蓄の内訳も確認

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2020年(令和2年)平均結果―(二人以上の世帯)」



3000万円以上を保有している世帯は201万3318世帯中の51万2808世帯で、全体の25.5%ということがわかりました。



約4世帯に1世帯は3000万円以上を保有しているということですね。



この結果から、70歳以上世帯では堅実にお金を貯めた世帯が多いことがわかります。



ただしもう一つ注目したいポイントがあります。それは「300万円未満」と「4000万円以上」の世帯数がそれぞれ約30万台前半となっている点です。



このことから、70歳以上の貯蓄事情は二極化しているとも言えます。



■70歳以上世帯の平均貯蓄額は?負債額と合わせて確認



次は70歳以上・二人以上世帯の平均貯蓄額についても見ていきましょう。中には負債を抱える世帯も含まれるため、平均負債額も合わせて見ていきます。



■70歳以上世帯の貯蓄事情



  • 貯蓄現在高:2259万円
  • 負債現在高:86万円

全世代の平均貯蓄額が1791万円なので、そちらを大きく上回る結果となりました。「お年寄りはお金持ち」という意見は、あながち間違いではなさそうです。



負債額も、全世代の平均である572万円よりかなり低く、86万円のみにとどまります。



これにより、貯蓄から負債を差し引いた「純貯蓄額」は2173万円となりました。



50代になるまでは負債額が貯蓄額を上回りますが、70歳以上世帯に限定すれば「純粋な貯蓄額」も2000万円を超えるということです。



ちなみに、同じように算出した60歳代世帯の純貯蓄額は2142万円でした。



単純に比較することはできないものの、70歳以上になっても大きく貯蓄を切り崩すことなく生活できている世帯が一定数ある、と推測できます。



■70歳以上世帯の「貯蓄の方法」トレンドは



70歳以上の方の中には、現役時代にバブル期を過ごした方もいます。当時は高金利だったため、銀行に預けるだけでお金が増えるということが当たり前の時代でした。



こうした時代を過ごした70代の方は、やはり「銀行預金」で貯蓄を保有しているのでしょうか。



最後に70歳以上における貯蓄方法のトレンドを確認してみましょう。



■貯蓄方法ごとの平均金額



  • 通貨性預貯金:642万円
  • 定期性預貯金:882万円
  • 生命保険など:392万円
  • 有価証券:334万円
  • 金融機関外:9万円

もっとも多いのは「定期性預貯金」で882万円(39.0%)です。次に通貨性預金で642万円(28.4%)、有価証券が334万円(14.8%)と続きます。



定期預金と通貨性預金で約67.4%を占めるため、半数以上が預貯金だとわかります。



しかし有価証券が14.8%という数字に、驚いた方もいるかもしれません。



有価証券のうち「株式・株式投資信託」は278万円でした。意外にも、すべての有価証券で70歳以上が最も多い金額を保有しています。



堅実に銀行に預けるだけでお金を増やせた世代でも、一定の割合を運用にまわしているのですね。



■「老後の安心」のために早めに準備を



70歳以上世帯の貯蓄事情について眺めてきました。



70歳以上のうち、3000万円以上を保有する世帯は25.5%でした。ただし、300万円未満と4000万円以上がほぼ同数ということから、「老老格差」とも呼ばれる二極化も見られます。



この世代の格差には、退職金や相続の有無も影響します。



しかし現役時代から老後を見据えて貯蓄をした人と、そうでない人の差も大きいでしょう。



「老後のことなんかわからない」「今の生活で精一杯」「年金があるからなんとかなる」老後の備えをしない人の意見はさまざまですが、まずは現状の把握から始めてみてはいかがでしょうか。



老後を過ごすいまのシニア世代が、「どのくらい貯蓄をキープしているか」を知ることは、マネープランを立てる上で何らかの参考になりそうです。



さらに「ねんきんネット」などで自分自身の年金目安額をつかみ、一度じっくりマネープランを立ててみましょう。



貯蓄の手段についても70歳以上世帯を参考にしつつ、預貯金・保険・資産運用のバランスを保ちたいですね。



■【ご参考】貯蓄とは



総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]「用語の解説」によると、「ゆうちょ銀行,郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構,銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金,生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式,債券,投資信託,金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価,債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と,社内預金,勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。なお,貯蓄は世帯全体の貯蓄であり,また,個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める」とあります。



■参考資料



  • 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2020年(令和2年)平均結果―(二人以上の世帯)」( https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330007&tclass2=000000330008&tclass3=000000330009&result_back=1&tclass4val=0 )
編集部おすすめ