米ゼネラル・ダイナミクスは防衛大手で、原子力潜水艦、戦車、弾薬、軍事IT、ビジネスジェットなどを提供しています。世界的な戦車・火砲・弾薬需要増加、米海軍の潜水艦調達拡大、ビジネスジェット新型機販売開始などにより、10年間で株主資本は2.4倍となりました。

他方で株価は2.1倍の上昇にとどまり、同業他社比でも割安な水準にあります。


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原子力潜水艦、戦車、ビジネスジェットが事業の中核

  ゼネラル・ダイナミクス(GD NASDAQ) (株価340.76ドル、時価総額922億9,300万ドル:4月13日終値)は米国の大手航空宇宙・防衛企業で、原子力潜水艦、戦闘車両、軍事ITシステム、ビジネスジェット(航空)の4領域にバランスよく事業を展開しています。


 特に原子力潜水艦の事業は大型・長期契約に基づく事業で他社が参入しにくいため、ゼネラル・ダイナミクスの事業安定性を高めることにつながっています。


 同業他社としては ロッキード・マーチン(LMT NYSE) 、 ノースロップ・グラマン(NOC NYSE) 、 RTX(RTX NYSE) 、BAEシステムズ(BA ロンドン)などがあります。ゼネラル・ダイナミクスに比べるとこれらの企業はそれぞれ主力とする分野が明確に分かれています。


 ロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンは戦闘機、爆撃機、宇宙システムなど航空宇宙分野への依存度が高く、RTXやBAEはミサイル、レーダー、電子戦装置などの電子装備分野が中心となっています。


 ゼネラル・ダイナミクスは1899年に潜水艦開発企業として創業しました。第2次世界大戦後の軍縮の中で潜水艦事業だけでは生き残りが困難となって多角化へとかじを切り、戦車、ミサイル、潜水艦、戦闘機など幅広い軍需製品を提供する総合防衛メーカーとして発展してきました。


 冷戦終結によって軍需市場の崩壊に直面した1990年代初頭には事業を大幅に整理し、戦闘機、ミサイル、宇宙ロケットの各事業を売却して、軍用車両と潜水艦事業を中核とした形に再構築。その後、ガルフストリームを主力製品とする航空機メーカー、ITサービス企業、造船所などを買収し、現在の事業ポートフォリオを形成しました。


 2022年2月に始まったウクライナ侵攻は、ゼネラル・ダイナミクスの製品の需要を大きく押し上げ、同社の業績の拡大を後押ししました。特に米国・欧州がウクライナ支援のために弾薬や装甲車などの補充を急ぐ中、同社の軍需品への引き合いが拡大しました。


 大砲用の155mm砲弾の不足が深刻化する中、同社はウクライナ国内に砲弾工場を建設する計画を進めており、現地生産体制の構築を通じて長期的な需要取り込みを狙っています。


 また2024年以降のイスラエルによるイラン攻撃とそれに対する報復の応酬という状況下、米軍にとって補給・防衛能力の増強が急務となったため、ゼネラル・ダイナミクスが供給する155mm砲弾、戦車用弾薬、指揮統制システムの調達を拡大しました。


 2026年2月から起きているホルムズ海峡を挟んだ軍事衝突は、さらなる海軍艦艇需要増や潜水艦・駆逐艦需要増につながるものと見込まれています。


当期純利益増加とともに株価は上昇

 ゼネラル・ダイナミクスの2015年12月期の売上高は317億8,100万ドルでした。2025年12月期には525億5,000万ドルとなり、10年で1.7倍に増加しました。当期純利益は2015年12月期の30億3,600万ドルから2025年12月期には42億1,000万ドルへと1.4倍になりました。


 これは、世界的な戦車・火砲・弾薬需要増加、米海軍の潜水艦調達拡大、ビジネスジェット新型機販売開始などによるものです。


<ゼネラル・ダイナミクスの当期純利益推移(2015年12月期以降)>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
※2026年12月期は予想値出所:ゼネラル・ダイナミクス資料などより楽天証券経済研究所が作成

 株価は当期純利益の増加と歩調を合わせる形で堅調に推移しています。


<ゼネラル・ダイナミクスの株価推移(2015年12月期以降)>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
※2026年12月期は直近値出所:ゼネラル・ダイナミクス資料などより楽天証券経済研究所が作成

過去実績対比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は393ドル

 ゼネラル・ダイナミクスの過去10年間の業績変化を見ると、売上高が1.7倍、当期純利益が1.4倍となりました。これは、世界的な安全保障環境の悪化を背景に米国防衛予算が歴史的水準へ拡大するという追い風を受けて達成されました。


    同社の海洋システムセグメントではトマホークや魚雷で直接攻撃を行うバージニア級(排水量7,800トン)や、核ミサイルを搭載し核抑止を担うコロンビア級(排水量2万トン)潜水艦の建造が加速。戦闘システムセグメントではウクライナ侵攻やイスラエル紛争など国際需要の拡大により受注残が前年比60%増と急伸しました。


<コロンビア級潜水艦>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
出所:ゼネラル・ダイナミクス

<主力戦車 M1 Abrams>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
出所:ゼネラル・ダイナミクス

 また、民需ですが、航空宇宙セグメントで超長距離ビジネスジェットの最新フラッグシップ機、ガルフストリームG700/G800の納入が大幅に増加したことも寄与しました。


<ガルフストリーム G700>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
出所:ゼネラル・ダイナミクス

 株主資本蓄積は過去10年間で2.4倍となりましたが、時価総額の変化は2.1倍にとどまっています。結果的に株価純資産倍率(PBR)は4.0倍から3.5倍へと低下しました。

PBRが過去10年平均の3.8倍にまで回復した場合、株価は393ドルとなります。


<ゼネラル・ダイナミクスの業績推移(2015年12月期と2025年12月期)> (百万ドル) 2015年12月期 2025年12月期 変化(倍) 売上高 31,781 52,550 1.7 売上総利益 6,232 7,951 1.3 営業利益 4,295 5,356 1.2 税引前純利益 4,219 5,103 1.2 当期純利益 3,036 4,210 1.4 株主資本等合計 10,738 25,622 2.4 時価総額 43,423 92,293 2.1 PBR(倍) 4.0 3.5 - PER(倍) 14 22 - ※時価総額は、2015年12月期は期末時点値、2025年12月期は直近値
出所:ゼネラル・ダイナミクスの資料などより楽天証券経済研究所が作成

 ゼネラル・ダイナミクスの事業は海洋システム(潜水艦)、テクノロジー(軍事IT)、航空宇宙(ビジネスジェット)、戦闘システム(戦車・装甲車・弾薬)の四つのセグメントで構成されています。


 過去10年間の業績変化を見ると、海洋システムセグメントが最も増収増益に寄与しました。中国・ロシアの潜水艦戦力が拡大するのに対応するために、米海軍向け原子力潜水艦需要が継続的に拡大したことが要因です。


<ゼネラル・ダイナミクスのセグメント別業績推移(2015年12月期と2025年12月期)> (百万ドル) 2015年12月期 2025年12月期 変化(倍) 売上高 31,781 52,550 1.7   海洋システム 8,013 16,723 2.1   テクノロジー 8,965 13,471 1.5   航空宇宙 8,851 13,110 1.5   戦闘システム 5,640 9,246 1.6 営業利益 4,295 5,356 1.2   海洋システム 728 1,177 1.6   テクノロジー 903 1,277 1.4   航空宇宙 1,706 1,746 1.0   戦闘システム 882 1,331 1.5 営業利益率 13% 10% -   海洋システム 9% 7% -   テクノロジー 10% 9% -   航空宇宙 19% 13%     戦闘システム 16% 14%   出所:ゼネラル・ダイナミクスの資料などより楽天証券経済研究所が作成

 今後については、2025年12月期、2026年12月期と増収増益が継続する見通しとなっております。結果的に株主資本の蓄積も進むため、株価水準がこのまま変わらない場合PBRは低下し、2027年12月期には3.3倍となる計算です。


<ゼネラル・ダイナミクスの業績予想> (百万ドル) 2025年12月期 2026年12月期 2027年12月期 実績 予想 予想 売上高 52,550 54,708 57,216 営業利益 5,356 - - 当期純利益 4,210 4,486 4,934 株主資本等合計 25,622 28,088 28,998 時価総額 92,293 92,293 92,293 PBR(倍) 3.5 3.3 3.2 PER(倍) 22 22 20 ※時価総額は直近値
出所:ゼネラル・ダイナミクスの資料などより楽天証券経済研究所が作成

防衛同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は554ドル

 ゼネラル・ダイナミクスの比較対象に適する防衛の上場同業他社には、ロッキード・マーチン、RTX、ノースロップ・グラマン、BAEシステムズ、 三菱重工業(7011 東京) 、米 L3ハリス・テクノロジーズ(LHX NYSE) 、米 ハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII NYSE) 、 IHI(7013 東京) などがあります。


 これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、ゼネラル・ダイナミクスについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。この割安感が解消された場合のゼネラル・ダイナミクスのPBR(図の青破線に乗る水準)は5.4であり、相当する株価は554ドルです。


<主な防衛企業のROEとPBRの関係>
弾薬、潜水艦、ビジネスジェットで業績拡大中の米ゼネラル・ダイナミクスに割安感(西 勇太郎)
出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

<主な防衛企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 RTX RTX NYSE 88,603 11 4.2 Lockheed Martin LMT NYSE 75,048 77 22.5 General Dynamics GD NYSE 52,550 18 3.8 Northrop Grumman NOC NYSE 41,954 26 6.2 BAE Systems BA ロンドン 37,364 18 4.2 三菱重工 7011 東京 32,972 11 6.6 L3Harris Technologies LHX NYSE 21,865 8 3.5 Huntington Ingalls HII NYSE 12,484 12 3.4 IHI 7013 東京 10,670 26 8.6 Hanwha Aerospace 012450 韓国 8,244 54 12.3 出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成

 また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、ゼネラル・ダイナミクスの配当利回りは1.7%と相対的に高い水準でした。


<主な防衛企業10社の配当および総還元利回り> 社名 証券
コード 取引所 昨年度 今年度 実績配当 総還元 予想配当 % % % RTX RTX NYSE 1.3 1.3 1.4 Lockheed Martin LMT NYSE 2.0 3.9 2.1 General Dynamics GD NYSE 1.8 2.4 1.7 Northrop Grumman NOC NYSE 1.2 2.7 1.3 BAE Systems BA ロンドン 2.1 3.0 1.7 三菱重工 7011 東京 0.9 1.0 0.5 L3Harris Technologies LHX NYSE 1.3 2.9 1.4 Huntington Ingalls HII NYSE 1.6 1.6 1.3 IHI 7013 東京 1.2 1.2 0.5 Hanwha Aerospace 012450 韓国 0.3 0.3 0.3 出所:各社資料、MarketScreenerより楽天証券経済研究所が作成

 ゼネラル・ダイナミクスは今後も高水準収益継続が見込まれる中で、現在の株価340ドルには割安感があります。

過去実績比で割安感が解消された水準は393ドル、同業他社比で割安感が解消された水準は554ドルです。


(西 勇太郎)

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