「彼らが何を約束しようとも、唯一の解決策は紙幣を刷ることだ。彼らは借金を返済できない。
1971年に何が起きたのか?
StrikeのCEOジャック・マラーズが「BTCプラハ」での講演で、法定通貨の隠れたコストを暴き、感動的な基調講演を行ったことが話題となっている。
マラーズは、米国政府の債務は「タイムトラベルの一形態」であり、将来世代の資源を使っていると表現した。彼は問題の根源を1971年にリチャード・ニクソン大統領がドルの金に対する交換を終了したこと、そしてその後のペトロダラー体制にまでさかのぼると指摘した。
米国の国家債務(1900年から2020年)

対GDP比の連邦債務

S&P500のPEレシオ

国内総所得の従業員報酬のシェア

米国の負債が12兆ドルに達するまでには200年以上かかった。12兆ドルは、2020年から2024年までの4年間で追加された金額である。この借金依存経済は、これからどのような未来を予測しているのだろうか?
連邦債務残高(単位:兆ドル)

「彼らが何を約束しようとも、唯一の解決策は紙幣を刷ることだ。彼らは借金を返済できない。債務不履行に陥ることもできない。借金の価値を下げるしかないのだ。紙幣印刷のコストは通貨で支払われるのではなく、我々が支払うのだ。
若者がそれを負う。お金を無制限に印刷することは道徳的違反だ。将来の世代からの無許可の奪略である。法定通貨(不換紙幣)は道徳的に間違っている。ビットコインは、『検閲なし、インフレなし、盗難なし』という突破できない倫理的ルールで設計されたものだ。未来は待つものではなく、築くものだ」(ジャック・マラーズ)
勝ち目のないバブルの「資産効果」:どちらに転んでも私たちは損をする
イーロン・マスクは「債務上限を上げ続けるなら、債務上限に何の意味があるのだろうか?」と述べた。だが、リン・オールデンの言うように、この列車(負債バブル)を止めるものは何もない。なぜなら、全ての負債はインフレ、税金、あるいは債務不履行によって返済されるからだ。政府はただ支出を続け、問題を先送りするだけだ。
先日、チャールズ・ヒュー・スミスはブログで、『勝ち目のないバブルの「資産効果」:どちらに転んでも私たちは損をする』というコラムを載せたが、興味深い話なので以下に抜粋して紹介する。
【2007年以降に米国で実施された経済・金融政策が誰に有利で、誰に不利かを考えてみて欲しい。(資産の大部分を保有する高齢者や機関に有利であり、資産をほとんど持たない若年層には不利)若年層は、持つ子どもの数を少なくするか、まったく持たないという論理的な選択をしている。何か劇的な変化が起きない限り、出生率や家庭の形成は今後も大幅に減少し、米国の労働者階級の将来も同様に悪化していくと予測される。
賃金の国民所得に占める割合は、過去50年間にわたって減少している
出所:チャールズ・ヒュー・スミス2007年は、金利政策によって学生ローンや消費者ローン(自動車、クレジットカードなど)が爆発的に増加した年でもあった。これは、横ばいの消費者人口がより多く消費し続けるための措置だった。2008年以降、若い世代が負担する債務が爆発的に増加した一方で、人口や労働力の増加はわずかにとどまった点に注目して欲しい。
GDPから連邦債務を差し引いた値は2008~09年まではプラスだったが、それ以降は大きくマイナスに転落した。これは「種モミを食べている」状態と呼ばれ、将来の生産性と次世代からの借金で、持続不可能な現在の消費を賄っているということだ。この結末は悲惨だ。
GDP・連邦債務・GDPから連邦債務を引いた数字
出所:チャールズ・ヒュー・スミスいずれにせよ、私たちは敗者となる。もし連邦準備制度(FRB)が「すべてのバブル(Everything Bubble)」の膨張を維持し続けるなら、国家の若い世代を壊滅させ、社会の安定を致命的に損なうことになる。そしてもしそのバブルがついに崩壊すれば、消費を支えていた「幻の富」は永遠に「マネー・ヘブン」へと消え去る。
私たちは皆、2009年から2025年にかけての、壊滅的に近視眼的かつ自己中心的な政策の代償を、これから何十年にもわたって背負うことになる。見かけ上の統計は簡単に操作できるが、その裏では経済と社会が中身を抜かれ、大多数を犠牲にして少数の利益のために利用されてきた。
これは現実世界の問題であり、貨幣の問題ではない。
残念ながら、「お金」をいじくり回してもこれらの問題は解決しない。ステーブルコイン、ベーシックインカム(UBI)、現代貨幣理論(MMT)などは、現実の世界とはかけ離れている。最終的に重要なのは、「どれだけ資源を取り出せるか」「生産性と効率性はどうか」、そして「これらの現実的な要素による利益と損失がどう分配されるか」である。「お金」とは、どのような形態であれ、分配を実現するために使われる手段にすぎない】出所:『勝ち目のないバブルの「資産効果」:どちらに転んでも私たちは損をする』 チャールズ・ヒュー・スミス
団塊(ベビーブーマー)世代の貯蓄と年金と住宅は、団塊世代の政府によって救われた。彼らを救うことで、将来の世代を破壊した。団塊の世代が死んでいく一方で、将来の世代は全てダメになっている。
団塊の世代以外の取り残された世代が、イチかバチかの賭けに打って出ようとする投機的熱狂! だが、金持ちを富ませながら、両建て経済で借金を収益の代わりにすることは、苦い実を結ぶだろう。
7月9日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
7月9日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所 チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「半導体製造装置の最近の動向」「ChatGPTははやるのか?」「財政優位性相場」「トランプは誰かに何か言われたのか?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。




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7月9日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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