ビットコインが1BTC=12万ドル(約1,800万円)に達するなど、上昇が続く暗号資産(仮想通貨)。しかし税務面では「損切りしたのに税金がかかるケース」「利益の額より税金が多くなるケース」などが発生しがち。

より注意して取引しよう!


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知っておこう、暗号資産の売却益には税金がかかる!

 暗号資産を投資対象とする個人投資家は徐々に増えています。米国ではビットコインの上場投資信託(ETF)も登場しており、個人投資家だけでなく、機関投資家や企業もポートフォリオの一部として暗号資産を組み入れる動きも見えています。


 ところで暗号資産の売却益は「総合課税の雑所得」として課税されるため、他の総合課税の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)が多かったり、暗号資産の売却益そのものが多額だったりした場合は、マックスで50%超の税金がかかってしまうのが大きなネックです。暗号資産の追加購入→一部売却が難しい理由は、税金の取り扱いにあるのです。


 現在は、暗号資産の売却益を、FXのように20%の分離課税にしようとする動きもありますが、現状はまだ税金面では厳しい扱いとなっています。


 実はこれだけではなく、税金計算上の利益の算出方法が原因で、暗号資産を売買する際に思わぬ税金が発生してしまう点には十分な注意が必要です。


損切りしたはずなのに税金がかかってしまうケースも!

 例えば次のようなケースを考えてみましょう。


[CASE:1]1ビットコイン(BTC)=100万円のとき1BTCを購入 
[CASE:2]1BTC=1,000万円のとき0.1BTCを追加購入 
[CASE:3]1BTC=800万円に値下がりしたので0.1BTCを損切り


 私たちの頭の中では、[2](1,000万円×0.1BTC=100万円)で購入した0.1BTCを、[3](800万円×0.1BTC=80万円)で損切りしたので、「100万円-80万円で、20万円の損失が生じた」と思ってしまいます。


 ところが税務上の取り扱いはそうはなりません。税務上の取得価格の計算方法は「総平均法」と呼ばれる方法が用いられていて、過去の購入分と、新たな購入分を分けて考えるのではなく、全てを合算した金額で、取得価格を計算することになっているのです。


*総平均法とは…
購入時期や価格が異なる複数の在庫を合計し、その総額を総数量で割った「平均単価」を算出し、棚卸資産や売上原価を評価する方法。価格変動が激しい場合の計算に利用され、コストの一貫性を保つ効果がある。

[2]のところで平均取得単価を出すと、合計1.1BTCを合計200万円で購入しているので、0.1BTC[3]×平均取得価格181万8,181円=18万1,818円になります。


[3]80万円を売却したのですが、0.1BTCの取得価格は、この平均取得額で計算されるため、181万8,181×0.1=18万1,818円。

80万円分の損切りで入金があったのですが、80万円-18万1,818円=61万8,182円となり、差し引き61万8,182円の利益が生じていることになります。


 私たちの感覚では20万円の損切りで税金など出るはずはないと思っていても、税務上は61万8,182円の利益が生じていて、これに対して税金がかかることになるのです。


株式とは違い、暗号資産の取引時には税金に要注意!

 暗号資産は上場株式などと異なり、特定口座の制度がありませんので、どの取引所を通じて買ったとしても、暗号資産の種類が同一であれば、当初購入分と追加購入分の取得価格が平均化されてしまいます。


 その結果、感覚的には利益が生じていないにもかかわらず、税計算上は利益が生じて思わぬ課税を強いられてしまいます。


 暗号資産は非常にボラティリティが激しく、過去も価格が10分の1以下にまで下がったこともあります。税金面を考慮しなければ、高値で買ったものが下がったら損切りをして損失を極小化するということは重要なことです。


 しかし税金面の扱いにより、損切りをしても課税されてしまうケースがある点はぜひ皆さんも知っておいていただきたいですし、課税を恐れて損切りが遅れてしまい、結局は課税されても損切りを早めにしておいた方が良かった、というようにならないようにしたいものです。


 もともと安く買えていたものを追加購入し、その後追加購入分を売却する際は、思わぬ税金負担が生じる可能性があることを理解しておきましょう。


 特に、昨今は、ビットコインが最高値を記録するなど、購入時と比べて価格変動が大きくなっています。予想外な利益が出てしまい、売却(利益確定)した方の中には、確定申告が必要になるケースも想定されます。


 これに対して効果的な対処法は正直思いつかないのですが、筆者は急落時のみ購入し、損切りはせず(ゼロになってもよい範囲内の金額の投資にとどめる)、長期保有することにしています。ドタバタ売買して損切りに加えて余計な税負担が生じるよりは、どっしり構えた方が、長い目で見ればプラスに働くのではないか…、と思っています。


(足立 武志)

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