■すでに飽和状態の牛丼業界。牛丼ビッグ3の実態とは
各地で桜の開花宣言が聞かれるようになるこの時期、お花見の計画を立てている方もいらっしゃると思います。
そのお花見にはオーソドックスなお弁当が主流かもしれませんが、意外に手頃で重宝するのが牛丼チェーン店の持ち帰りの牛丼です。読者の皆さんはどこの牛丼が好みでしょうか。今回は吉野家、松屋、すき家という牛丼チェーン店ビッグ3の現状について見ていきましょう。
■牛丼チェーン大手3社の店舗数は4000店以上!
2018年2月時点の吉野家、松屋、すき家(以下、牛丼ビック3)の店舗数合計は4099店舗で、実に4000店舗を超えています。その内訳は、すき家1946店、吉野家1200店、松屋953店と、すき家が他を圧倒する店舗数となっています。
セブン‐イレブンだけでも2万店舗を超えるコンビニエンスストア業界ほどではなないものの、これだけの店舗数を展開する牛丼ビック3は、日常的に目にする身近な存在だといえるのではないでしょうか。
■牛丼業界は既に飽和状態か?
それでは、牛丼ビック3の4000を超える店舗数は、これまでどのように推移してきたのでしょうか。下図は、牛丼ビッグ3の店舗数の推移を2010年4月から月次で見たものです。
まず、ここから分かることは、牛丼ビッグ3各社の店舗数はすでに横ばいの状況にあるか、または減少しつつあるという点です。吉野家は約1200店舗で横ばいの状況にあるものの、すき家や松屋は減少傾向にあるように見えます。
また、牛丼ビッグ3全体で見れば、2014年5月の4153店舗をピークに、現在の4099店舗まで落ち込んでいます。こうしてみると、新たな出店余地はあまりなく、業界として飽和状態にあるともいえます。
牛丼ビッグ3各社の店舗数推移(2010年4月~2018年2月)

出所:会社資料をもとに投信1編集部作成
■既存店売上高を見てみよう
次に、小売り産業を分析する上では欠かせない、既存店売上高の推移を見てみましょう。
まず、すき家ですが、既存店売上高は足元では2017年11月以降100%を超えており、堅調といえます。客数は11月は100%を割れていましたが、12月に入り100%を超え、その傾向は続いています。客単価については、2018年3月期の2017年4月から2018年2月まで、毎月100%を超える状況となっています。
吉野家もすき家と似たような傾向です。既存店売上高自体は2017年11月から100%を大きく上回っており、こちらも堅調です。客数は2017年4月から8月まで100%を割れる状況でしたが、2017年11月以降は100%を超えています。客単価についても2018年2月期の2017年3月から2018年1月までは100%を超えていました。ただ、2018年2月には88.5%と100%を大きく割り込んでいます。
松屋の足元の既存店売上高は、ほぼ100%水準といえます。100%を若干超えたり、割れたりという状況です。その内容を見ると、客数が2017年9月以降2018年2月まで連続して100%を割り続けています。
このように、牛丼ビック3では客数のアップダウンはあるものの、客単価についてはどのチェーンも結果的に引き上げることができているといえます。
■今後の牛丼業界はどうなるのか
牛丼チェーンは店舗数全体で見るとやや飽和状態にありますが、既存店ベースで見れば、客数を意識しながら単価をいかに上げていくことができるかというのが各社の経営の目線ではないでしょうか。
値段が上がると困るという方もいらっしゃるかと思いますが、ハンバーガーなども値上がりしている印象を受ける中、少しの値上げなら我慢できるのか、それとも消費者は別の食べ物に足を向けてしまうのか...。今後の業界の動きに注目です。