「手口」や「踏み上げ」など、株式市場ではまるでギャングの世界から飛び出してきたかのような言葉が使われています。なぜ、そんな独特な呼び名がつけられたのでしょうか? 今回は、投資の基本となる証券用語の意味を、クイズ形式で分かりやすくご紹介します。
今日のクイズ
【クイズ】証券用語【A】~【L】について、その説明文を、その下に続く選択肢【1】~【12】より選んでください。【A】~【L】それぞれに対応する説明文がそれぞれ一つずつあります。
【A】目論見書(もくろみしょ)
【B】指値(さしね)
【C】成行(なりゆき)
【D】逆指値(ぎゃくさしね)・成行売り注文(うりちゅうもん)
【E】板(いた)
【F】買い気配(かいけはい)・売り気配(うりけはい)
【G】約定(やくじょう)
【H】前場(ぜんば)・後場(ごば)
【I】寄付(よりつき)・大引け(おおびけ)
【J】手口(てぐち)
【K】空売り(からうり)
【L】踏み上げ(ふみあげ)
<上記証券用語の説明文>
【1】証券取引所に出された買い注文と売り注文の価格・株数をリアルタイムで表示したもの
【2】投資信託などの金融商品で投資家が必ず知っておくべき重要事項を記載した説明書
【3】売買が成立すること
【4】買い注文株数が売り注文株数より多すぎて売買が成立しない状況、あるいは、その逆で売り注文株数が買い注文株数よりも多すぎて売買が成立しない状況を表す言葉
【5】「銘柄」「価格」「株数」を指定して「買い」または「売り」の注文を出す方法
【6】売り値・買い値を指定せず、すぐに約定を目指すときに使う注文方法
【7】一定の株価まで下落したときに発注される売り注文
【8】保有していない株を借りてきて売ること。信用取引の一種
【9】空売り残高が大きい株を買って上昇させて空売り筋の損失を拡大させること
【10】日本株の午前中の取引時間(9時~11時30分)、午後の取引時間(12時30分~15時30分)を表す言葉
【11】取引所が開いて最初に成立する取引、取引所が閉まる前に最後に成立する取引を表す言葉
【12】株式など特定銘柄の取引において、どの証券会社が何株売ったか、あるいは買ったか示す情報
日本株への投資方法
日本株への投資の仕方として、代表的な方法に以下の二つがあります。
【1】日本株に投資している「投資信託」を購入する
【2】日本株の個別銘柄を証券取引所で購入する

取引所での株の売買方法を知らなくても、投資信託は購入することができます。従って、投資初心者はまず投資信託の購入から始めると簡単に始められます。
投資信託は、1日に1回だけ15時30分以降に決まる終値(基準価額)で売買できます(オープン投信の場合)。購入する投資信託を取り扱っている証券会社に口座を開いた上で、その証券会社に15時30分まで【注】に買い注文を出せば、その日の15時30分以降に決まる基準価額で購入できます。
【注】一部、15時30分よりも早い時刻が発注締め切りとなっている投資信託もあります。
一方、日本株の個別銘柄に直接投資するならば、証券取引所などへ売買を発注する必要があります。そのためには、株の売買注文の出し方などを理解している必要があります。
今日のクイズに出した証券用語のうち、投資信託に関するものは「目論見書」だけです。それ以外は、取引所で株を売買するときに知っていた方が良い用語です。
正解
【A】目論見書(もくろみしょ)
【2】投資信託などの金融商品で投資家が必ず知っておくべき重要事項を記載した説明書
【追加説明】目論見書は、投資家に対して発行されるもので、投資判断に必要な重要事項が記載された資料です。投資信託の交付目論見書には、ファンドの手数料(信託報酬)、運用方針、リスクなどが記載されています。
目論見書は、投資信託だけでなく、新規公開株や公募増資でも作成され、投資家に交付されます。
【B】指値(さしね)
【5】「銘柄」「価格」「株数」を指定して「買い」または「売り」の注文を出す方法
【追加説明】私がファンドマネジャーをやっていた1980年代には、電話で証券会社に売買を発注していました。買い指値で注文する場合は、「買いで6501日立、4,200円で100株」のように発注していました(6501は日立の証券コードです)。
今は、ネット証券で注文するのが普通の時代になりました。楽天証券などで日本株売買手数料は無料が多くなりましたが、売買注文を自分で入力する必要があります。
【C】成行(なりゆき)
【6】売り値・買い値を指定せず、すぐに約定を目指すときに使う注文方法
【追加説明】私がファンドマネジャーをやっていた1980年代には、電話で証券会社に売買を発注していました。成行で買う場合は、「買いで6501日立、成行で100株」のように発注していました。
【D】逆指値(ぎゃくさしね)・成行売り注文(うりちゅうもん)
【7】一定の株価まで下落したときに発注される売り注文
【追加説明】保有銘柄に想定外の悪材料が出て、株価が大きく下がる時に、損失を一定範囲に抑えるのに役立つのが、逆指値・成行売り注文です。想定外の下落に備える「損切予約」の注文となります。
例えば、株価1,000円のA社を100株保有しているとして、900円に100株の「逆指値・成行売り」注文を入れておくことができます。株価が900円まで下がらなければ、逆指値注文は執行されません。
A社株が900円をつけると、その直後に、成行売り注文が自動的に出されます。
小型成長株で深刻な悪材料が出るとき、株価がとんでもなく大きく下落することがあります。そういうとき、早めに損切りできる人はほとんどいません。仕事や家庭で忙しくて、株価変動をいつも見ていることができないし、仮に見ていたとしても、損切りすべきか決断できずにずるずると損失を拡大させてしまうかもしれません。
値動きの激しい小型の材料株では、あらかじめ逆指値・成行売り注文を入れてあると、自動的に早めの損切りができて助かることがあります。

【E】板(いた)
【1】証券取引所に出された買い注文と売り注文の価格・株数をリアルタイムで表示したもの
【追加説明】以下は 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) の8月19日大引け後の板情報です。

価格別の指値売り注文株数は左側に出ています。一番上「OVER」の左側には、それより上の価格にある指値売りの株数合計が出ています。まだ約定されていない「成行」注文がある場合は、その上の「成行」のところに表示されます(上の板では成行注文は「無し」です)。
価格別の指値買い注文株数は右側に出ています。一番下の「UNDER」の右側には、それより下の価格に出ている指値買い株数の合計が出ています。
【F】買い気配(かいけはい)・売り気配(うりけはい)
【4】買い注文株数が売り注文株数より多すぎて売買が成立しない状況、あるいは、その逆で売り注文株数が買い注文株数よりも多すぎて売買が成立しない状況を表す言葉
【G】約定(やくじょう)
【3】売買が成立すること
【追加説明】指値で売買を発注する場合、現値より下で買い指値の注文をする場合や、現値より上で売り指値する場合は、約定できないまま終わることもあります。
約定する確率を高めるには、現値より上の価格に買い指値する、あるいは現値より下で売り指値することが考えられます。成行で売買発注すれば、原則すぐに約定することができます(まれに買い気配・売り気配となって約定しないこともあります)。
【H】前場(ぜんば)・後場(ごば)
【10】日本株の午前中の取引時間(9時~11時30分)、午後の取引時間(12時30分~15時30分)を表す言葉
【I】寄付(よりつき)・大引け(おおびけ)
【11】取引所が開いて最初に成立する取引、取引所が閉まる前に最後に成立する取引を表す言葉
【追加説明】東京証券取引所での日本株売買は午前9時に始まります。個々の銘柄で、前場で最初につく株価が寄付価格となります。
12時30分に後場が始まりますが、後場で最初につく価格も寄付といいますが、その日に初めてつく価格ではないので、「後場寄り」と呼んで区別することもあります。大引けでつく価格がその日の終値となりますが、たまに大引けで売買が成立せず、大引け前の株価が終値となることもあります。
【J】手口(てぐち)
【12】株式など特定銘柄の取引において、どの証券会社が何株売ったか、あるいは買ったか示す情報
【K】空売り(からうり)
【8】保有していない株を借りてきて売ること。信用取引の一種
【追加説明】信用取引では、買いから入ることも、売りから入ることもできます。株価が上昇すると予想する銘柄を信用取引で買い、予想通り株価が上昇してから売れば利益が得られます。
株価が下落すると予想する銘柄を空売りすることもできます。空売りした銘柄が、予想通り下落してから買い戻せば利益が得られます。
ただし、空売りした銘柄が値上がりすると損失が発生します。株価1,000円の銘柄を空売りして、1,100円に上昇してから買い戻せば、100円の損失が発生します。
【L】踏み上げ(ふみあげ)
【9】空売り残高が大きい株を買って上昇させて空売り筋の損失を拡大させること
【追加説明】株価変動要因の説明として「踏み上げ相場」という言葉が使われることがあります。空売りが高水準になっている銘柄がさらに株価が上がっていくとき、空売り筋が損失拡大に耐えられなくなって、損切りの買い戻しを出している状態を言います。
初心者の方は、ここまで知らなくても良いかもしれませんね。
株式投資を書籍でしっかり学びたい方へ
最後に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方などを学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 」
「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編 」

(窪田 真之)