赤字続きの投資用マンションを「今なら買い取る」と持ちかけられ、改ざんされた売買資料まで見せられたら、信じてしまう人は少なくないだろう。だが、不動産投資の世界には、知識差につけ込んで物件を安く買い叩く“物上げ業者”や、接待で理性を鈍らせて危ない商談に引きずり込む不良営業マンが巣食っている。
投資家や経営者を狙う、詐欺まがいの手口の実態を追った。

不動産投資界隈に巣食う詐欺まがいのやり口

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売り上げのためなら客を欺き、ときには詐欺まがいのやり口まで駆使する――。不動産投資界隈にはそんな不良営業マンが巣食っているという。

「不動産は単価が高い分、営業マンは一件決めただけでも高額なインセンティブが発生します。そのうえ、情報の非対称性が高く、業者とお客さんとでは知識が天と地ほど離れています。そこにつけ込んだ悪徳営業マンが跋扈しているのは由々しき事態です」

そう嘆くのは、都内で不動産仲介業を生業にする竹本剛さん(仮名・44歳)だ。とりわけ、ワンルームマンション投資には「売りも買いも魔物が潜んでいる」と警鐘を鳴らす。

「投資を煽ってサラリーマン投資家に不人気物件を割高な値段で売る販売業者もたくさんいますが、最近目につくのは、そんな投資家を狙い、不人気物件をさらに安く買い叩いて転売する業者たち。ターゲットは主に仕事が忙しい独身会社員で、大手と呼ばれる建設会社でも現場監督クラスで独身だと多忙でカネを使う暇もなく、貯金がある人は意外と多い。そんな“カモ”が持つ物件をあの手この手で安く買い叩いて転売するのです。自衛官、看護師、マスコミ関係者なども狙われることが結構あり、相当エグいやり口が横行しています」

“救いの糸”は罠だった

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不良営業マンに騙されかけた細田さん。「不動産投資業界には言ったもの勝ち、やったもの勝ちという風土がある」
九州地方に住む細田正志さん(仮名・48歳)は、まさにこの手口に直面した一人だ。4年ほど前に3500万円の投資用マンションを購入したが、黒字どころか毎年70万円の赤字に陥った。そこに一本の“救いの糸”が垂らされたかに見えたが、罠だった。その手口を細田さんが振り返る。


「ある財閥系デベロッパーの関係会社を名乗る営業から突然電話が来て、私が持っている物件の評価額が2000万円程度しかないと言うんです。『それを今なら2500万円で買い取る』と。直近の売買実績を示したレインズ(不動産取引情報)の資料まで見せてきて、確かに2000万円前後で売られた事例が複数あったので信じてしまった。買った金額よりもだいぶ安いけど、赤字が続くのに嫌気が差していたので、売却を任せようと思ったんです」

だが、これにはトリックがあった。細田さんが見せられたレインズの資料は数字が改ざんされており、本当の値段ではなかったのだ。

「念のため不動産に明るい知人に相談したんです。すると、この営業マンのやり口がめちゃくちゃなことがわかった。そもそも私が持っている投資用物件の直近の売買実績は3500万円程度で買ったときとほぼ同じ。それなのに、1000万円も安く改ざんした資料を見せてきたんですね。『スムーズに進めるために売買契約書にハンコがほしい』と言われ、言われた通りにしそうになったのですが、ここで気づき難を逃れた。さらに物件売却費用の現金が足りず、『消費者金融から借りましょう。申し込みを代行するので』と提案してきたのですが、これも親切心などではなく、いち早く契約をまとめて買い叩きたかっただけでしょう」

前出の竹本さんが解説する。


「この営業マンの営業トークは最初のアプローチからウソ。恐らく財閥系デベロッパーとは何も関係のない“物上げ業者”でしょう。不動産を不当に買い叩く転売ヤーみたいなものです。信用を得るために、大手デベロッパーや金融機関、一流企業の名前を偽って架電してきたり、中には名刺を持っている者もいますが、身分を詐称しています。レインズの資料を加工して不動産価格の相場を安く誤認させたり、消費者金融に本人ではないのに申し込んだりする行為は詐欺罪に抵触する可能性が高い。残念ながら、このようにグレーを超えたブラックな手法が一部で横行するのが、今の不動産業界の実態なのです」

接待で繰り出される悪魔のプレゼン術

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[闇落ち社員]の生態
対人関係のスキルが収入に直結する営業の世界では、接待は格好のチャンスだ。だが、そんな席を悪用する不良営業マンも存在する。

「クライアントを取り込むには、悪事を共有するのが一番と言いますよね。東大教授が業者からソープランド接待を受け収賄で逮捕されていたけど、私が受けた接待はそんなものじゃなかった。あの場を警察に踏み込まれようものなら、一発実刑もあり得ました」

そう語るのは、都内で経営コンサルタントとして働く林田史也さん(仮名・41歳)。彼が受けた接待攻勢は、ニュースで知る世界よりもはるかに悪質だった。

「相手はウェブ関連サービス会社の営業マンで、知人の紹介で出会いました。九州のとある青年会議所の幹部も務めていてちゃんとした人かと思いきや、実態は金融ブローカーみたいなもの。
本業でなくサイドビジネスの怪しげな儲け話ばかり営業してきて、最初は警戒していたのですが……」

林田さんが信用してしまったのは、夜の街での力だった。福岡・中洲で信じられないような光景が繰り広げられたというのだ。

「青年会議所の幹部を歴任していたというだけあって、地元のコネクションはすごかった。普通のキャバクラなのに“お持ち帰り”が確約された女性を頭数分揃えており、グイグイ飲ませて場を沸かせる。『今晩はとことんいきましょう』と、終盤には白い粉末が入った袋まで出し始めて……」

夜の街で行われた商談の内容は…

当然、そのような接待で交わされた商談はまともな内容ではなかった。

「初めは何か事業を一緒にやっていこうという話だったのがどんどんそれて、『特殊な節税スキームがあるので使ってほしい』『月5%金利を払うので金主を探してきてほしい』といった踏み込んだものになりました。なんでも偽装出家させて不動産を買わせたり、債務者や親族の口座を使ったマネロンを持ちかけるとかなんとか……。ときには『海外出稼ぎに行きたい女性がいれば紹介してほしい』なんて話もありましたね。今思えば危ない話でしかないのに、あの夜は熱狂もあって話に乗ってしまった。結果、ずいぶんと高くつきました」

悪魔的な接待術で心と弱みを握られてしまった林田さんは、後に1億円近い金額をこの男性に投じることになる。しかし、月5%と言われていた利息はおろか、約束した売り上げ報告も一向に届かず、いつしか音信不通に。社会的信用リスクが傷つく恐れがあるため、警察沙汰にもできない。


「まさに、目的のためなら手段を選ばない悪魔の所業ですよ」と林田さん。一度ハマったら最後。悪徳営業には決して乗ってはいけない。

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海外出稼ぎで売春をする女性を集める案件まで振られたという林田さんに届いたメッセージ。「アングラっぽい話が多く、勢いがいいのは最初だけでいつも話が頓挫する。肩書に惑わされた自分が馬鹿でした」とうなだれた
※2026年4月21日号より

取材・文/週刊SPA!編集部 

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