中国の1-3月期の実質GDPは5.0%増となり、目標の範囲に収まりました。しかし、消費の低迷や貿易摩擦、失業率の上昇、そして過剰供給や需要不足など課題は山積しています。
中国1-3月実質GDP5.0%増、目標範囲内に収まる
中国国家統計局が4月16日、2026年1-3月期(第1四半期)の主要経済統計結果を発表しました。注目された実質国内総生産(GDP)は前年同期比5.0%増となり、3月の全国人民代表大会(全人代)で通年目標として定めた「4.5~5.0%」という範囲内に収まりました。
過去1年における四半期ごとの成長率の推移を整理すると以下のようになります。
2025年1-3月 2025年4-6月 2025年7-9月 2025年10-12月 2026年1-3月 5.4% 5.2% 4.8% 4.5% 5.0% 注:中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は前年同期比
昨年も、上半期の伸び率が高めで、下半期に落ち込みました。今年はどうなるか。現時点では何とも言えない部分がありますが、緊迫するイラン情勢が長期化し、原油高などの影響を受ける形で、生産、投資、消費、貿易といった各指標が落ち込めば、昨年同様、後半にかけて景気が落ち込むシナリオも現実味を帯びてくることでしょう。
国家統計局はこの日の発表に合わせて、次のコメントを現状認識として発表しています。
「第1四半期の主要マクロ指標の伸びは回復を見せており、新たな成長エンジンも速いスピードで成長している。今年、国民経済は良好なスタートを切ったといえる。しかしながら、外部情勢は従来以上に複雑、かつ流動的であり、変化が激しい。国内における供給過剰+需要不足という矛盾も依然突出している。
足元の景気に錯綜(さくそう)感
この日、成長率以外に、他の主要経済統計も発表されました。以下、1-3月期、および直近の3月の指標を整理します。
中国の主要経済指標
3月 1-3月期 工業生産 5.7% 6.1% 小売売上 1.7% 2.4% 固定資産投資 1.7% 不動産開発投資 ▲11.2% 不動産を除いた固定資産投資 4.8% 貿易(輸出/輸入) 9.2%(2.5%/27.8%) 15%(11.9%/19.6%) 失業率(調査ベース、農村部除く) 5.4% 5.3% 若年層失業率(在校生除く) 16.9% 16.4% 消費者物価指数(CPI) 1.0% 0.9% 生産者物価指数(PPI) 0.5% ▲0.6% 注:中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数字は、失業率および若年層失業率を除き前年同期月比、もしくは前年同期比国家統計局がコメントしているように、景気の回復基調を示す動向は見受けられます。例えば、固定資産投資は昨年マイナス成長でしたが、プラスに転じています。不動産開発投資は相変わらずマイナスで推移していますが、下げ幅は昨年より鈍化しています。
物価関連の指標では3月に、CPIが前年同月比1.0%、これまで下落傾向にあったPPIは前年同月比0.5%、それぞれ前年同期比で上昇しています。不動産不況とデフレ圧力が2026年を通じてどうなっていくのか、注視する必要があります。
一方、失業率は、全体、若年層を含め上昇傾向にあり、夏に向かう中で中国経済の不安要素になるといえるでしょう。
そして、かなりインパクトのある指標を示しているのが貿易です。1-3月期は、前年同期比で15%伸びました。うち輸出11.9%、輸入19.6%となりましたが、3月を単月で見てみると、輸入は27.8%と伸びているものの、輸出が2.5%と一気に鈍化しているのが見て取れます。
イラン情勢の影響は?トランプ訪中の実現なるか?
2月28日に米国とイスラエルがイランに攻撃をはじめ、イランが徹底抗戦する形で現在まで続いているイラン情勢の影響を受けているといえます。米国、イランともに、協議に前向きな姿勢を見せたかと思えば、再び互いをののしり合い、振り出しに戻ったかのような様相を呈しており、ホルムズ海峡の開放問題を含め、情勢は予断を許さないといえます。
中国税関総署が4月20日発表した貿易統計(ドル建て)によれば、3月時点での原油の輸入量はサウジが31%減、イラクが46%減、クウェートが52%減となりました。
一方、ロシアは14%増でした。中国は世界最大の原油輸入国で、国内消費の7割を輸入に依存しています。そのうち約4割を中東から輸入しており、イラン情勢、およびホルムズ海峡の動向は、エネルギーの安定供給や国内のガソリン価格などに影響を及ぼすのが必至であり、景気動向や国民生活への影響も懸念されます。
実際、個人消費関連の指標である小売売上は、上記表で示されるように、1-3月期は2.4%増、3月は1.7%増となり、昨年通年の3.7%増を下回っています。
昨今の中国経済を巡る明白かつ深刻な構造的問題の一つが「過剰供給×需要不足」ですが、イラン情勢の緊迫化を反映する原油高の影響を受けて、国民の生活がひっ迫し、習近平政権として目標に掲げる「内需拡大」が進まないどころか、さらに落ち込むシナリオも十分現実味を帯びているといえるでしょう。
少なくともいえるのは、米国が深い次元で関与しているイラン戦争は、中国経済にとっては「誤算」であり、その影響をどう見積もり、対応していくかが切迫した課題となっているということです。
中国政府としても、手を打っていないわけではありません。石油の国内備蓄を180日分用意したり、近年では、原油輸入先の多角化、エネルギー源の多角化、すでに自動車販売量の半分を超えるに至っている電気自動車を普及させたりしています。
一方、国家統計局が「外部情勢は従来以上に複雑、かつ流動的であり、変化が激しい」とコメントしているように、イラン情勢が国民経済に及ぼす影響を懸念し、可能な限りダメージコントロールすべく奔走しているというのが現状だと思います。
先週のレポート「イスラマバード協議で合意ならず:中国はイラン戦争で何を狙うのか?」で扱ったように、米・イラン交渉の仲介者であるパキスタンを背後で支える形で、事態の鎮静化を図るべく「外交努力」を続けているのも、イラン情勢が制御不能な状況に陥るのを未然に防ごうという意図がうかがえます。
2026年4月16日: イスラマバード協議で合意ならず:中国はイラン戦争で何を狙うのか?
さらに、イラン情勢の行方は、世界最大、最重要の二カ国関係と言える米中関係にも影響してきます。
ただ、状況次第では、再び延期される可能性も否定できないでしょう。そもそも、訪中期間が従来の3日から2日に短縮されていること自体、トランプ氏としては、中国との外交に十分な時間や労力を投入することができないと判断している可能性があります。
私の判断によれば、中国は5月中旬に、トランプ大統領の訪中を実現させ、米中関係の安定化を図りたいはずです。それは、「対外関係を安定させ、経済成長のための基盤とする」という政権指導部のスタンスに符合するからです。イラン情勢、トランプ訪中、中国経済という三角形を巡る動向を注視していきたいと思います。
(加藤 嘉一)

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