俳優の石原さとみ(39)が、2026年5月上演の舞台「彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndVol.3『リア王』」に出演する。主演は吉田鋼太郎(67)、演出は長塚圭史(50)が務め、石原は三姉妹の長女ゴネリル役に挑む。
第2子出産後の復帰作として、シェイクスピア四大悲劇の一つに向き合う。

 石原は今回の挑戦について、「こんなにハードルが高い作品で復帰するとは、正直思っていませんでした(笑)」と率直な思いを明かす。その一方で、「吉田鋼太郎さんとの出会いが、私の役者人生の中ですごく大きかった」「その鋼太郎さんが望んでくださるのであればもちろんやります!という気持ちでした」と語り、出演を決意した背景を説明。さらに長塚からのオファーにも触れ、「『ゴネリル役を演じてほしい』と言ってくださったと聞いて、心が決まりました」と振り返る。

 物語では、リア王が3人の娘に愛情の深さを問う。言葉で愛を示した2人の姉に対し、末娘コーディリアは誠実さゆえに父の怒りを買い、追放される。やがて権力を手にした姉たちの裏切りや欲望が渦巻き、王国は崩壊へと向かう悲劇が描かれる。

 石原が演じるゴネリルについては、「悪役と言われますけど、私は人間的な魅力をたくさん感じています」と語り、「長女としての責任感もあるし、ちゃんと努力もして来た。それなのに親から愛されていなかったという悲しみや孤独を抱えている」と分析。「『これだけやって来たのに』という自負や『もっと欲しい』という欲など、様々なエネルギーを持つ人間」として、多面的に役を捉えている。

 さらに「言葉でしか愛を判断しないのは本当の愛情と言えるのだろうか?」と作品の本質にも言及。リア王と娘たちの関係については、「どんな時代でもゆがんだ親子関係はありますよね」「年老いていくことの怖さや孤独、親世代と子世代の分断など、現代に通ずる問題を提起している」と語り、「多分、みんな自分が正義だと思っていて、みんなが間違っている(笑)」と人間の普遍性を指摘する。


 子育ての経験も役作りに影響している。「『わかるよ~、そうだよね~』って、もう何百回も言ってます(笑)」と日常を明かし、「共感するためには知る力、理解する力、寄り添う力が鍛えられる」と実感。その変化が「ゴネリルに対してもそんな風に見られるようになっている自分がいる」という発見につながっている。

 共演には藤原竜也山内圭哉、松岡依都美、矢崎広、吉田美月喜、山西惇ら実力派が集結。石原は「鋼太郎さんも竜也さんも舞台の上で同じエネルギーを発する方々」と信頼を寄せ、「甘えたいチームが勢揃いで(笑)」と語る。「とにかく稽古が大好き。たくさん失敗して役を深めていきたい」と意欲を見せ、「自分が一番ゴネリルを理解している人間になれたらいいな」と力を込めた。

■石原さとみインタビュー(一部抜粋)

──前回出演された『終わりよければすべてよし』(21年)に続いてシェイクスピア劇が復帰作とは、また挑戦しがいのある道を選びましたね。

こんなにハードルが高い作品で復帰するとは、正直思っていませんでした(笑)。でも『終わり~』とその前の舞台『アジアの女』(19年/長塚圭史作)を演出してくださった吉田鋼太郎さんとの出会いが、私の役者人生の中ですごく大きかったんです。その鋼太郎さんが望んでくださるのであればもちろんやります!という気持ちでしたし、今回演出される圭史さんが私に「ゴネリル役を演じてほしい」と言ってくださったともお聞きして、心が決まりました。私に挑戦の場を与えてくださったお二人に感謝です。


──確かに今回、石原さんがゴネリル役と聞いた時は「おっ、そう来たか」と思いました。純粋に父親を思う末娘コーディリアに対して、長女ゴネリルと次女リーガンは欲得ずくで父親を邪険にする悪役ポジション、と捉えられがちです。

ゴネリルってすごく面白い役なんですよ。悪役と言われますけど、私は人間的な魅力をたくさん感じています。客観的に物事を見ている人で、長女としての責任感もあるし、ちゃんと努力もして来た。それなのに親から愛されていなかったという、悲しみや孤独を抱えていると思うんですね。リアは娘たちに「言葉で愛を語ってくれ」と言いますが、言葉でしか愛を判断しないのは本当の愛情と言えるのだろうか?とも思います。しかもリアはその愛を「土地を与える」というやり方でしか表現できない。老いていく親を見るのは辛いけれど、年老いたこの人にはもう国を任せられない、と思うのも無理はないかもしれないですよね。孤独さや脆さ、「これだけやって来たのに」という自負、「もっと欲しい」という欲……。ゴネリルはそんな様々なエネルギーを持つ人間だと感じられるんです。

子育てをしていると、まず共感するところから入るんですよ。
(子供に)「わかるよ~、そうだよね~」って、もう何百回も言ってます(笑)。共感と切り替えの繰り返しですけれど、こんなに小さな生きものでも、共感するためには知る力、理解する力、寄り添う力が鍛えられるんです。共感力が強くなっている分、ゴネリルに対してもそんな風に見られるようになっている自分がいることが大きな発見ですね。今の自分だからこそ感じられる部分が、稽古を通してもっと見えてきたらいいな、という希望があります。
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